街に入る前に消毒してください
腐れ峠を超えて、ファイブの街へ移動中…。
「なんか目に見えて避けられてない?」
疑問を口にする、近付くと敵対する野生生物が近寄ると露骨に逃げ出すのだ…。
もしかしなくても……。
「腐れ峠の匂いで避けられてるね、これのお陰でボス戦後消耗していても戦闘はほぼ確実に避けられるから利点でもあるんだけどね…アイドルとして…女性としてはきついよ…」
「そう言えば、前はリーダーさんが腐れや毒、匂い対策してくれましたが、消臭する道具はないんですか?もしくはリフレッシュエール」
「街の入口で消臭消毒出来るからそこまで我慢してフェル…リフレッシュエールは害のある状態異常しか治さないよ」
「…悪臭も害あると思うんですが…」
入口で消毒できる?あ、消臭するアイテムとか売っているのか…?まあ、このままの状態で街に入れば確実に迷惑行為になってしまうからな…。
「儲かりそうだなファイブの街で消臭剤…」
「でもレンナさん、フォーの街では消臭剤とかあんまり売ってませんでしたよね?」
「フォー街からファイブの街に行く人は居ても、ファイブからフォーの街に行くプレイヤー…旅人は居ないからね…基本的に腐れの峠をクリア出来なかった者は大抵リスタートしているからね」
あー死んでリスタートすれば、状態異常は全てリセットされる、臭い状態も無くなるからフォー街では消臭剤はそんなに需要ないのか。
あそこまで毒沼塗れだとクリアか死亡してリスタートの両極端になりがちなのかな?
そんな事を考えているとファイブの街と一緒にあるものが見えてきた。
「おおー海だ…ファイブの街て港街なのか?」
「うん、そうだよ、知らなかったの?」
「あんまり興味なかったからな…」
もしかしたら風の噂で聞いた事もあるかもしれないが…。
「港街といっても泳ぐには水がかなり冷たいし、海には敵もいるから夏イベントの海みたいにレジャーには向かないけどね」
ユリの言葉を聞きながらファイブの街に近付く、ファイブの街の入口が見えた時に入口には門番と思われる人が2人居たのだが…背中には巨大な水槽みたいなタンクを背負っていて異質に見える…そして手にはホースと言うか…あれだ!火炎放射機をイメージする装備をしていると言った方が適切だ。
「………」
まさか燃やされる?フェルごと!?そんな考えが頭の中で浮かぶが、流石にそんな世紀末とかだったらTTが話しそうだし、そもそもガチで燃やされるならユリが気楽そうな表情はしてない。
そんな考えを捨てて街に近付くと案の定火炎放射機みたいな装置を持った女性の門番1人…近づいてわかったが自分より体格が低く、幼女と言えそうな門番に止められた…というか幼女と同じ。
「お兄さんお姉さん、あの峠を超えてきたんだよね?…悪いけど消毒を受けてもらうよ、今のお兄さんお姉さんはどうしようもないくらいに臭いです」
うーん、面と向かって臭いと言われると傷つくな…腐れ峠にいて臭さが移っていて、事実だから否定できないが…。
「はい、お願い…あ、お兄ちゃん害は無いから大声で騒がないでね」
「汚物消毒エタノール!臭いものは消臭!」
幼女の門番に火炎放射機のようなホースを向けられる、回避したくなるが害は無いらしいので回避しないようにしている幼女は必殺技を放つように叫んだ。
「浄化のリフレッシュビームー!」
火炎放射機からビームが放たれる、勿論ほぼ0距離なので今更回避は出来ない。
眼の前は真っ白になったが痛みはない、むしろ鼻がスーとして石鹸のいい匂いがしてきた。
「消毒完了!街の中へどうぞ!」
視界が正常に戻ると幼女が笑顔で道を開けてくれた。
「ファイブの街の名物、消毒幼女だよ、腐れ峠でついた匂いや状態異常を治してくれるわ、因みに悪意持って触れようとしたら門番の補正があるのかメチャクチャ強いし、即逮捕されるわよ…まあ、一部のロリコンが幼女に捕まるのはご褒美ですと言わんばかりに捕まるけど」
ユリからいらない豆知識込みで幼女の事を教えてくれた。
「凄いですね…臭い感じがなくなりました」
「そうだな、ちょっと演出が派手すぎるような気もするが…」
胸ポケットに隠れたフェルが小声で驚いているので、それに同意しつつ、自分はファイブの街に入り、移動用魔法時に触れてショートカットの開通を達成する。
これでもう腐れ峠に行かずにユリのマイホームからファイブの街に行けるようになった。
出来ればもう二度と行きたくないな…。