ネタバラシとアイドル衣装
「とりあえず上がって来て、お兄ちゃん」
リオアはそういうと梯子を出してくれたので、謎の落とし穴から脱出する。
脱出すると、落とし穴は綺麗に消滅した。
「後はコメントをお兄ちゃんに見えるようにするね」
リオアはそういうと同時にシステム画面が現れて、そこにコメントが流れ始める。
『大丈夫か?』
『こんにちはお兄さんリオアを僕にください』
『お兄さんは怒っていい』
『面白かったよー』
様々なコメントが目に入る。
「…約2ヶ月位気付かずに自分はリオアと接していたのか」
「因みに私がお兄ちゃんと兄妹なのはチームゼロオーダーの皆と刀神も知ってるし、お兄ちゃんの相棒も知ってるからね」
「え?自分だけ仲間外れさせられてたの?」
ショックだ…というか気付けなかったのが恥ずかしい。
『お兄さん可哀想』
『でも気付かないのもどうなんだ?』
『兄は鈍感なのか』
「あのな、現実の妹がアイドルやっているというシュチュエーションを想像する奴はそうそう居ないよ!?というか共通の知り合いからさも別人と言わんばかりに言われたから鵜呑みにしたの!」
鈍感扱いしてくるコメントに反論しておく、自分はそんなに空想家じゃない。
というか初対面時に凄く馴れ馴れしかったのは妹だったからか、そりゃあフェルの存在は知ってるよな…。
「というかなんで落とし穴に落としたの?」
「ドッキリと言ったら、落とし穴かなと思ってね」
「なんという安直な発送を…」
呆れていると、コメントでは俺等は止めたとか、企画時リオアはウキウキしていたなど書かれていた。
「まあーそんなことより改めてリスナー達に挨拶して、お兄ちゃん」
「え、えーと、知らない間にアイドルの兄をしていたレンナです、これからもリオアの事を応援して欲しい」
「お兄ちゃん硬いよ、挨拶が!」
ペコリと頭を下げると、リオアにダメ出しされる。
「むちゃいうな、こっちは人前に立つ事を想定した人生送ってないからな、というかこの8.6て視聴者の人数?」
「うん、増えたねー、8.6万人は大盛況だよ」
「………恥ずかしいから帰っていい??ドッキリは終わったんだし…」
「そうだね、と言いたいけど、先にアイドル衣装を着て、その姿を見せてからね」
リオアはそういうと、アイドル衣装を取り出し、こちらに渡してくる。
システム画面が現れて、レンナ用のアイドル衣装と書かれた防具がアイテム一覧に入る。
凄く着たくないが、万人が視聴している状況で逃げたら、妹に迷惑がかかりそうなので、意を決して、自分はアイドル衣装を装備した。
キラキラとエフェクトを発して、ドレスからアイドル衣装に変化する。
フリルが沢山ついた、衣装で胸元には白いムーンストーンがついている、下はスカートで太ももが見えてしまって恥ずかしい…。
『かわいいけど中身男なんだよな…』
『お兄さんは泣いていい』
『お兄さんの尊厳破壊代置いときます』
『明日の話のネタ確定!』
コメントが高速で流れてて、殆ど読めない、だけどなんか赤いコメントで尊厳破壊代置いていった人ちょっとまて!!なんか金額も見えたぞ、3万て何だよ!?!?
「それじゃあ、今日の企画はここまで、お兄ちゃんはもう帰っていいよ!この後はスパチャ読みするからね!」
「え、この衣装どうするの!?」
「あげるー私のは別にあるし、それではお兄ちゃんの反応がよかったら、いいねと高評価よろしくね!」
リオアはそういうと、グイグイと魔法陣の方に自分を押していく、魔法陣の上に立つと自分だけがユリのマイホームに戻された。
「あ、レンナさんおかえりなさい」
「た……ただいま」
フェルが出迎えてくれるが…フェルの側にはパソコンのような機械があり、そこにはさっきまでいたリオアの部屋が写されていた、そこにいるリオアは軽快にトークを続けている。
「もしかして全部見ていた?」
「………はい、黙っててごめんなさい」
「いや、ユリに口止めされてたんだろ?なら仕方ないよ」
謝ってきたフェルを許す…全く、とんだ一日になったぞ。
とりあえずアイドル衣装から普段の防具…赤いコートに着替える、さっきはから、フェルからめっちゃジロジロ見られてたからな、恥ずかしい。
というかこのアイドル衣装、防御性能が皆無なのに、特殊効果で踊り上手と歌上手が特大で付与されている…特大とか始めてみた…。
「似合ってるのに着替えちゃうですか?」
「似合ってても恥ずかしいんだよ…」
なんというか短い時間だったが、精神的にガッツリ疲れ果ててしまった、側にあったソファーに倒れ込む。
「今日はもう冒険も鍛冶もしない…」
「お疲れ様です…回復魔法使いますか?」
「念の為にお願い…」
フェルがリジェネレートを唱える、精神的に回復した気がした…完全にプラシーボ効果である。
『えーと次のスパチャは…しっかりと律儀に約束を守るお兄ちゃんでよかったね、お兄ちゃんに対して一言言って欲しい…と』
パソコンのような機械からリオアの声が聞こえる、コメントを読み上げているのか?
『お兄ちゃん!何時もありがとうねー!鈍い所もあるっちゃあるけど、それでも義理堅くて優しいお兄ちゃんが大好きだよ!』
……はあ、なんというか怒る気も失せるな。
こうして自分は今日の残りの時間をユリのマイホーム内でゆっくりと過ごすのだった。