火曜日、秋イベントのお知らせ
次の日の学校のお昼、教室でご飯を食べてると、TT…高田が話しかけてくる。
「錬那、ファンタジーフリーダムで今日から秋イベント開催だ!」
「うるさいぞ高田…」
お弁当を食べながら高田を抗議の視線を送る、しかし高田の口は止まることはない。
「秋イベントは夏と同じ限定フィールドを探索して、クエストをこなしたりアイテムを集めて売って、イベントポイントを貯めて、色んな物を交換するイベントだな、今回はNPC…レンナだとフェルだな、彼女との同行が不可能みたいだな、NPCはセーフティエリアから出れないみたいだ」
「え、それなら別に行く必要ないな…こっちは新しい防具を作る為に、魂の糸を集めないといけないんだよな…」
また虫と戦わないといけないから気が重いんだが、防具を新調しないと、フェアリーガーデンに行くために必要なダンジョン魔本の図書館を攻略するのが困難になるらしいからな…それにフェルを守るためには防具は少しでも高性能にしたい。
「その顔色…虫でも倒しに行くのか?」
「そこまでひどい顔していたか?」
高田とは長い付き合いだ、勿論自分が虫嫌いのはバレている…というか知り合い全員に虫が駄目なのはバレていると思う…。
「そんなレンナに朗報だ、魂の糸は秋イベントのポイント交換所で手に入るぞ」
「まじか!?!?それはマジなんだな!?」
スマホで情報を見ていた、高田の肩を掴み迫る。
「肩痛いからやめろ!?というか周りに人いるからやめろ」
「あ、すまん…」
周りを見ると教室の視線を集めていた…こちらが見ていると気付いたらすぐに目をそらしたが…。
「ゲーム内で伝えた方が良かったか…そしたら白髮美少女に肩を掴まれる展開になったのに」
「それ中身が自分だけど、それでいいのか?」
高田の言葉でひとまず落ち着く…。
とにかく秋イベントに参加すれば、虫と戦わずに済むならそれが一番だ、フェルをお留守番させるのはしのびないが…。
虫との戦いはフェルも負担になるだろう、それなら今回は秋イベントに参加して、フェルはユリのマイホームでゆっくりしてもらおうか。
「ありがとうな高田、これで虫とやり合わずに済みそうだ…」
「あんだけでかい虫と戦って倒したのに虫嫌い治らないのか?」
「そんな荒治療で虫嫌い克服できるかよ…」
むしろより虫が嫌いになったよ…。
そんな、会話をしながら、ご飯を食べて学校のお昼時間は過ぎるのだった…。
学校の時間が終わり、晩ごはんを食べた後はファンタジーフリーダムにログインする。
「あ、レンナさん、リーダーさんから贈り物が届いています!」
「リーダーさんから?」
フェルの手には2つの骨伝導イヤホンのような物が握られていた、片方は人間が装備できる大きさではない、フェル用だろうか。
『ペア多次元通信機
たとえ次元が違っても、離れた人と会話通信する為のアイテム、アクセサリー枠を使わずに装備できるが、耳につけるアクセサリー装備時は装備不可』
「ファンタジー要素どこ?」
鑑定眼を使って、詳細を確認した自分は、そう言うしかなかった。
「なんでリーダーさんはこれを送ってきたんですかね?」
頭に?マークを浮かべるフェル…。
多分だけど、秋イベントに行きながらもフェルと会話出来るように送ってきたのかな?
でもこれどこで調達してきたんだ?作れる物なのか?
「まあ、多分秋イベント用だろうな…」
「秋イベント…あの夏の海みたいに冒険に行くんですか?」
「ああ、だが今回のフィールドはセーフティエリア以外は何度死んでも問題ない生き物しか入れない、特殊なフィールドでの冒険する事になるんだ…だからフェルを連れて行くことは出来ない…」
「そ、そうなんですか…?」
目に見えて落ち込むフェル…なんか凄い罪悪感を感じる…。
「一緒に行動は出来ないけど、このフィールドなら虫と戦わずに防具の素材を手に入れられるんだ、だから寂しかったらリーダーさんから貰った通信機で会話して欲しい!」
「そ、そうなんですか…それなら虫嫌いのレンナさんを止められませんね…でも一緒に行動できないのは残念です、通信機…これどうやって付けるんですか?」
「あー少しじっとしてくれ」
フェルは少し納得してないようだけど、虫とは戦いたくないので、出来れば納得して欲しい、そんな思いの中、フェルサイズの通信機を受け取り、フェルの頭に装備させる。
勿論自分の通信機も頭につけてみる、そしてフェルから離れてフェルに直接聞こえないように小さく声を発した。
「この声が聞こえたら一回転して欲しい」
そう言うとフェルは一回転した、それと同時に声が聞こえる。
「凄いです!離れているのに頭に響き渡るように声が聞こえます!」
「いいのかな?こんなの貰っちゃって…?」
かと言って、リーダーさんに返すのはめちゃくちゃ失礼な気もする。
お礼を言おうにも、リーダーさんはログアウト中だったので今会うことは出来ない…。
「わかりました、私は今回はお留守番しつつ、通信します!」
フェルもお留守番に納得したようで良かった。
後で必ずリーダーにお礼を言おうと、心の中で決めたのだった。