アルゴンとの別れ
「……いいのか?」
アルゴンに確認を取るリーダーさんの表情は険しい。
リターンソウルてなに?なんの魔法かわからないけど、少なくともとんでもなさそうだ。
「良いんです、役目を果たし、私は人として長く生き過ぎてしまいましたから…これ以上は魂を滅ぼします」
「そうか…わかった」
「待ってください!リーダーさん、何をするつもりなんですか!?」
目に魔法陣が展開されて、杖を構えているリーダーさんに待ったをかけるフェル。
「数百年ぶりに友達に会わせるんだよ…秘密研究所の所長とか」
「そ、それって殺すということでは!?」
リーダーさんはかなり遠回しに言っているが、秘密研究所の所長は今までの情報的にどう考えても死んでいるのだろう。
というかリーダーさんが数百年ぶりとか言ってるし…ファンタジーの世界の普通の人間が100年も生きられる訳が無い、人外なら可能性はあるが…リーダーさんの言葉からして生きている可能性は0だ。
「なんで死にに行くんですか!?アルゴンさん!?死ぬのなんて駄目ですよ!?」
「私は厄災を滅ぼす武器を作れる者を探す使命の為に、理性を持って長生きする手段として、禁忌の魔法で本になりました…そしてその禁忌の魔法は呪いでもあります、使命を果たした後でも生きようとすると、私は代償として理性を失い、辺りに魔法をばらまく化け物に成り下がるでしょう、そうなる前に終わらせるのです」
「り、リーダーさん、なんとかならないんですか!?だ、代償を払わなく済むとか!?」
フェル焦りを凄く感じる、だけどリーダーさんから出た言葉はフェルの望む答えではなかった。
「不可能だ、不当な呪いならともかく、同意の上で自分自身に施した魔法であり呪いだ、第三者である俺がどうこうできる物じゃない、それに体もないからな…本から魂が開放されたとしても、帰る肉体がない以上、どうしょうもない」
「そんな、リーダーさんでも不可能なんて…」
「フェル…」
涙目のフェルの気持ちは何となく分かる、オールモスキートが復活した時に死んでしまったカギロイを思い出して阻止したいのだろう…。
「…私はとても幸運ですね、出会ってそんなに間もないのに死ぬ際に泣いてくれる人が居てくれるなんて…それでも私は行かないと、久しぶりにあいつとあって酒でも飲みたいのです」
「そうですか…そうですか…」
「フェル…リーダー、先に帰っていいか?」
泣いているフェルに思わずそう言ってしまう。
見るのが辛いのなら見ないのも手だ。
「大丈夫です!レンナさん…しっかりと見届けます」
泣きながらも決意に満ちた目をして答えるフェル。
「厄災を倒した者が貴方達で良かったです、それではリダさん、お願いします」
「知の天使よ、迷える魂を導きあるべき輪廻に返さん、リターンソウル!」
高度な魔法なのか、呪文を唱えるリーダーさん、それと同時にアルゴンの体…本は火もないのに勝手に燃えて、消えていった。
「随分あっさり何だな…」
呆気ないとも思ってしまう…数回しか会わなかったとはいえ、味方の明確な死だ…心がモヤッとしてしまうが、今ここでリターンソウルという魔法を使わなければ理性を失い、化け物になっていたらしいから、これでいい結末のはずだが…。
両手をあわせて冥福を祈る。
「抵抗してなかったしな…確実に会えただろうな、かつての友達とかな」
「リーダーさん、死後の世界てどうなっているのか知ってたりしますか?」
フェルの質問にリーダーさんはうーんと唸り声をあげた後にこう答えた。
「この世界の沢山の知を積み重ねたが…わからない…だからそうであるといいなと思っているよ」
「そうですか………さようならアルゴンさん…」
こうして、魔本の図書館の地下で発生したナンバークエストは終わりを告げた。
魔法
リターンソウル
基本的に対アンデットの魂を輪廻に帰す、神官等のクラスが使える神聖魔法だが、無機物に取り付いた魂にも効果がある。