VSアダマグマ
全力全開のレーザーがアダマグマを貫く、だがオールモスキートと同格ならば確実に倒せてない。
「フェル、これを飲んでくれ」
ビームによって生じた衝撃に耐えつつ、火光をアイテム一覧のシステム画面を操作してしまって、代わりにMP回復薬を2つ取り出す。
1つはお金が無い時に買った少量でMPが400回復する高級なMP回復薬をフェルに飲ませて、もう一つ自分が飲むのは安く、MPが200回復するが飲む量が多いMP回復薬をビームで生じた衝撃がなくなり次第飲み始める。
薬を飲んでいる途中で、ビームで生じた煙が消えてアダマグマの姿が確認できる。
錆色の胴体に黒く焦げた痕がついたが、それが有効打になってるかどうかはわからない、相手は無機物だ、ただ表面が焼けただけな可能性もある。
ゴゴゴとアダマグマの体が動き始める、それと同時にアダマグマの体を拘束していた鎖は赤いエフェクトを纏って消滅する。
「ぷは、フェル、ユリ達が来るまで守り重視でいくぞ!無魔技手!」
「はい!ブレイブハート!」
自己強化してアースキーを構える、現状の作戦は時間稼ぎだ、今無理に攻勢に出た所で有効打を与えれる気がしない。
身構えていると、アダマグマは腕を振りかぶり、こちらに握り絞った巨大な拳で殴りかかってきた!
「はあ!」
気合を入れて、全力で横に飛び、攻撃を回避する、アダマグマの手と地面が接触して交通事故が起きたかのよと思うくらいの轟音が鳴り響く、音だけでわかる、まともに喰らえば最大HPが低い自分の体では耐えられない。
「アイスランス!」
フェルの放った氷の槍がアダマグマに突き刺さり、砕け散るがアダマグマの体に僅かな凹みしか出来なかった。
「名前からして体からマグマを吹き出してきそうと思っていたが…出してこないのか?」
「出してきたら大変ですよ!」
距離を取り、時間を稼ぐ。
アダマグマは大きな腕を振るいこちらを押しつぶさんと攻撃してくる!
言葉も発すること無く襲ってくるのがなかなかに怖い…。
攻撃を何度か避けていると、アダマグマは腕を横に振るい、広範囲に攻撃してくる!
「危な!?」
全力のダッシュで攻撃範囲から逃れる、だがアダマグマは地面を削りながらも拳をこちらにぶつけようと、腕を振るう。
地面と接触しているからか、多少攻撃のスピードは遅くなっている、だがそれでも攻撃を受け止めれるとは思えない、体格差が大きすぎて、こちらからしたら壁がスピードだして迫ってきているようなものだ。
「くそ、リーダーさん、早く来てく……れ!」
ブシュ!と嫌な音が聞こえたので、横に飛ぶとアダマグマの拳が加速して、スピードが一気に上がったのか、自分がさっきまでいた所をすごい勢いで通り過ぎたと思ったら、壁…いや、自分達が入ってきたドアと衝突した!
「あ…」
「ド、ドアが!?」
ドアの状態を見て思わず言葉が漏れる、ドアは亀裂が入っているのだ…明らかにこのまま攻撃を喰らい続けたら壊れますよと言わんばかりの亀裂だ…。
「やばい、ドアを破壊されたら不味い、逃げられる!」
ナンバークエストの失敗条件にアダマグマが研究所からの脱出があった、つまりアダマグマがここから出れるようにゲームシステム的にはなっているはずだ。
「お兄ちゃん!?無事!?」
「生きてたら返事してくれ!いや、HPバーが残ってるから生きてるのはわかるが!」
ドアの亀裂から…向こう側にいると思われるユリ達の声が聞こえる、良かった合流出来ると思ったが、聞こえた声は最悪の情報だった。
「すまんレンナさん!さっきカードキーでドアを開けようとしたんだが、なんかの一撃でドアが壊れて開かないんだ!」
「な!?嘘だろ!?」
もう一度ドアを見る、大きな亀裂は入っているが、ユリやリーダー達の姿が確認できるほどの大きな亀裂はない。
つまり現状だとリーダーさんは何も出来ないだろう、攻撃対象が見えなきゃ攻撃魔法の当てようがない。
ユリは…ドア前でレイドバトルの時にしてくれたゲリラライブを…いや、不味い、あれは敵のヘイトを集める効果もあったはず、ドアを破壊されて、その勢いのまま出口に向かわれたらナンバークエストの失敗に繋がりかねない!
「レンナさん、どうしましょう!?」
「ひとまずアダマグマを攻撃して注意を引こう、リーダー!なんとかしてドアに小さな穴開けて、こっち来てくれませんか!アダマグマの攻撃でドアを破壊されたら、アダマグマが逃げそうです!」
「わかった!なんとかする!」
フェルの不安そうな声を聞きつつ、リーダーさんに声をかけてからアダマグマに近づき、アースキーで殴りかかる!
ギン!と派手な金属音がなるが、装甲は厚く、ダメージを与える感じは薄いが…アダマグマの頭と思えるパーツはこちらを向き…こちらを攻撃してきた!