双極の絶対覇者(イージー?)
こうして始まった特訓という名の決闘の初回はノリノリ過ぎて一切手の抜かなかったナナサカさんの神速の4連撃で自分のHPは0になりユリのマイホームにリスタートしてしまう。
急いで工房に戻るとナナサカさんの手には普段使いの刀ではなく、鑑定眼で見ると重く攻撃スピードにデバフが乗る刀を握っていた。
「すまん、レンナ殿興が乗りすぎて全力で攻撃した」
「本当興が乗りすぎだろ…お前はテンションでスペックが上下するタイプだからもう少し落ち着いてくれ、今の一撃は俺も防げるか怪しかったぞ」
「はーい…それじゃあもう一度やろうか」
再び決闘が始まる、刀を変えた影響か先程の速い太刀筋ではなく反応可能な速度に落ちている、というかナナサカさん基準だと多分かなり遅い攻撃だ。
「はあ!」
「オールアップ!」
しかし速さと引き換えに重量感ある刀を振るっているのだ、受け止めたら力とレベル差でそのまま押し潰されそうなのでフェルの補助魔法を受けつつ回避する。
だが回避した所で魔力の矢が2発自分に向かって飛んでくる、リーダーさんの魔法だ。
手加減しているのか、かなり遅い弾速だが回避した直後になので立て続けに回避は出来ない。
「くう!」
アースキーと火光で2方向から来た魔法の矢を受け止める。
「まだまだ余裕だよな!?」
ナナサカさんが再び刀で攻撃してくる、魔法の矢を受け止めている間に横薙ぎで攻撃してきて、回避出来る余裕をなくしてくる。
「くう!」
片手で持った火光で受け流す事を試みるが上手く受け流せずに大きく体制を崩してしまう。
そしてナナサカさんのスキルか火光を持つ腕が痺れて動けない間に飛んでくるのは3本の魔法の矢、右から2本、左から1本飛んでくる。
「無魔技手!」
一か八か、自己強化してアースキーで回転斬りして魔法の矢を弾こうとするが…。
ガキン!とナナサカさんの刀でアースキーを止められる。
「おっと、妨害しちまったな」
「なぁ!?」
火光を持つ手は痺れて、アースキーは受け止められた、回避したくてもアースキーを受け止められた状況では下手にバックステップしたらそのままバッサリナナサカさんに殺られる!
迷っていると自分の体に魔法の矢が3本とも突き刺さりあっさり殺られてしまった…。
「……あの、ナナサカさん、リーダーさん…これって修行になるんですか…?」
「なるなる、過酷な戦いほど経験値の実入りはいいものだぞ、それに何度もやっていくとレンナ殿の動きはかなり良くなっていくからな」
「修行になるかはなんとも言えないが…今のは行動に迷いが生じた結果だからこの修行で判断力が鍛えられるかもな」
リスタートとして工房に戻るとフェルとリーダーさんとリオアが話していた。
「済まない、リーダーさん、ナナサカさんもう一戦いいですか?」
「何戦でも…決闘しようぜ」
「日が変わるまでなら付き合うよ」
やる気満々のナナサカさんと日が変わるのまでは決闘に付き合ってくれると暗に言っている、リーダーさん?
「レンナさん!頑張ってください!」
フェルの応援が響く中、ナナサカさんがあっと声をだす。
「そういえばレンナ殿に目標を設定してなかったよな、そうだな…リダにスキルとか使わずに一撃入れられたらリダと俺からなにかしらいい強化素材をプレゼントしよう」
「ディフェンスカース、勝手に決めるな…レンナさん、こいつ倒した場合、レンナさんの勝利でもいいし、その場合はこいつの持っているレア素材全部持っていっていいぞ」
「お前も勝手に決めつけてるじゃねーか、あとサラッと防御力下げるな!」
2人が言い争っているが、どっちの目標もクリアは困難だ。
前者の目標は一撃だからまだ可能性はあるが後者の目標であるナナサカさんの撃破は無理ゲーだ、AI操作のナナサカさんでも強かったのにナナサカさん本人操作+リーダーさんの攻撃支援に晒される…うん、無理だ。
「まあ報酬云々は置いといて、リーダーさんに一撃入れたら自分の勝ちという感じでいいんですね?ナナサカさん撃破は無理過ぎるし」
「まあ、そうだな…それで構わないよ、それじゃあまた決闘しようか」
こうして目標も定まり、再び自分はリーダーさんとナナサカさんの胸を借りて決闘というなの特訓に挑むのだった。