金曜日、文化祭と高田
文化祭の日がやってきたのだが…ただいまピンチに見舞われていた。
「よおー錬那このドレス着ないか?」
「着ない、というか会ってそうそうドレスを進めるな」
朝の通学路で高田と出会うとドレスを進められた。
「というか、まだ諦めてないのか…」
「ああ、せっかく作ったからネタとして着て欲しい、良いだろ、アイドル衣装も着たんだしさ」
「やっぱり見てたのか…くそ、というかゲームと現実をごっちゃにするな!」
昨日の衝撃のカミングアウトから友奈と会話できてない…色々と聞きたいことがあったが…今はこの状況をなんとかしなければ。
「というかもっと別に話す事はあるだろう、高田の追っかけてたアイドルが…」
「錬那…中の話は止めよう、俺も女装の話をするのは止めるから」
「え、友奈とは会ったことあるだろ?」
高田とは長い付き合いだ、自分の家に来る事は当然何度もあったし、家に来た時に友奈と会っている。
故にリオア=友奈で自分の妹のは高田ならわかるはずだ。
「あのな、アイドルのリアルに触れるのはファンにおいては禁句なんだよ!!」
「あ、そのすまんから大声出すな…周りの目があるだろ?」
そういうと高田は、あ!と声をあげて、小声になる。
「とにかくこの話はここまでだ…」
高田はそういうと黙ってしまった…。
まあ、女装せずに済みそうだ…そう思っていると、再び高田は口を開いた。
「しかし今日はどうするんだ?文化祭の準備メインで動いて、当日は殆ど自由だろ?」
「どうと言われてもな…のんびり過ごすだけだよ、別に特別な予定はないしな」
人によっては恋人とデートだとかあるだろうが…残念ながら自分にそんなイベントはない。
「相変わらずだなー錬那は…もうちょっと夢を見ろよ、甘酸っぱい思い出手に入れろよ」
「無茶言うな、クラスの女性とは最低限の会話しかしたこと無いし、俺の評価は空気か関わりたくないの二択だろう」
学校入学時に積極的に人と話さなかった結果、あっと言う間にグループが出来上がり、元から接点のあった高田以外とは関わることがなくなったからな…。
イジメとかはないはずだ、少なくとも自分の目でわかる範囲ではな。
「お前に現実での青春を求めるのは酷だったか…」
「なんだかんだ言っても、つるんでくれるお前が居るから十分青春はしてるだろう、それなりに感謝してるんだぞ?」
一人ぼっちで学校生活する人は多いと聞くし、テレビでたまに見る学校の虐めとかないし、そう考えると十分だとおもうが。
「無欲だな…もうちょっと欲出せばいいのに」
「よく出したら破滅するのが世の中の理だろ」
昔まだ純粋だった頃、お祭りのくじ引きで欲を出した結果、お昼代が飲まれた記憶があるので、それを教訓にして堅実に生きていきたい。
「まあ、今日の午後は少し一緒に遊ぼうぜ」
「ああ、良いぞ一緒に見て回るか」
こうして自分は高田と文化祭を見て回ることになった。
特に特殊なイベントは起こらずに文化祭の時間は流れる、高田の作ったドレスはリビルドされて、クラスの女子生徒が楽しげに着ていた。
「しかしお前は白い目で見られてたな」
「まあ、男が女性の服を作ったらあんまりいい印象を抱かれないものだ、それでも偏見なく着てくれた子には感謝しかないな」
そう口にする高田は楽しげだった。
「しかし器用だよなあんな服作るなんて、もっとまともな服ならば着ても良かったんだが」
「あれくらい見本があればできるさ、普通のだとつまらないだろ?」
そんな会話をしつつ、文化祭の時間は終わり、放課後の後片付けに走り回る事になるのだった。
その頃には自分は今日は武器の深化でもしようかなとそんなことばかり考えていた。