アッシュルさんとの会話。
「本当に助かったよ、ありがとうアッシュルさん」
戦闘終了後、色々と戦闘処理を終わらせてからアッシュルさんにお礼を言う。
「所でなんでアッシュルさんはこんな所に?」
「こっちはクエストで低レベルのポーションの大量生産の為に採取に来ていたのー、それでレンナさんが襲われてたからびっくりしたのー」
どうやら自分は運が良かったみたいだ。
「アッシュルさん、こんばんは!」
「あ!フェルこんばんはー!」
胸ポケットからフェルが出てきて、アッシュルさんとハイタッチといえばいいのか、手と手を合わせて再開を喜んでいる。
因みにアッシュルさんとは秋に入ってからそれぞれの事情があって、一緒に遊ぶということはそんなになかったが、ゲーム内のメール機能で時折フェルと一緒に文通したりしている。
「しかし災難だったね、PKに襲われるなんてー最近PKをした際の罪が重くなるエリアでもPKするプレイヤーが増えているみたいだからセーフエリアでもあんまり油断しないようにねー?」
「そうなんだ…そうだ、アッシュルさん、ここ数日でチームデスロードに襲われた事はない?」
「もしかして先程襲ってきたPK達の事ですかー?残念ながら出せる情報は持ってないですねー噂は聞いていたけど実際に対人戦するのは久しぶりで緊張しましたー」
「いや、遭遇してないという情報でも十分だ、教えてくれてありがとう」
うーん、なんとも判断つかないなー…アッシュルさんの運がいいだけなのか、自分が狙われているか判断するには情報が少ない。
「もしかして狙われているんですかー?」
「断言は出来ないけど何回も襲撃されているから可能性としてはあり得るかもという感じ、一応知り合いにデタラメに強いプレイヤーがいて、その人がPKチームの対処してくれてるけど…なかなか難儀しているみたいで…」
「心配ですねー…狙われているなら暫く街中にいたらどうですかー?」
「そうだな…今の所打つ手ないし、そうするしかないのかな?」
いっその事チームデスロードのボスと決闘して白黒はっきりつけられたらいいのにと思ってしまう辺り、ちょっとナナサカさんみたいな思考になってしまってるな、日を跨いでるとはいえ何度も襲われて気が立っているのかも…。
一瞬キルされるまで粘着されるなら、取られたら困る物をユリのマイホームの倉庫にしまい、フェルにお留守番してもらい、1人でデスロード相手に突撃して、殺られれば今後は見逃されるかなという思考が頭を過るがすぐに却下する。
もう何人も返り討ちにしているんだ、わざと殺られても相手は止まらないだろうしそもそも相手はPK集団だ、一度キルしただけじゃ満足せずに何度だって殺しに来そうだ…。
どうすれば良いんだろうと頭を悩ませながらもクエストで採取をするアッシュルさんと別れを告げて、街に帰還すると街の一部に人が集まっていた。
「何事ですかね?お祭りですか?」
「いや、祭りとかなら事前告知があるはずだ、なんだろう?」
胸ポケットに隠れたフェルと共に人混みを観察していると、その中心には掲示板があり、そこにはトップニュースと言わんばかりに新聞紙といえばいいか、ニュースの紙が貼られていた。
『ファイブの街で天使降臨!?』
トップニュースと言わんばかりに派手なカラーで天使が現れた事を文字にして書いてある、写真はあるっぽいけど遠くて見えない。
「このニュース本物かな?もし天使に会えたら天使になれるかな?」
「ガセじゃねーか?もしくは既に他の人がナンバークエストとして受けてるんじゃないのか?」
「夢がないなーそれじゃあ、ユニークなナンバークエストが発生しないよ?噂であったでしょ、異種族と交流しているとその種族になれる道が開くって」
「別に俺は天使になりたいという気持ちはない」
人々の会話の一部が聞こえる…殆どの人が天使と接触したいねーとかナンバークエストになるのかなと好奇心にあふれた声が多かった。
天使の情報だけでこれだけ騒ぎになっているなら、ここでフェルの存在がばれたらどうなってしまうんだ…?
緊張感が高まると同時に頭に閃きが走る、これだけ人が沢山いるんだ、ここで聞き込みをすればデスロードの手がかりが摑めるのでは?
そう思い、自分はフェルに少しの間ポケットの中で隠れてほしいと言ってから聞き込みを開始した。