レンナのファン?
「あの、すみません!」
タロットの館を出て帰ろうとしている中、赤いローブを着た自分と同じ位の身長の少年に話しかけられる。
「なんですか?」
「レンナさんですよね、リオアのお兄さんの」
「え…なんのようですか?」
バレた!?いや、まて…よくよく考えたらオプションで頭上に名前とか出せるんだったよな、目障りでオフにしているけど、名前と体格で見抜かれてもおかしくないのか?いやでもまじでなんのようだ?
「あの、サインください!」
「あーもしかしてリオアのファンなのか?」
「いえ、あなたのファンです!」
「????」
頭の中が疑問で満たされる、少年の反応的にリオアの配信を見ている人だろうが、そこで自分のファンになるのがよくわからない。
「えーと中身は男なのはわかってるよな?」
「はい、知っています!それにシャベルと剣の二刀流でバッサバッサとアンデット等のエネミーを薙ぎ払って行くのも知っています!」
「そ、そうなのか?えーとサインすれば良いのか?」
「はい!」
そう言って差し出されたのはサイン色紙とペンだ…鑑定眼で見ても特殊効果はなにもないただのサイン色紙だ…。
「分かった…自分のサインなんかで良ければ…」
サイン色紙を受け取り、サインを書く。
当然ながらまともに書いたことがないし、緊張して、あんまり綺麗ではないレンナという文字を書いてしまう、は恥ずかしいが、書き直しはできないので、これで渡すしか無い。
「あ、後チカワさんへもお願いします!」
「わ、分かった…」
少年…チカワさんの名前もカタカナで書き、チカワさんに渡す、漢字で書くと地川なのかな?とそんな事を思いつつ。
「ありがとうございます、大事にします!もう少し話していたいけど、そろそろ行かないと…それでは!」
そう言って、チカワさんはすごい勢いで去って行った、サイン受け取った時凄く目を輝かせていたな…無垢な笑顔というやつか。
「あ、ペン………行っちゃった…」
自分の手にはサインで使った借り物のペン…。「またあった際に返したらどうですか?その間預かる感じで…」
チカワさんと話している間、ポケットに隠れていたフェルが提案してくる。
「また会えるかな…?」
この広いゲーム世界でもう一度合うて結構大変だと思うが…まあ、ペンなんて安く買えるだろうからなくなってもチカワさんが困る事無いだろう。
「一応預かっておくか…」
もしもチカワさんに再び会えたら返そうと思いながらペンをしまい、帰宅するのだった。
「あ、お兄ちゃんおかえりー」
ユリのマイホームに帰るとユリが出迎えてくれた。
「ただいまー」
「ユリさんこんばんはーレンナさんにファンが出来ました!」
「え、なにそれ詳しく!」
フェルの言葉に食い気味になるユリ…。
まあ、ユリなら気になるんだろうなと思っていたよ。
「今日はタロットの館でアルカナクエストをクリアして…」
フェルがユリに説明し始める。
「ふむふむ少年の姿でチカワさんか…うーん、配信のコメントであんまり見ない名前かな…」
「え、配信のコメントとか覚えているのか?」
「いや、全部は覚えきれないよ、よくコメントしてくれる人ならなんとか覚えているくらいだよ」
びっくりした、リオアの配信て万人単位で見てたからその配信のコメント全部把握していたらびっくりする所だったよ。
「でもやばいファンじゃなくてよかった、お兄ちゃんに厄介なファンとかアンチがついたせいでお兄ちゃんが辛い目に合うのは嫌だからね」
「え、リオアに厄介ファンとかアンチいるの?」
「いるよーやり過ぎが行き過ぎて、アカウントバンとかになった人とか出てからはあんまり見かけなくなったけど…」
バン?何だそれ?と思っていたらフェルも同じように、疑問を浮かべていたらしく、ユリはわかりやすく神罰でこの世界から追放と教えてくれた。
「神罰…それって刀神のナナサカさんも使えるんですか!?」
「いや、使えないかな…代わりに殺人者からしたら最も見つかりたくない、敵対したくない人なのは間違いないけど、あの人は決闘狂いだけど、一応善悪の数値的には善人だからね」
「なるほどわかった…まあ、もう少し気をつけて動くよ」
「うん、変な嫌がらせとかなあったら何時でも呼んでね!」
笑顔でいうユリに頼もしさを感じながら、今日という1日は過ぎて行った。