再び風の渓谷へ
風の渓谷、ツー街とスリー街の間にあるダンジョンだ…ここを通る以外にツー街からスリー街に行く放送は無いと思われる。
「なんか成長を実感するな…」
道中の敵をアースキーの一撃で倒しつつ、独り言をこぼす。
風の渓谷は様々な属性攻撃を使って敵の弱点をついて攻略するのだが、強さの差がありすぎて物理であっさり倒して行ける、弱点突かなくてもダメージは与えられるからな。
今の自分だと道中の敵でやられる可能性はデスロードと戦っている時に横槍を入れるかあるいはその逆が生じない限りはやられないだろう。
「うーん、別にアッシュルさんと一緒に冒険した時と変化はなようにみえますね」
「そうだな…」
フェルの言葉に同意して考える…そもそもどうやってダンジョン内で集うことが出来るんた?このゲームならダンジョンに秘密基地を作ることも出来そうだが…。
うーんもしかして特殊なアイテムとか無いと見つからないとかあるのかな?
「まあ、見つからないなら見つからないでガセネタということで帰ろうか…」
どちらにせよ仮にデスロードの秘密基地を見つけたとしても、チームの人数が多そうな基地に2人で突入する訳には行かない、ナナサカさんかリーダーさんに手伝ってもらったほうがいいだろう、こっちは生産クラスだ…一人でなんとかしようとか無謀だ。
そんな事を考えをしながら風の渓谷を進んでいくとボスエリアまでたどり着く、始めてここに来た時はアッシュルさんのナンバークエストに巻き込まれたんだっけ…。
現れたボスであるアンデッド系の魔法使い、リッチを余裕を持って撃破して風の渓谷をクリアする。
魔法使いとなるとどうしてもリーダーさんと比べてしまう為、かなり弱く感じた…。
まあ、風の渓谷を始めてクリアし時は初期クラスの鍛冶屋だったからな…ちょっとインフレを感じる。
「ふう、弱かったな」
「結局他の人と会いませんでしたね」
不思議そうに頭を捻るフェル、確かにデスロードの秘密基地があれば誰かしらとばったりあってもおかしくない…。
「ガセネタ…というわけではなくただ一時的にプレイヤーの狩り場にしていたのかな?」
というかこんな所でプレイヤー狩りとか完全に初心者イジメじゃないか…。
「あ、レンナさん!」
背後からの聞いたことの声が聞こえる、振り向くとチカワさんがいた。
「え!?チカワさん、どうしてこんな所に!?」
「僕は楽しいことをする為にここに来たんです」
楽しい事?なんだろう、クエストかな?
と、それよりもサイン書いたときのペン返さないとな。
「あ、そうだ、前にサイン書いた時のペンを渡しっぱなしでいたよね、ペン返すよ」
「律儀にありがとうございます!特殊なペンだったから回収できて嬉しいです」
特殊なペン?思い入れあるとかか?それともなんか怪しげな契約で使う?いや、それはないか書かされた紙は何の変哲もないサイン色紙て鑑定眼でみたし。
ペンを取り出してチカワさんに渡す。
「特殊なペン?」
「ええ………ビーコンとナイフ付きのペンです!」
次の瞬間、首に痛みが走る!
チカワさんは受け取ったペンを捻ったと思ったら、ペン先からナイフが出現して、ナイフで攻撃してきたのだ!
「がぁ!?」
真正面からの速い不意打ちに回避出来ずに直撃してあっという間にHPが1になる…守護の不屈がなければ即死だった。
『チーム:デスロードのブラッドスキンから攻撃されました、チーム:デスロードに所属しているプレイヤーを攻撃時に生じるペナルティがなくなりました』
「レンナさん!?リジェネレート!」
フェルが悲鳴をあげる、本来ならバカ!?大声出すな!と言いたいが、それどころじゃない!
というかなんか声が出ない!あとめっちゃデバフ食らってる!?体が硬い!?
というかシステム画面でわかったけど、チカワはチーム:デスロードだったのか!?なんで!?PKならドクロマークの証出るよな!?なかったんだけど!?スキルとかで隠してた!?
やばい、頭が混乱する!?
「え、なに?妖精?NPC?」
ヤバイヤバイヤバイ!バレた、しかも確実にバレたら良くないやつに!!
「妖精氷…」
「おっと、変なことしないほうが良いよ、あんたが魔法を使う前にレンナさんが死んじゃうよ」
暗殺ペンを自分の首に添えるチカワさん、その表情はサインを受け取った時の無垢な笑顔とは打って変わって50人中50人が外道という外道の笑顔をしていた。
「もん…く言いたくなりますね!」
「な!?」
フェルがそう言うと天に魔法陣が現れる、それを見てチカワは咄嗟に自分から距離を取る。
巨大な氷の塊はゆっくりとチカワに狙いをつけて追尾してチカワの間近で爆発して、大量の氷片をばら撒く!
氷片はこちらにも飛んでくるが、味方を攻撃しない効果のある氷片は自分達をすり抜ける。
その間にあんまり自由が聞かない体を動かしてHP回復薬を取り出して飲み始める。
「いやー…まさか躊躇いなくプレイヤーを見捨てる選択肢をするNPCがいるとは思わなかったよ…」
「見捨てませんよ、レンナさんは!」
「まあ、爪は甘いけどね」
チカワが手を上げて下に下ろす、次の瞬間、背中の3箇所から痛みが走り、回復していたHPは残りのHPもろとも消し飛んでしまう。
「伏兵は基本だよ」
「レンナさん!?」
視界が真っ暗に染まる、どれだけ感情を高ぶらせても、背中に食らった3箇所のダメージが大きすぎるのか、1度発動したせいなのか、守護の不屈が発動しない…。
「いやー最高だね、不意打ちで絶望顔する美少女は…中身は男だとしてもね」
「レンナさん!!」
最悪な状況で自分は死んでしまったのだった。
『火光がブラッドスキンに略奪されました、一定期間内にブラッドスキンを撃破しないと売られる可能性があります』
最悪は重なり続けてしまう…。