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鍛冶屋の息子、MMORPGにはまる  作者: リーフランス
図書館の奥底にあるナンバークエスト
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高品質な武器を作ろう

「ふぁー…おはようです、レンナさん…」


夜ふかししていたのか、昼寝?夕寝?をしていたフェルを起こすと、眠たげに挨拶してくれた。


「おはようだ、眠気覚ましにコーヒーでも飲むか?」

「飲みたいです…」


ウトウトとした返事を聞いて、コーヒーを用意する。


ユリのマイホームのキッチンにあるシステム画面をちょっと弄れば、フェルの体格に合わせた、淹れたてほやほやのコーヒーが出来上がる。


豆を引いたり、フィルターのセットやお湯を注ぐ過程をすっ飛ばしたコーヒーだ、現実のコーヒーとの味の違いはよくわからない。


現実だとコーヒーを飲むと、夜眠れなくなるので、飲まないのだ、あと純粋に苦いのあんまり好きではない。


「はいどうぞ、目覚ましの一杯だ」

「ありがとうレンナさん…」


コーヒーを受けとり、クピクピと飲むフェルをのんびりと眺める。


「フェルは苦いの平気なんだな、苦手な味はないのか?」

「不味い味が苦手です」

「それは大半の生き物が苦手だな…」


そんな会話をしながら、フェルがコーヒーを飲み切るまでゆったりと過ごす。


「そういえば、あの本に渡す武器に使う材料は決めたんですか?」

「材料は鉄のインゴットにして、剣を製造する予定だよ」

「鉄て、人間の世界では珍しくもない物ですよね?もっと希少なインゴットは使わないんですか?ユリが使っていい素材の中にもっと凄いインゴットがありますよね?」


不思議そうな頭を傾げるフェル、確かにユリのマイホームの倉庫には、アダマンタイトのインゴットとかミスリルインゴットとか自分で手に入れた事もない希少な物もあるが…。


「強さよりも質を求められているからな…それなら一番使い慣れた鉄が、一番質のいい武器を作れるんだ」


ナンバークエストの成功条件は曖昧に設定がされているが、失敗条件では納品した装備の質が一定値以下とある為、逆を言えば小さい鍛冶の意思が求めている物は、強さよりも質の高い武器である可能性が高い。


それならファンタジーの金属で慣れない金属より、何度も鍛冶で使用したことがある鉄の方が、質の高い武器が作れるはずだ。


これで強くて、質も高い武器が条件だった場合は…その時は自分の読み違いということで、潔く失敗しよう。


「わかりました、それなら最高に質のいい鉄の武器を作りましょう!」


コーヒーを飲んで眠気がなくなったのか、やる気ある声をだす。


こうして、やる気にあふれるフェルと共に、ユリのマイホームの倉庫にあった60個あった鉄のインゴットを持って、チーム:ゼロオーダーの工房で、極限までに質を高めた鉄の武器の製造を試み始めた。


はっきり言って特殊なシステムを使わずに、鉄の武器を作るだけなら、鍛冶設備を動かす際に消費するMPは少なくて、特に語る必要なく、製造は全く難しくはなかったが…。


『上質な鉄の剣

属性:無

ステータス:攻撃力+8

レンナとフェルが協力して、丁寧に打って作られた上質な鉄の剣、他の鉄の剣と比べて、質は良いが、世の中にはまだまだ上があるので、強い武器を手に入れたら乗り換えよう』


……なんか説明文が納得いかない、質は良いがとあるが、まるで強さでは他の鉄の剣に負けていると言われているような気がする…。


それに何時もはついている特殊能力が何一つ無い、ただの鉄の剣だからか?


「フェル、もう一回やってみていいか?」

「はい、何度でも協力しますよ!」


鉄インゴット2つで、1つの鉄の剣を作れる、ユリの倉庫から貰った鉄のインゴットは60個あり、後29回挑戦出来る。


何度か挑戦すれば、納得のいく鉄の剣が作れるだろうと思い、再び鉄の剣を作り始める…。




〜1時間後〜




「だあぁ!だめだ、なんか納得行く武器が作れない!」

「レンナさん…少し休憩しませんか?」

「………ああ、フェルの言う通りだな、気が急いて集中力が無くなってるな…」


フェルの提案を受け入れて、近くにある椅子に座る。


20本の鉄の剣を作ったが、殆どの剣は上質の鉄の剣になったのだ、それ以外の剣は上手く打てずに、失敗して、上質がつかない鉄の剣になっていた。


「多分だけど、特上があるよな…この調子だと…」


上手くいかなかった剣には何もつかず、比較的上手く打てた剣には上質がついていた…。


上質の鉄の剣の説明文的に、上質の上に特上の鉄の剣とか、最上の鉄の剣とかがあると思うのだ。


「深く考えていると、精神的に休まりませんよ?深呼吸してみたらどうですか?」

「え、ああ…」


フェルに言われて、一旦考えるのを止めて、深呼吸をする。


深呼吸していると、気分が落ち着いてくる、自分なら特上の鉄の剣は作れるはずだと、かなり躍起になりすぎてたみたいだ。


「ふう、落ち着いた…鍛冶屋の基本を思い出さないと…」


父親の言葉を思い出す。


『レンナ、鍛冶で必要なのは見ることだ、眼の健康面的にはあんまり良くはないが、それでもしっかりと燃えた金属を見ないと、しっかりとした鍛冶は出来ない』


頭の中で、父親の言葉が鮮明に思い出せた。

しっかり見て、ハンマーを振るう…当たり前のことだが、当たり前だから基礎なのだ。


ファンタジーフリーダムの世界では未知の金属やゲーム特有のシステムで鍛冶をしていたから、基礎が疎かになっていた。


「よし、ありがとうなフェル、深呼吸したおかげで、頭がスッキリした、もう一度鉄の剣を作るのに協力してくれないか?」

「はい!頑張りましょう」


初心を取り戻した自分はフェルと共に再び鉄の剣の製造に取り掛かるのだった。

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[一言] 特上越えたもの作りそう。
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