裁縫と細工の実践中
まあ、作りたいと言ってもレシピはローブと指輪しかないのだが…。
「試しにフェルのローブ作るか…」
「え、私のローブですか?」
自分のローブを作っても、性能が低くて、着ることはないだろう、ならフェルがおしゃれで着れる物がいいだろう。
「どんな物ができるんでしょうか?」
「それは完成後のお楽しみだね、鍛冶の時みたいに協力して作らないか?」
「はい!補助魔法でサポートします!」
「あ、裁縫するなら、そこの作業台の上でやった方が難易度下がるよ」
フェルと一緒にやる気を出し、リーダーの案内で作業台の上に立ち、リーダーから貰った妖鉄の裁縫箱を取り出して、レシピを確認する。
『ローブ製造時の最低要求素材
布、革、皮のいずれかの素材×2』
そうだ、初戦闘の時、うさぎの皮を拾ったし、せっかくなら一つはうさぎの皮、もう一つはリーダーから貰った魔法の絹、使うか。
システムで設定すると、こう切ってほしいとガイドが現れる…て、練習のときと違ってきめ細かいな!?
「リジェネレート、フェアリーウィッシュ、スリップガード、スピードアップ!」
フェルの補助魔法を受けつつ、切ったり縫ったりしていくが、うさぎの皮を使った所は、毛のフサフサがガイドのラインを一部隠して、何処を切れば、縫えばいいのか分からなくなっている…。
「レンナさん、そこはギザギザに縫ってください!」
「わかった!」
毛の厚さにガイドが見えなくなり、手が止まった時、フェルの指示と同時にガイドが強調表示され、再び裁縫が進む。
「これでオッケーかな?」
ガイドの最後まで縫うと、完成しましたというシステム画面と共に性能が表示される。
『小さなラビットローブ
属性:無
ステータス:防御力+1、魔法力+3
特殊効果:運増加(大)、耐寒耐性(大)
レンナとフェルと共同作業で作った白い兎のローブ、防御性能はほぼないが兎のもこもこで寒さを防ぎ、幸運を呼ぶ効果がある、フードにはウサミミがついている、また妖精の羽を通せるように背中に穴が空いている』
「わーすごい、もこもこです!」
「着てみてほしい、あ、更衣室的な物ありますか?」
ローブをもふもふするフェルを見つつ、リーダーにそう聞いていると、フェルが白いエフェクトを纏ったと思ったら、フェルが着ていた植物の服が消えて、作ったラビットローブを着ていた、更衣室はいらなかったか。
「NPCが着替えるシーンとか始めてみたよ」
そういうリーダー、自分はじーとフェルを観察していた。
白い兎のローブと青い髪と羽がマッチしている、嬉しそうにくるくる回るフェルを見てると頑張って作ったかいがあったなと思えてくる。
「えへへ、ありがとう、レンナ!大事にする!」
「どういたしまして、そこまで喜んでくれて嬉しいよ」
こうして作った物を大事にするって言ってくれるのは、本当に嬉しいな、妹以外に言われたことないんだよな…。
「……なあ、せっかくなら指輪も作っていかないか?二人共装備してないよな、もったいないぜ、二人で2つ作れば、結構な特殊効果得られるかもよ、それに指輪なら鉱石で作れるし、作ってみなよ」
「はい、やります!」
「手伝いますよ、レンナさん!」
気分がよくて創作意欲が湧いていたので、リーダーの言葉にやる気満々に答えて、細工師の白銀台を取り出す。
細工と裁縫は同じ作業台でやると良いらしいので、そのままレシピを確認する。
『指輪×2製造時の最低要求素材
インゴット、鉱石のいずれかの素材×2』
貰ったプラチナ鉱石だけだとあれだし、洞窟探検で手に入れたトパーズと銀鉱石も使おう、鉱石からどうやって指輪になるかは気にしない、システムで出来るなら、出来るんだろう。
「リジェネレート、フェアリーウィッシュ、スリップガード、パワーアップ、スピードアップ、エレメントブースト!」
ノリノリで補助魔法を使うフェル、こちらも好調に手を進める、研磨されて、みるみると2つの指輪が出来上がる、トパーズは外れないように指輪に埋め込むような形で細工していく。
「出来た!!」
直感と感覚でわかる、最高傑作だ!
『妖精と鍛冶屋の指輪×2
属性:風
ステータス:魔法力+5
特殊効果:共鳴増加(大)、場所共有、属性耐性(少)、破壊耐性、スリ耐性、条件を満たさない者装備不可、コピー不可
レンナとフェルの合作、トパーズが埋め込まれた指輪、絆の深さと付き合いの長さはイコールではない。妖精サイズと人間サイズがあり、二人の左手にしか装備できないようになっている。』
共鳴増加は共鳴スキルの強化、場所共有は同じ指輪を装備した者同士の位置がわかるらしい。
これはフレンドシステムが使えないフェルと相性がいいのかな?耐性は盗まれない、壊されない感じか、コピー不可て、逆にコピーする技術があるのかな?
しかし左手限定て…婚約指輪…いや意識し過ぎか…。
「わーい、すごく綺麗!レンナ!早速装備してみましょう!」
そういって、左手薬指に装着するフェル、自分は左手人差し指につける…ちょっと待って、フェル、そこに指輪は…と言おうとしたらフェルがこっちを見て、顔を赤くして喋りだす。
「レンナさん!?そこに指輪つけるんですか!?」
「えーと…もしかして妖精だと婚約指輪は左手人差し指につけるのか…?因みに人は左手薬指につけるんだ…」
「そうです、妖精は左人差し指に大切な誓いの指輪をつけるのです…ど、どうしましょうこれ…」
そう伝えると、自分の左手をみてアワアワするフェル…愛らしいけど、そう言われるとこっちも照れてしまう。
「なにこれ、夫婦漫才?聞いた話では君たち昨日あったばかりだよね…?」
リーダーの声はあえて聞こえない風に聞き流した。
取り敢えず指輪の位置はそのままにしておこう、多分中指や親指、小指には入らないと思うし…取り敢えず話変えねば!