エモート書物:揺蕩うタロットカード
「いいなー!」
リオアが羨ましそうな目線を向ける。
「欲しいならいるか?」
「欲し…あ、持ってるエモート書物だ、いらないや」
切り替えの速さにずっこけそうになるが耐える。
「えーとエモート書物とか使ったことないけど開いて使えばいいのか?」
エモート書物を開いて見ると、本は消えて代わりにシステム画面が現れた。
『エモート:揺蕩うタロットカードを獲得しました。』
エモートてしたことないけど、どうやって使うんだ?
「お兄ちゃん、メニュー画面の下側にあるエモートという所から使うことが出来るよ」
リオアに教えられてエモートを使ってみると、体が勝手に動く所か、浮き上がり、自分の体が光ったと思ったら、その光がタロットカードになり、自分を囲うように周囲に漂い始めた。
結構かっこいいのでは…。
「スクショ&撮影と…」
「ちょ!?恥ずかしいだが!?」
エモートを止めたいと思ったらタロットカードは消えて、浮いてた自分の足は再び地面と設置した。
「というかこのエモートというシステムは何処でも出来るのか?」
「基本的にセーフエリア限定だね、ささやかなコミュニケーションシステムだよ、他のエモートだと…」
リオアはそう言うと、光の玉を手から生み出して、その光を胸に受け入れると、着ているアイドル衣装が光になって変化して、夏イベントでみた水着のアイドル衣装になる、そしてカメラに見せつけるようにピースをした。
「こんなふうにね」
「なるほど…変身出来たりもするのか、かっこいいな」
「まあ、動いたら元に戻っちゃうけどね」
ピースを止めると水着のアイドル衣装からさっき着ていた普通のアイドル衣装に戻った。
「とまあ、今日の冒険はここまでにしてそろそろスタジオに戻って、スパチャ読みに移行しよう!お兄ちゃん、今日は力を貸してくれてありがとうね!」
「あ、ああ…それじゃあみなさんさようなら」
頭を下げてリオアのパーティから抜けて、自分はユリのマイホームに帰るのだった。
因みにリオアのパーティから抜けた瞬間、視界端のコメントは見えなくなった。
消える間際に見たコメントはノシだったり兄乙だったり、オツリオだったりと様々なコメントが流れていた。
ユリのマイホームに帰るとフェルが出迎えてくれた。
「おかえりなさいレンナさん!墓地キラー撃破お疲れさまです」
「…見てたのか?」
「はい、リオアさんから預かっているアイテムで確認しました、不思議な技術ですよね!」
……ファンタジーフリーダム内でも配信とか見れるんだな…しかもNPCでも見れるのか…ファンタジー要素皆無だな…。
今のゲームて凄いんだな…。
「レンナさん、私もタロットの館に行ってみたいです!」
「なら明日行こうな…今日はもう疲れて眠たいんだ…」
ドレスから何時もの防具に着替えてログアウトの準備をする。
「そうですか…それなら明日必ずいきましょう!おやすみなさい、レンナさん!」
「ああ、お休みだ」
少しがっかりとした表情を見せたが、すぐに笑顔でログアウトする自分を見送るフェル。
こうしてファンタジーフリーダムの世界からログアウトした自分は何となくパソコンを起動させて、カタカタと人差し指で入力して、リオアの配信チャンネルにたどり着く、そこには現在のライブ配信だけじゃなくて過去のライブ配信もあった。
『【本番!】ドッキリ込み、同じゲームをやってる兄にヴァーチャルアイドルやってることを色々とカミングアウト!』という過去に参加した配信もあった…。
気になるが落とし穴に落とされた自分とか、色々な意味で見る気が起きないので現在進行形でやっているライブ配信をみる。
そこにはリオアがスタジオでマイク片手にトークしているのが目に入る。
軽快にトークする様子は友奈とは思えない。
リオアがファンタジーフリーダムの宣伝しているCMをリオア=友奈と知る前に見たことあるが、声だけじゃ気付けない物なんだな…。
「ここでファンアート紹介!お兄ちゃんと私のファンアート書いてくれてありがとうね☆」
パソコンの画面にデカデカと自分とかリオアが書かれたイラストが出てくる!?
「ふぁ!?」
思わず変な声が出る、繊細なタッチで書かれたイラストだ、自分のイラストが書かれると思ってなかったからなんか動揺してしまう。
「私とお兄ちゃんがかっこよく書いてあるね、お兄ちゃんがみたら想定外にびっくりして倒れそ」
カチリとパソコンの右上にあるバツを押して配信を消す。
倒れはしないが挙動不審気味になった自分は早々にパソコンをシャットダウンして、よくわからない感情にベットの上を転がりそのまま眠りに落ちるのだった。