偽りのゴブリン
訳がわからずに地面に叩きつけられて、頭が混乱する、普通に即死した気分だったが、まだ生きているみたいだ。
ユリのガッツエールか自分の不屈かはわからないが、とにかくHPは1だ。
「なに!?PK!?」
視界がチカチカ点滅して周囲の状況はわからないが、ユリの切羽詰まった声が聞こえる、それ同時にもう一人の声が聞こえた。
「ありがとう、ありがとう、ボス猿を倒してくれてありがとう」
その声は先程自分にネックレスをくれた少女の声のはずだが、その声はさっき聞いたのとは別物だった、明らかに悪意たっぷりだ。
「なるほどね、お兄ちゃんは騙して悪いが依頼を受けちゃったのね…リジェネエール!」
ユリが回復魔法をかけてくれる。
その時に気付いたが、ネックレスはなくなっている…多分というか確実にさっきの爆発源がネックレスなんだろう…。
「お礼にあげたのに死なないのは意外意外」
じわじわ視界が正常になり、自分の眼はネックレスをくれた少女の姿を捉えるが、少女の体はみるみると変化していき、肌色は変色して、体も顔も歪になっていく、変化の果ての姿は、どう見てもゴブリンだった。
「ゴブリンがセーフティエリアに忍び込んでるとかえげつない…」
「でも目的は達した、撤退撤退」
「逃さないクイックステップ、アサルトピアース!」
自分がなんとか立ち上がろうとしている間に逃げようとするゴブリンと、逃さないと宣言して攻撃を仕掛けるユリ、だがユリの攻撃は空を貫いただけだった。
「これで更なる略奪だ、略奪だ」
もはや少女じゃない声を発するゴブリン…そして森の中に消えていった。
「……追うわけにはいかないよね、お兄ちゃん大丈夫?」
「なんとかな…ネックレスのせいで首が無くなるところだったよ」
「…そんな事言えるなら元気そうね」
利用するだけ利用して、最後は爆弾で殺すか…え、えげつない…特に首のアクセサリーを爆弾にしているとか殺意しか感じない。
すると目の前にシステム画面が現れる。
「フェイクゴブリンの撃破というイベントクエストが発生したんだけど…」
「こっちも発生したよ、ボス猿を倒すクエストの続き物みたいだね…一回殺しに来るのは、極めて殺意高いね」
もしかしてネックレスに鑑定眼を使えば回避出来てたのかな?流石に手渡しで渡してきたネックレスが爆弾とか想像出来んぞ…。
「殺る?」
「当然!良いように利用され放しは嫌だからな!」
味方に取り返しのつく範囲で手玉に取られるならまだいいが、敵に良いようにされるのは誰だって嫌なはずだ!
「でもフェイクゴブリン何処に居るんだろうね?クエスト画面でも情報殆ど無いし…」
「これは噂だけど、猿は山の上で、ゴブリンは山の下でエンカウントし易いらしいから、山の下側を探索すれば見つかりやすいはず!」
「まあ、今回のイベントはノーヒントが多いし、今はお兄ちゃんについていくよ」
こうして自分達はフェイクゴブリンを倒す為に山の下層え向かうのだが…。
『レンナさん、レンナさん』
「うん?フェルどうかしたか?」
フェルからの通信で足は止まる。
『ユリさんから借りた道具でレンナさんが居る所の情報を引き続き集めてきました!』
「…フェル、もしかしてフェイクゴブリンの情報もあったりするか?」
『はい、フェイクゴブリンはセーフティエリアからまっすぐ下山した所にある枯れ木が沢山あるエリアの洞窟の奥にいるみたいです』
ダメ元で聞いてみたら、かなり具体的な情報が出てきた。
「最高の情報だ、ナイスだフェル!」
『お役に立てて良かったです!戦い頑張ってくださいね!』
そういうとフェルの通信が切れた。
「どうやらフェルが情報手に入れたみたいね」
「そういえば聞くに聞けなかったんだけど、フェルに貸した道具てなんなの?」
「課金アイテムでパソコンだよ、あれは機能の一部で、公式掲示板にアクセスできるアイテムだよ」
「このゲーム課金システムあるのか!?というかプレイヤー以外に使えるのか…」
じゃあこのゲームの掲示板で、同じプレイヤーだと思ったら、NPCだったとか他でもあり得るのか…?
なんだかよくわからなくなってきた…。
「取り敢えずフェイクゴブリンを倒しに行くか…」
思考を強制停止して、自分はフェイクゴブリンが居るらしい洞窟に向かって歩き出した。
「その前に回復してお兄ちゃん、リスタート地点の魔法陣に乗ればHPMP全回復するから」
「わ、わかった…」
自分は回復する為のスタート地点の魔法陣の上に移動するのだった。