地下6階、???
カツカツカツと階段を降りていくと、電子音というか機械音みたいな音が聞こえる。
『妖精鍛冶屋/妖精門の技師のレンナ
秩序/中立
呪血鍛冶のレベル4
現実の鍛冶スキルと大きく格差あり』
何この声?秩序中立てなに?
そう思いつつ、階段を降りていくと、地下6階にたどり着いた。
そこには本棚が1つしかなく、石造りの壁と1つのテーブルと椅子だけがあった。
本棚だらけだった魔本の図書館とは思えないくらい質素な部屋だ。
「てっきり誰かがいると思いましたが、誰もいませんね…」
「そうだな…」
フェルの疑問に同意しつつ、1つしか無い本棚を眺める…本棚に収まってる本はどれも背表紙にタイトルが書いてない。
「根っからの鍛冶屋よ、よく来てくれました」
本棚に収まってた1つ本が光輝き、声が聞こえる。
光ってる本を本棚から出せばいいのかなと、不用心に光輝く本を手に取る。
「手にしていただき、ありがとうございます、私は小さなる鍛冶の意思、貴方に頼みがあって、声をかけたのです」
手にした光る本から声が聞こえる…。
「頼み?」
もしかして、本の封印から開放してほしいのかな?その場合、断ったほうがいいよな…封印されてるのを開放とか怖いし。
「武器を作って欲しいのです…運命を変える強力な武器を…と言ってもいきなり運命を変える武器を作るのは不可能ですから、まずは力試しとして自作の武器を作って、持ってきてください」
小さい鍛冶の意思の言葉と連動して、システム画面が現れた。
『ファーストクエスト
鍛冶妖精と鍛冶の魔本
成功条件
小さな鍛冶の意思が望む装備を納品する
失敗条件
一ヶ月の時間経過
納品した装備の質が一定値以下
自作以外の装備の納品
成功報酬
武器の深化システム早期開放
鍛冶スキルレベルにボーナス経験値
失敗ペナルティ
魔本の図書館の地下6階の立ち入り禁止
特記事項
魔本は貴方の実力を深く知りたいみたいだ。
また納品した武器は戻ってこない』
「ナンバークエスト!?」
思わず驚く、ナンバークエストそのものに驚いたのもあるが、内容がしっかり書いてあることに驚きだった。
成功報酬にある武器の深化内容は全くわからないけど、武器を強化できる内容なのはなんとなくわかった。
「レンナさん、どうしますか?」
フェルが不安そうな表情を浮かべる。
確かにフェルが不安になるのもわかる、奇妙な本からの依頼、普通なら避けるべきだが、ナンバークエストかつ、成功報酬が武器の成長に繋がりそうで極めて魅力的に見えた。
だが強い武器を作って渡して、ありがとうこの武器の切れ味を確かめさせてもらうよ、お前の体でな!と裏切る可能性はあり得るかも知れない、相手が怪しい本のせいでいまいち信用できない。
「安心してください、私は鍛冶に精通するものの味方です」
小さな鍛冶の意思がそう言うと、ナンバークエストの特記事項に『魔本は貴方達に危害は加えない』という文字が追加された…。
そこまでシステム的に言われたら、受けても問題ないかな?と思ってしまう。
「わかった、受けよう」
成功報酬につられて、自分はナンバークエストをやることを選択した。
「貴方の大いなる決断に感謝します、貴方の実力を知る為の武器をお願いします」
「待ってください、実力を見るならレンナさんが持っている武器を見ればわかるんじゃないんですか?」
フェルがそんな疑問をだす。
『確かにそうですが、私はより深く知りたいのです、貴方達の力を』
小さな鍛冶の意思の本が更に輝いたと思ったら、隣にショートカット用の魔法陣が現れた。
触れると入口まで行き来出来るようになったとシステム画面が現れた。
「私はここから出る事が出来ませんが、これで行き来が楽になるはずです」
「出ようとしたらどうなるんだ?」
「自動的にこの本棚に戻ります」
なるほど、まあ、本の持ち出し厳禁と図書館の入口に書いてあるから、持ち出す事はしないほうがいいだろう。
「わかった、それじゃあ後日武器を作って納品する」
「お待ちしています、根っからの鍛冶屋よ…」
小さな鍛冶の意思はそう言うと、手にしていた本は浮かび上がり、本棚に戻っていって、輝きを失った…。
「フェル、明日から忙しくなるぞ、時間も時間だから、作るのは明日だ」
「そうですね、どうせ作るならあの本が驚く位に凄い物を作りましょう!」
やる気満々なフェルと共に、ショートカット用の魔法陣で、魔本の図書館から出た自分達は、アバター破損の状態異常から回復して、レンナとしての姿を取り戻した事に驚きつつも、ユリのマイホームに帰還してログアウトするのだった。




