不思議な声
魔本の図書館の入口である1階にたどり着くと、古本のような匂いが出迎える。
「相変わらず敵対する存在も、友好的な存在もいないな…えーと確か…」
前回来た時には、手に取れる本があった場所に足を運ぶ。
読む本は宝石や金属の図鑑だ、他にも面白そうな本があるなら読んでみたい。
「フェルもなんか読みたい本見つけたりしたか?」
「えーと、あの本が読んでみたいです」
フェルが指さした本を取る、タイトルは魔法から見る次元学だった。
「なにこれ?」
科学とファンタジーの融合本なのかな?フェルが読みたいなら、読書を止める理由はない。
宝石図鑑と次元学の本を手にして、近くのテーブル付きの椅子に座り、それぞれ読み始める、フェルは本をテレキネシスで器用にページを捲っている。
「定番なダイヤモンドはゲームの世界でもレアなんだな…そしてルビー、サファイア、トパーズか」
この三種の宝石がゲーム内だと、火、水か氷、雷の力をよく宿しているのは、自分も知っている話だ、このファンタジーフリーダムでも、同じ効果を秘めているみたいだ。
よくよく考えたら、今アクセサリーとして身につけている指輪もトパーズ使ってる影響か、多少ながら属性に耐性効果があるんだったな。
「………」
チラリとフェルを見ると、凄い真剣な表情で本を読んでいる…。
そういえば、魔法から見る次元学…ということだから、もしかしてワープとかの魔法とか、書いてあったのかな?
ワープとか出来るようになれば、転移魔法陣無しでもフェアリーガーデンに行けるようになるのかな?
いや、転移魔法陣込みでもそこそこMPを使ってたのにそれ無しとなるとかなりのMPを使いそうだし、難しいかな。
「他の本探すか…」
図鑑はそんな長時間見るものではない、それに家にある図鑑と似ている所が多かったから、飛ばし飛ばしの流し読みですぐに読めてしまったのだ。
「鍛……よ、…の…が…こえ…でし……か?」
「うん?」
耳に何かが聞こえ…た?
そういえば、魔本の図書館の地下3階でもなんか聞こえたような気もするが…幻聴か?別に疲れてはいないはずなんだが…。
「……もしかして言葉を話す本から話しかけられてるとか?」
独り言を口にして、耳を済ませてみる。
「最奥に…て…だ……」
声が聞こえた!次はしっかりと…。
だが最奥という言葉だけでは、何とも判断に困る、この魔本の図書館の奥なのか、はたまた別の所の最奥なのか…?
「うーん、まいったな…」
何かクエストの気配を感じるが、情報不足過ぎて困る…。
いっその事、聞こえなかったとして、スルーするのもありだが…少しだけとはいえ、聞こえた以上、スルーはかなりしずらい。
もう少し耳に意識を集中して、何か聞こえないか試みる。
「図書館の最奥…へ…」
聞こえた、図書館の最奥!?
でも何者なんだ?図書館の最奥に来て欲しいと言っているぽいけど、図書館の地下は関係者以外立ち入り禁止で、割と危険な本があるのだ…。
その図書館の最奥てその地下の一番下だよな?
ボス本よりやばい敵が居るよな…?
もしかしたら、封印されたやばい存在が封印を解いてもらう為に、自分に語りかけてきている可能性があるよな?
まあ、他の可能性として、伝説の装備に呼ばれて…いや、それはないか、自分は勇者じゃなくて鍛冶屋だしな…。
「………レンナさん、立ち止まってどうかしたんですか?」
「ひゃ!?え、えーとちょっと考え事…」
うんうん考えていると、フェルに話しかけられてびっくりして、慌てて答える。
「そうですか」
少し不思議そうな顔をしつつも、フェルは読書に戻る、そんだけ本の内容が魅力的なのかな?
とにかく考えた所で答えが出ない…だが少なくとも、行く場合ならフェルに相談しないとないけないし、少し考えよう…。
そうだ、リーダーさんに聞けば図書館の最奥に関してなにか聞けるかもしれない…。