木曜日、死神の誘い
次の日の夕方、3日連続で秋のイベントフィールドに降り立って、採取依頼を中心にイベントクエストをクリアしようとしたのだが…。
「うわあぁぁ!?死神だ!!」
死神出現の声によって、中断された。
「あ、足封じのデバフ!?やめ、許して、あ、駄目ですか、あーポイントがー!3人くらい殺ったポイントがー!」
男性の断末魔が聞こえる、気が抜けている断末魔なのは、死んでもリスタート出来るからだろう。
「よし、逃げるか」
死神がなにかはわからないが、触れていい存在ではないはずだ。
強力な存在にキルされて、ステータス下げられても勘弁だ、この場から離れようとしたら…。
「あ、レンナ殿ー」
知り合いの声が聞こえた。
「………ナナサカさん?」
恐る恐る後ろを振り向くと、そこには頭上に8の数字を浮かべたナナサカさんがいた。
浴衣に腰に2本の刀を装備している。
………一応死神がナナサカさんという考えはあった、だが頭の数字が死んだ回数ならば、ナナサカさんが何回も死ぬとは思えない…。
ナナサカさんなら頭の数字を正確にしてってそうだよな…。
「………頭の上の数字はなんですか?」
「死んだ回数だな、この数字が多いほどステータスが低下するんだ、時間が経つとゼロになるから毎回自害するの大変なんだよな、めんどくさいから1日事に切腹回数減らしたりしている」
「なんで自害するの…?」
色々とやばい発言にドン引きする…やばい、強制的に信仰状態になってるし、サイコパスな邪神なのでは…?
「デス数増やしておけば、ステータスが下って、他のPKが弱いと思って、単独で狙ってくるからね…まあ、初日以外のPKは複数でくるからつまんないけどな…最初仮面付けて顔隠してたけど、顔バレが早いわ」
呆れ顔のナナサカさん…。
「持って、ステータス下がってても勝てるの?」
「まあ、斬る回数増えるけど、相手の攻撃さえ見切ればどうにでもなるぞ」
「…戦闘狂だからなせる事なのか?」
というか1対複数をつまんないと言いながら、捌けるのはナナサカさんだけだと思う…。
「俺は言うほど戦闘狂ではないんだがな…今の俺を倒せば、かなりのポイントが手に入るから、もう少し狙われると思ったが…今じゃ戦ってはいけないFOE扱いだ」
「ナナサカさん並に強い人はいないんですか?」
「リダは俺と戦うのめんどくさがって嫌がるし、他のやつは既に引退してたり、ログイン時間が合わなかったりだ、あと嫌われたりしてて、避けられる」
なんかナナサカさんもナナサカさんなりの悩みがあるんだな。
「なあなあ、1戦やらないか?」
「やらない」
1度ナナサカさんを倒しているが、あれはAIが制御していたナナサカさんだし、リーダーさんの命がけの支援やユリの支援のお陰で倒せたのだ、ナナサカさんのステータスが大幅減少しただけで勝てるとは思えない。
「ちぇー、ならPK狩りにいかないか?ここならカルマ値に影響ないし、クエストより効率的にイベントポイント稼げるぞ」
「いや、遠慮する、後々恨み買ったら大変だしな」
「あ、そうか…フェル殿がいるからな、変な恨み買ったら大変か…すまん、忘れてくれ」
そう言って引いてくれる……まあ、プレイヤーを倒した事自体はしたんだけど、それは言わなくていいだろう。
「それじゃあ俺はまた戦ってくれる人を探して彷徨うとするか…」
そう言ってナナサカさんはトコトコ歩き去っていった。
「げ!ナナサカ!?」
「お、お前かー出会っちゃったかー出会ったからには…」
男性の断末魔が聞こえる…そっとしておこう、実際に死ぬわけじゃないからな…戦いに飢えたナナサカさんと遭遇した哀れなプレイヤーは合掌…。
俺が見逃されたのは、時折決闘に付き合った影響だろう…多分…?
そんな事を考えながら、再び採取依頼をこなしていくのだった。