デスロード戦の終わり
自分のアースキーはチカワの背中を貫き、チカワのナイフはフェルがいる小さな檻に突き刺さる…。
「な!?」
驚愕の声をあげるチカワ、そこには檻に限界までくっつき、ナイフを回避するフェルがいた!
「避けるんじゃねぇ!」
「そこまでだ!」
チカワがナイフを引き抜き、再びのフェルの居る檻に突き刺そうとするが、セクサーブレードによる斬撃でナイフを持つ腕を切り落とす!
人の部位破壊とか結構グロイが切断面が赤いエフェクトを発しているのでだいぶマイルドな表現になっている。
更にチカワに突き刺したアースキーを捻り、トドメを刺す!
「フェルを甘く見たな、フェルだってナナサカさんの斬撃をたくさん見てきたんだ…回避の一つ出来るさ」
「くそ!くそ!またナナサカかよ!」
そう負け惜しみを言って、チカワはHPが尽きたのか、消えていった…。
あー!フェルが回避してくれて良かったー!!!!めっちゃヒヤッとした!!
万が一フェルがダイレクトで攻撃を食らっていたら…一応フェルの防具の効果でファイナルターミナルが発動するが…その前にすぐ近くにいる自分の持つアースキーの効果で、フェルのダメージを肩代わりして、自分がダメージを受けてしまう…それで万が一、その肩代わりダメージでHPが尽きて、不屈が発動しなかったら…ゾッとする…。
あの時にアースキーを突き刺しただけじゃチカワを仕留めきれてなかった…人間普通は心臓刺されたら即死ぬが…死なずに再びナイフを振るおうと動けたのはゲームだからか…。
『血濡れた決闘に勝利しました、レンナの勝利条件が適応されます、今後はチーム:デスロードとブラッドスキンはレンナ、フェル、リオアに敵対行動を取ることを禁じられます。
また火光を取り戻しました、爆弾等の危険物が取り付けられていたので解除しました。』
「お、終わった……フェル、今檻から開放する!」
決闘の終わりを確認してフェルを開放する。
「それよりもレンナさん、腕に怪我をしていますよ!」
「え?」
腕を見ると、いつの間にか斬られたような傷があった…。
もしかしてフェルは完全回避出来なくて、若干斬られたけど、自分が直ぐ側に居たからアースキーの効果で怪我を肩代わりしたのかな?
まあ、このくらいなら許容範囲だ。
ガッツリフェルが刺されたら、こっちが大ダメージだったし、やばかったかもな…。
「と、回復するのはフェルを開放してからな」
檻を調べると解錠するボタンが出てきたので、それを押すと自動でフェルを閉じ込める檻が空き、フェルは自由の身になる。
……檻に鑑定眼を使ってみたら魔法を使う昆虫用捕獲檻と出てきた、胸糞悪い話だ…思わず檻に全力でパンチしてしまう、ゴン!と鈍い音が響き自分の手を痛めただけだった。
「いって…」
「何やっているんですか!?リジェネレート!」
フェルがリジェネレートをかけてくれたおかげで4割以下のHPが回復………え?4割以下!?
ばっと視界の端のHPを確認する、もう半分以上あるが、さっき見間違えじゃなければHPは半分以下になっていた。
セクサーブレードは今持っている、まさかと思い、鑑定眼を使ってみると中破の文字とHP、MPが半分以下時にエリクサー自動使用の特殊効果に発動不可を示すバツマークがついていた。
………いつ壊れたかわからないが、もしもあそこでフェルが回避してなかったと思うと…高確率で発動する不屈があるとはいえもしも不屈が発動しなかったらと思うと一気に背筋が凍る…。
体はヘナヘナと力が抜けて座り込む。
「大丈夫ですか、レンナさん!?」
「大丈夫、気が抜けただけ…」
完全に薄氷の勝利だ…しかも報酬もただのデスロードに襲われなくなるだけと火光を取り戻しただけで、出費は妹の倉庫から勝手に持ち出した剣を中破させて、エリクサーという高級な回復薬を数本使ったのだ…完全に赤字でこの後妹に無断使用したことで謝らなければならない。
頭に一瞬どうにかして隠蔽する事が過るがエリクサーはともかくリーダーさんの作った剣の修理をするにはリーダーさんの助力が必須だ、そこで確実にバレる未来しかないので素直に謝るのがいいだろう。
後は結局チカワ含むデスロードは何で自分達を標的にしたかは明確にわからないけど…まあ、夏イベントの因縁が続いていたんだろうな…まさか罠に嵌めてくるとは思わなかったが…血塗られた決闘で今後襲ってこないはずだが…抜け道とか使って攻撃とかしてきそうだな…そんな抜け道あるかは知らないが…。
だが今は…。
「ともかくフェルが無事で良かった」
「助けてくれてありがとうございますレンナさん…」
フェルの手が自分のほっぺたに触れる、そしてチュッとほっぺたにキスされた。
「かっこよかったですよ、レンナさん」
「…かっこよく見えたのなら良かった…?」
何だが恥ずかしくて顔をそむけてしまう、まあ、うん…なにはともあれ一件落着だな。
「ああ、そうだ、アッシュルさんに連絡…」
「ここかー!無事か2人共ー!」
ドタドタと知っている声が聞こえたと思ったら、ドタン!アッシュルさんが現れた!
「………あ、もう終わってるのか………えっと、良い所で失礼しましたー」
「まって、アッシュルさん別に帰らなくていいよ!お礼言いたいし!」
何故か帰ろうとしているアッシュルさんを止める。
「えーといちゃいちゃしなくていいのかー?」
「!?えっと、いやもうしたから気にしなくていいよ!?」
ほっぺにチューしてもらったし!て何言ってるんだ自分は!?
「ともかくありがとうな!一度ここを襲撃してくれたんですよね?」
「うんーPKばかりでもしやと思って戦ってたんだけど、途中でやられちゃってね…10人くらい薙ぎ払った記憶あるけど大丈夫だった?」
「ああ、具体的に何があったか教えるよ」
助けを求めた際には簡素な説明しかしてなかったので、改めて経緯を説明したらなるほどと納得してくれた。
「アッシュルさんが暴れたおかげで数でやられずに済んでたし、何かお礼をしたいけど…アルカナカードを引き直せるチケットくらいしか渡せるものないや…」
「別に私が好き行動したから気にしなくてもいいのだけどーでもせっかくだからもらっておくねーなにはともあれ2人共無事で良かったーと、私まだクエストの途中だからクエストに戻るねー、後ここにずっといるのは危険だし早めに帰った方がいいよー」
「わかった、ありがとう!」
そう言ってアッシュルさんは自分のクエストをこなしにいった。
「帰るか、フェル」
「はい!レンナさん!」
自分の胸ポケットにフェルが入ったのを確認して、自分はユリのマイホームに帰るのだった。
【秋の冒険編完】