フォー街にて
「あ、レンナさん、フォー街を見て回ってみたいです」
魔本の図書館からフォー街にたどり着き、入口にある移動用の魔法陣で、ユリのマイホームにワープしようとした時、フェルがそんな提案をしてくる。
「フォー街を見て回りたいのか?」
リーダーさんやTTからフォー街は治安が悪いと聞いたことがあるのと、別にフォー街に用事もなかったのも相まって、現状入口周辺と移動用魔法陣位しか見たことない。
どれぐらいの治安かはわからないが、外国のスラム街レベルの治安だとしたら、目的無しにフェルをつれて歩きたくない。
「はい、駄目ですか?」
「いや、だめじゃない、見て回るか」
見て回るという目的が出来たので、フォー街を見て回る事に決めた、別に今帰った所で、クエスト達成の為に、鍛冶をし続ける感じになると思うので、気分転換にちょうどいいかもしれない。
自分は少し周囲を警戒しつつも、街中を見て回る為に歩き出す。
周囲を見た感じは、今まで見てきた街とあんまり変わりがないように見える…。
「人が多いですね」
胸ポケットにいるフェルがそんな感想をこぼす。
確かに他の街と比べても、人の数が多いのだ、もしやと思って、システム画面を呼び出し、オプション設定で、PLの頭上に名前を表示するオプションをオンにすると、眼の前に大量の名前が現れた…。
はっきり言って、前が見にくくなる為、頭上に名前を出すオプションはすぐにオフにした。
デフォルトではオフになってるけど、オフな理由は視覚的理由があるんだな。
「どうかしましたか?レンナさん?」
「なんでもない」
眼の前でシステム画面を操作してたからか、フェルの気を引いたみたいだ、別になんでもないのでそう言って、更に街を見て回る。
「………見た感じは他の街と対して変わらないな…」
「あ、レンナさんあそこに武器屋があります!」
警戒心とは裏腹に、他の街と変わらない事に肩透かし感を感じていると、フェルが武器屋を見つけた。
そういえば、武器を自作出来るから武器屋に入った事がない…フォー街の周辺の強さの基準にもなると思うので、入って見たくなった。
「ちょっと見てみるか」
アースキーと火光があるので、確実に冷やかしになるのだが、武器屋が気になった気持ちが湧いたので、武器屋の中に入店する。
「……………らっしゃい」
武器屋の店内に入ると、無骨なおっさんがクールに出迎えてくれた。
店内には大量の剣や槍、鈍器などが並んでいて、ご丁寧に値段や名前まで書かれていた。
「………ふむ」
鑑定眼を使い、武器の性能を見ていく…。
攻撃力などのステータスはアースキーや火光より多少高いが…特殊スキルどころか、特殊効果すらない武器しかなかった。
「私達の勝ちですね!」
ムフンと勝ち誇ったように胸を張るフェル、別に競ってる訳じゃないからな、というかステータスだけなら負けてるからな?総合なら勝ってると思うが。
「………」
「フェル、そろそろ行くぞ」
多分気のせいだが、無骨のおっさんが睨んでるように感じたので、自分は早足で武器屋から出ていった。
少なくとも、今のアースキー達でもフォー街周辺は問題ないという感じかな?
探せば近くに防具屋とかも見つかりそうだけど、こちらも冷やかしになるから、行かなくていいだろう。
「フォー街特有の建物とか無いのかな?」
セカンド街だと闘技場、スリー街だとオークション会場とかあったが…。
そんな独り言をこぼして歩いていると、眼の前にシステム画面が現れる。
『この先治安が悪いエリアです、NPCを連れて入る事は非推奨です』
うお、なんだこの警告文…始めてみた。
「フェル、そろそろ帰ろうか、十分見て回ったしな」
「え、でもあそこの教会みたいな所が気になります」
警告に従い、引き返そうとしたら、フェルが近くにある謎の教会に興味を持ったみたいだ、教会の外見は寂れていて、所々汚れている…。
どの神様を信仰しているのかは全くわからない、闇の神様とか光の神様とか居るみたいだけど、自分は刀神しか知らない。
「教会?宗教施設に行っても面白いものはないと思うが…行ってみるか」
万が一勧誘されても、刀神の信者と言えばなんとかなるぽいし、治安の悪いエリアだとしても、すぐ近くの教会に行く位なら問題ないだろう。
そう思い、自分達は教会に向かって歩き始めた。