プライドを捨て去って
「くそ!完全にやらかした!」
死んでユリのマイホームにリスタートしてしまった自分はすぐにユリのマイホームの倉庫内に入る、そして出来ればお兄ちゃんは触らないでと言われた棚を見る、そこには大量のエリクサーや補助魔法と重複して全ステータスを強化するポーション、明らかに高レベルの装備が並んでいた。
「ごめん友奈!」
多大な罪悪感と共に大量のエリクサーとステータス強化するポーションを自分のアイテム一覧にしまう。
そして鑑定眼で武器を見て、これだと思う一つの剣を手に取る。
『セクサーブレード
属性:無
ステータス:攻撃力+20、魔法力+23
特殊効果:HPかMP半分以下時エリクサー自動使用
リダが作った試作用の剣、究極の金食い剣、HPかMPが半分以下になったらアイテム一覧のエリクサーを自動使用する…エリクサーと不屈スキルがある限り理論上ほぼ無敵になる…財布とエリクサーが尽きぬ限りは…』
この倉庫にある中で一番自分と相性がいい剣だ…エリクサーがあればの話になるが、ユリの倉庫にエリクサーは大量にある…多分ファンからの貰い物なのだろう…。
勝手に妹の物を持っていくことに罪悪感を感じるが、それどころではない、早くフェルを救わなければならない!
後で妹に土下座する覚悟を固めて、左手につけた指輪の特殊効果、場所共有を使い、フェルの位置を知る…。
風の渓谷の中央というか真ん中辺りにフェルの反応があると教えてくれる。
そしてダメ元でアッシュルさんに助けを求める簡素なメッセージをフェルの位置情報と共に送り、風の渓谷に向かって全力移動する。
「指輪の効果も使えるし、まだシンクロスキルはある、無事なはずだ!オールアップ!」
シンクロの効果でフェルの魔法を使い、凄い勢いで街を飛び出る。
足が限界を超えた速度で稼働し、地を蹴る。
「くそくそくそ!刀神の呼符使いそこねるとかバカか!それにサイン色紙意識しすぎてペンを鑑定眼してなかったし!学習出来てねぇなくそ!」
自虐の言葉を発しつつも、風の渓谷までたどり着く…。
「フェルの居場所に変化はない…」
指輪の効果で断続的に居場所を確認する、相変わらず風の渓谷の中に反応はある。
「邪魔だ!」
襲いかかってくる敵をアースキーで薙ぎ払い指輪の地点に移動する、何処かにあるはずだ、デスロードの拠点に入れる入口が…。
「もしかして地下か?」
指輪の位置共有で得た位置情報の所まで来て、そんな結論に至る、というかすぐ近くにフェルの反応があるはずなのに周囲には洞窟の入口とか無く、敵は居ても他のプレイヤーの姿もない。
「指輪は方角と距離までは示せても上下は示せないのか…でも充分だ」
自分の真下にフェルがいる…そう思った時に少しひらめいた。
「うまく行ってくれよ…」
アースキーを取り出して、片手で地面に突き刺す。
「自分の足下の地面よ、他へ移動してくれ、妖精地門!」
MPがなくなると同時にもう片方の手で持っていたセクサーブレードの効果で所持していたエリクサーが自動使用されて、MPが満タンになる。
それと同時に周辺を囲うように大地の杭は大量に生み出され、代わりに足下の地面がなくなり体は重力に逆らえず落下する。
だが底が見えているので着地は簡単にできた。
「レンナさん!?」
声のする方向を見ると、フェルが檻の中にいた。
「ごめん、待たせた無事だよな!?」
「大丈夫無事ですし、そんなに待ってません」
見た感じ怪我している様子はない、その事に安堵する。
「あはは、まさかただの鍛冶屋が床ぶち抜いて来るとはね!」
背後からのチカワの声が聞こえたので振り向くと眼の前に飛んできたのはナイフだった!
ギインとアースキーで飛んできたナイフを防ぐ!
「気が早すぎるよ、これから招待状を送ろうとしたのに色々とショートカットし過ぎだよ」
ヘラヘラと笑いながらもローブの中からもう一本のナイフを取り出すチカワ、ファンだと偽って接触してきた時とぜんぜん表情が違う、顔芸凄いなと思えてくる。
というかチカワの頭上にドクロマークが出ている…PKの証だったな、隠すのやめたのか。
「知るか、フェルを返してもらうぞ」
「お?ならこれはいいのかい?おっと、まだ動くなよ?動いたらこれを爆発させて壊すぞ?」
そう言ってチカワは火光を取り出す、火光には大量の爆弾のようなものが取り付いていた。
鑑定眼で見てみたら本物の爆弾だった、スイッチ一つで爆破出来るらしい。
「たちの悪いことを…!」
「いいね、その表情!これだからゲームで悪党はやめられない!」
「うわ、やば」
シンプルにヤバいヤツだ。
「なあ、ゲームをしよう、この武器とその妖精をかけたゲームを!」
「断れば火光を爆発するということかい?自爆になるんじゃないのか?」
「勿論!爆破すれば僕は死ぬけど、自殺ならばペナルティはないからね!」
火光はフェルの友人の形見、見捨てるわけには行かない。
「わかった…だが、こっちが勝った場合は二度と自分とフェル、リオアに関わらずに危害を加えるんじゃない!」
「ならこっちはそうだな…その妖精とその2つの武器と消耗品の全てを貰おうかな?防具は…いらないや」
「フェルは物じゃない!」
「は、ゲームにマジになってうけるーわらわら」
あ、こいつとは絶対相容れないわ…アースキーを握る手に力が入る。
「レンナさん!大丈夫です、私をかけて戦ってください!レンナさんなら勝てるはずです!」
「フェル!?」
「決まりだね、それじゃあ始めようか、賭けのゲームをね!」
チカワがそう言うと同時に眼の前にシステム画面が現れた…決闘が申請された画面だった。