新たな防具を作る為の下準備の委託
「いらっしゃい2人共」
チームゼロオーダーの工房にたどり着くと、リーダーがシステム画面を操作していた…。
何をしているかわからないが、邪魔するのは良くないので、フェルと共に静かに待っていようとすると、リーダーさんがシステム画面を閉じて話しかけてくる。
「気を使わなくてもいいぞ2人共、ちょっと情報のやり取りをしていただけだから…早速だけど、布を作る為の材料を出して欲しい」
リーダーさんの言葉に従い、魂の糸と竜の鱗を渡す。
「そういえばレンナさんだと、糸から布は作れないんですか?リーダーさん」
「出来なくはないけど、糸から布作るのは難易度高いし、俺は布作りは得意だから任せてくれないか?」
「布作りはやった事無いのでお願いします…それに虫の糸はあんまり触りたくない…布に加工すれば話は変わるが…」
裁縫はやったことあっても、布作りはやった事は無い、ならば得意なリーダーさんに任せるのが安定だ…。
自分がやって、失敗して糸ロストしたら目も当てられない…いや、今回は秋イベントでまた調達すればいいんだけど…時間がかかるからな…それは避けたい。
「それじゃあ、ハーブティーとパンケーキでも食べて、のんびりしていてくれ」
リーダーさんは自分とフェルに合わせたナイフとフォーク、メープルシロップがかかったパンケーキと淡い緑色のハーブティーを自分達に出してから、裁縫をする作業台を使い、魂の糸を布にする為の作業を開始した。
「レンナさん!このパンケーキ絶品ですよ!」
フェルは早速パンケーキを食べ始めて、美味しそうに羽を動かしている。
自分も一口食べてみるとじんわりと旨味と甘さが口の中に広がる。
ハーブティーも飲んでみるとカモミールと思われる味がした。
「うまいな…」
「こ、高級品なのでしょうか?」
「高級品かもな………」
というか鑑定眼を使えばわかるのではと思い至り、まだ残っているパンケーキに鑑定眼を使うと、ウランさんお手製のパンケーキと出てきた…まさかのウランさんのお手製だったとは…。
「…ウランさんお手製なんですね……負けられません」
フェルも鑑定眼を使ったのか、なんで対抗心を燃やしてるかはわからないけど、料理が得意なのかな?
そんな事を考えつつも、フェルと秋イベントに関して、雑談をしながらのんびり過ごしていると、リーダーさんが作業を終えたのか、こちらに話しかけてきた、手にはトレイを持っていて、トレイの上には黒色と赤色の布が置かれていた。
「ご注文の布をお持ちしました…」
「なぜ料理を持ってくるウェイター風…?」
自分達の前に布を置いて、完全に飲食のスタッフみたいだ、そんなツッコミを入れつつ、リーダーさんが持ってきた布に鑑定眼を使う。
『魂竜の布
リダが作った魔法の布、丁寧に作られた一品、魔法の力に満ちていて、防具に使えば龍鱗の如くの守りを授けるだろう』
凄くいい布なのはわかる…あ!そうだ!大事な事忘れてた!
「そうだ、前布作ってもらった時はお金払ったのに今回はお金払ってない!」
やべぇ!鍛冶屋なのに、肝心な事忘れてた!?
「ああ、いいよ、前の150万は糸以外の材料を買う金に殆ど当ててたし、今回竜の鱗取ってきてもらったからな」
「駄目だ!技術の安売りは許せない!これ足りないと思うけど、受け取ってくれ!」
リーダーさんにお金を渡す…ほぼ無一文になるが、技術をタダで買うのは、一端の鍛冶屋として許されない。
「…………わかった、受け取ろう」
リーダーさんは驚いた表情をしながら、お金を受け取った。
「所で、今回もコートとジャケットを作るのか?」
「さっきフェルと相談したけど、自分はコートを作って、フェルの防具はジャケットとして作ろうかなと思ってる」
「レンナさん!私は黒いジャケットを着てみたいです!」
「ふむ、両方逆にするんだな」
リーダーさんの質問に答える、今は自分は青いジャケット、フェルが白いコートを着ているが、今回はフェルの要望も入れて、自分の防具は赤いコート、フェルの防具は黒いジャケットを作っている予定だ。
どんなのが出来るかなと、ワクワクしながら裁縫をする為の道具を取り出し、裁縫をする場所に立つのだった。