特上の鉄の剣とアースキー
カンカンカンと真っ赤に輝く鉄をしっかりと視てハンマーを振るう、現実なら長時間の直視は目に良くないのだが、ゲームの世界だから目に悪影響はないはずだ。
「あとはこことここ…」
フェルの補助魔法を受けた体でハンマーを振るい、鉄に力を加えていく。
チラリとフェルを見ると、魔力を送るように鉄床に両手を向けていた。
すぐに視線を真っ赤な鉄に戻す、何度もハンマーを振るい、納得するまでハンマーを振るった自分は仕上げボタンを押した。
『特上鉄の剣
属性:無
ステータス:攻撃力+16
特殊効果:斬撃強化(少)
レンナとフェルが協力して、かなり丁寧に打って作られた鉄の剣、極めて質が良く、鉄の性能を限界まで伸ばした一品、されど鉄は鉄、歴史に名を刻める程強力な武器ではない』
よし、文句なしの高品質の鉄の剣が出来た!
………もしかして火光とかアースキーも作る際に上手く作れば上質とか特上とかついていたのかな?
まあ、その分強化で強くすればいいか。
「次はこれを使って、アースキーを強化だ」
「なんですかそれ?」
MPを薬で回復しつつ、リーダーさんから貰った太古の木材を取り出したら、フェルが不思議そうに見つめてくる。
「リーダーさんとの取引で手に入れたアースキーの強化素材だ、ナナサカさんが伐採して来た物だ」
「なんか…神聖ぽい感じがしますね」
まあ、刀の神様自らが伐採した木材と文字に起こしたら神聖ぽいけど、実際はただ邪魔な敵を斬っただけなんだろうな。
ナナサカさんは神様みたいなクラスだけど、神聖さはまったくない。
「まあ、神聖であってもなくても、アースキーの素材として申し分ないはずだ」
ナナサカさんが潜るダンジョンなんてエンドコンテンツ級だろう、そのボスの素材ならかなり強くなるはずだ。
どれだけ強くなるかなと思いつつ、強化の為にアースキーと太古の木材をセットして、呪血鍛冶の固有コマンド、血を注ぐをオンにする。
「フェル、準備はいい?」
「はい、何時でもどうぞ!」
鍛冶設備を起動して、強化を開始する。
フェルの補助魔法を受けつつ、ドンドンと金属音がならないアースキーの先端を何度も叩く。
「もっと、強くなってくれ、アースキー」
そんな祈りを込めて、ハンマーを振るう。
妖精門の鍵とは違い、叩くたびに火が吹き出して来ることは無いので、ただひたすらにシャベルの形をした金属を叩き続ける。
特に特別な事は起きない、それでも手が抜けない大事な作業だ。
「これからも戦いで生き抜く為に、強くなってくれ!アースキー!」
そんな願いを口にして、仕上げボタンを押した。
『アースキー
属性:地
ステータス:攻撃力+36、魔法力+35
特殊効果:刺突強化(大)、作業効率化(小)、身代わり(フェル)、底力(大)、装備制限:呪血鍛冶、レンナ
特殊スキル:地門、妖精の祝福
レンナとフェルが力を合わせて作った戦闘用のシャベル、妖精と地の力に満ちていて、振るえば、どんな地面も掘り返せるだろう、また大地を操作する力もある、それは妖精の力の模倣である。
3回改造済み、レンナの血を多く取り込んだ結果、かなり鋭くなった』
完成したアースキーを確認する、性能が上がって、突く攻撃がより強くなった代わりに、採掘に向かなくなっている感じか。
でも思ったより性能が上がらなかったのは、上手く打てなかったのか…?
それともアースキーの性能を限界まで引き出して、伸びしろがもう無いのか…どっちなのだろうか?
だが説明文で性能に限界とか書いてない為、前者であって欲しい。
「レンナさん、鉄の剣はもう納品しにいくんですか?」
「ああ、すぐに納品しよう」
成功報酬の深化システムが気になるし、街から魔本の図書館までの道中だけ気を付ければ、魔本の図書館はショートカットで一気に地下6階まで行けるので自分は強化したアースキーを手に、フェルと共に魔本の図書館に向かった。
因みに、特上以外の鉄の剣は、NPCのお店で売り払った。