休憩室と成功報酬
「あ、そのポーンを進めてクイーンにしましょう!」
「ええ、あと少し!」
「く…ここだ!」
休憩室に入るとフェル、ユリ、リーダーさん3人の白熱した声が聞こえる、他のプレイヤーは居ない。
「ユリ!そこです!」
「これでチェックメイト!」
ダン!とユリがチェス盤にコマを叩きつける。
「…参りました」
「やりましたね、ユリ!」
「2人の勝利だね!」
ハイタッチする2人とはあ、悔しさのため息?をつくリーダーさん。
「な、気にしてないだろ?というか見た感じレースすら見てなさそうだ」
「……まあ、フェルに変な心配かけずに済んで良かった」
ナナサカさんとコソコソ会話していたら、自分達に気付いたリーダーさんが声を上げた。
「お、2人もレースに疲れて休憩か?」
「そんな感じだ、そっちはチェス大会か?リダ」
「ああ、2人が何度も勝負してきてな…最終的に粘り勝ちされたよ…」
疲れたような声を出すリーダーさん、休憩のつもりが結構な頭脳労働だったみたいだ。
「それでレースは総合でどっちが勝ったんだ?チェスで見てなかったが結果が気になる」
「レンナ殿の勝利だ、俺が結構攻めたコースを走った結果事故ってな…スノボーロストしたんだ」
「え、あの素材だけは無駄にいいあのスノボ無くしたのか?」
驚くリーダーさん、素材て何使っていたんだろうか?ナナサカさんの事だからな最上位の敵を撃破して得た素材とか使ってそうだな。
「ああ、せっかくわざわざ加工してくれたのにすまないな」
「まあ、加工費はもらってるし別に問題ない、新しいの欲しければまたボス素材と加工費を持ってきてくれ」
「わかった、でも今日はもうスキーはいいかな…今年分のウィンタースポーツはやりきった気がする」
そう言ってリーダーさんの隣に座るナナサカさん。
「お前怖い目にあったのか?」
「「!?」」
リーダーさんの言葉にビックリする自分とナナサカさん。
「当たったみたいだな、お前は楽しい事している間は体力とか子供みたいに無尽蔵だし、基本的に自分から辞める時は決まって怖い目に会った後だから鎌をかけたら顔にでるわ…しかも2人」
「……あ、そうだ!賭け勝負の掛け金渡さないとな!」
ナナサカさんはそう言って1冊のスキル書と思われる物を取り出して、こちらに渡してくる。
「剣坂流秘伝書…日暮れ斬?」
「お前、なんつう物を掛け金にしてるんだよ!」
スキル書のタイトルを読み上げたらリーダーさんが声を荒げる。
「え、そんなに高価なの?」
「ナナサカしか作れないから確かに高価だが…なかなかえげつない剣技だよ、剣先から炎を出して目眩まししてから、一瞬で背後に回って斬撃攻撃して、すぐに元いた場所に戻る剣技だ、一応俺も魔法を使えば出来なくはないが…複数の魔法使わないと行けないからめんどいし、その剣技は一括で出来るから便利だぞ、炎の目くらましも敵が近ければ攻撃に転用出来るし便利だ…まあリキャストタイムがあるから連発出来ないのが玉に瑕だが」
リーダーさんが長々と説明してくれる…というかなんか使った事があるかのような言い方だな。
「リーダーさんも使えるのか?」
「魔法でナナサカの剣技をコピーして数回だけな、まあ魔法使いが使う物じゃないのは確かだ…あと一瞬で背後に回ると言ってもワープではなくて移動だから、相手がでかい炎のバリア纏ってたり、罠とか設置してたら、それに突っ込んで自滅するから気を付けろよ」
体験談かなと思える言葉だ。
「レンナさん、読まないんですか?」
「あ、ああ、ナナサカさん読ませてもらうけどいいよね?」
「いいよー」
フェルに言われて、念の為にナナサカさんに確認を取って本を読むと、本は発火する。
「え!?燃えるんですか!?」
「うん?ああ、そういう仕様の本だ、我が秘伝書は門外不出!他の人に読まれないように燃える仕様なのだ!」
「おいシステム的な仕様をまるで自分で仕込んだようにいうな!」
驚くフェルとなんか変なことを言うナナサカさんと突っ込むリーダーさん。
「よし、日暮れ斬覚えた」
「おめでとう、お兄ちゃん」
「あ、あとそれは刀か剣、短剣じゃないと使えないから注意してくれ、シャベルだけだと使えないからな」
最後の最後に補足をしてくれるナナサカさん、つまり基本的に火光で放つスキルなんだな…。
「あ、そうだユリ、さっきまでチェスしてたよな、次は俺と遊ぼうよ」
「おっと、その前にレンナさんと2人でしたレースの事が聞きたいな、なんか隠しクエストとか見つけたんだろう?」
チェスをしようとするナナサカさんの手を掴むリーダーさん…。
「俺は情報集めるの好きなの知っているだろ?教えてくれよ、親友」
「親友だから言いたくねぇー」
「まあ、言わなくても隠しクエストなら掲示板探れば出てきそうだけどな」
あーもうこれ完全に見抜かれているね…。
10分後、リーダーさんに言葉巧みに詰められた結果、ナナサカさんは諦めて、リーダーさんに隠しクエストの事を言うのだった…。