ユリのおねだりとレシピセット
鍛冶に使う素材を吟味していると、フェルが声を発する。
「あ、レンナさん、レシピセットというのを見つけました!レンナさんに向けた、ユリのメッセージもあります!」
「え?なにそれ?」
フェルの指差す所にはレシピセットという文字が書かれたファイルと、そのファイルにお兄ちゃんへと書かれたメモ用紙が貼ってあった。
『お兄ちゃんへ、このレシピを使ったのなら、後でフォンダンショコラを奢ってよね!この世界ではあなたの姉のユリより』
ユリからのメッセージを読む…レシピは使っていいみたいだな…最後の姉主張の1文はスルーでいいか、こっちが兄だよ。
代わりにフォンダンショコラを奢らないといけないみたいだが、それくらいなら別に後日奢るか。
「剣のレシピから始まって、槍のレシピに斧、鎌のレシピ、弓矢やクロスボウまである…これがあれば大抵の物が作れそうだな…」
レシピは殆どの物が作れるのではないかと思えてしまう量だった。
「でもなんでここに置いてたんでしょうか?渡すなら、直接手渡せばいいのに…滅多に会えないという関係では無いですよね?」
ユリの行動に、頭を傾げるフェル。
「兄妹だから毎日会ってるな、フォンダンショコラが食べたかったから…じゃないかな?面から向って、フォンダンショコラ奢って!とは言いにくいだろうし…」
ユリの兄とはいえ、妹のやる事を全て理解できるわけではないが、一応の予測を口にする。
「ユリがレンナさんにおねだりですか………回りくどいですね」
「まあ、フォンダンショコラは後日奢るとして、このレシピは使わせてもらおう」
ユリは生産スキルを持ってない可能性が高い、ここで自分が使わなければ腐るだろうから、ありがたく活用しよう。
「ならせっかくだし、槍を作ってみるか」
レシピでふと目に止まったので、槍を作る事を決める、何を作るか決めずに素材を探すより、大雑把でも武器のカテゴリを決めたほうがいいだろう。
『槍製造時の最低要求素材
持ち手、金属もしくは木製素材×1
槍の先端、尖った、もしくは硬い素材×1』
レシピを確認して、内容を口にするが、結構アバウトだ…。
「槍を作るなら、尖った物を素材にすると良いですよね?これなんてどうでしょう?沢山ありますし、並べれば強そうです!」
フェルが倉庫から取り出したのは釘だった、確かに尖った所を大量に並べれば、十分な殺傷能力が得られそうだが…。
「確かにたくさん並べたら強そうだが、見栄えが悪くて、なかなか高値で売れないかもな」
「それならこれはどうですか?」
次にフェルが取り出したのはアース・ドラゴンの牙だった。
「あー丁度良いかもな、槍の先端はこれにして、持ち手は銀のインゴットにするか」
そう決めて、倉庫から銀のインゴットとアース・ドラゴンの牙を取り出して、自分達はチームゼロオーダーの工房に向かった。
工房ではリーダーさんが真剣な表情で裁縫をしていたので、話しかける等の邪魔をせずに、自分達は売り物の槍を作る為に鍛冶を開始する。
売り物なので、呪血鍛冶特有の血を注ぐ、というコマンドはオフだ、使いすぎるとただでさえ低い最大HPが更に低くなるからな…。
カンカンカン!
鍛冶作業自体は、フェルのサポートもあるので、特に苦戦すること無く完成させることが出来た。
『竜銀の槍
属性:地
ステータス:攻撃力+35
特殊効果:刺突強化(中)、地耐性(小)、毒耐性(小)、装備制限(レベル30)
レンナとフェルが作った槍、盾を持って振るう事を想定した長さで誰でも扱えるが、重いのである程度のレベルが必要』
性能は魔法力がなくなって特殊効果が一部変わったアースキーみたいな感じ?
売れるのかなこれ?物理特化職なら需要ありそうだと思うんだが…。
ちょっとリーダーさんの裁縫が終わったら見せてみよう。