戦いの決着
お腹のど真ん中を貫かれて、耐えられるような体では無いので、一瞬でHPバーが無くなり、ファイナルターミナルが発動して自分を守るように本来は無敵のバリアが展開される…。
だがナナサカさんはこのバリアと一緒にリーダーさんを叩き斬ったので過信は出来ない…バックステップして全力で距離を取る。
「嘘!?普通の心臓貫かれたら、即死判定何だけど!?」
ユリが叫ぶ、まじか…もしかして心臓を貫かれても即死耐性が発動するのか!?
「いや、それでもあと少しで倒せるはずだ…!」
アースキーと火光を構える。
ナナサカさんの体は動かない…だがこういう時程、カウンターしてきそうで下手に攻撃できない。
「禁忌の覆しは…許さぬ…ErrorError」
機械で作った音声を鳴らしつつ、ナナサカさんの体がまるでロボットのようにカクカクに動く…そして、鎧が砕けると同時にバタリと膝をついて、目を閉じた…怖いんだど、まだなにか襲ってこないよな…?
「あ、私レベルアップしたよ、お兄ちゃん!」
ユリが歌を切り上げてレベルアップの事を教える、必死でわからなかったが自分もレベルアップしたようだ…。
え?レベルアップという事は経験値を得たという事だよな…つまりナナサカさんを倒した?でもナナサカさんは、赤いエフェクトを纏って消えてないし…。
軽く混乱していると、ナナサカさんの目が開いて言葉を発した。
「ふう、まさか安易に受けたログアウト中の体の貸出で、こんな事になるとはな…悪趣味なAIだ…」
その声は機械音ではなく間違いなくナナサカさんの声だ。
「ナナサカさん…?」
「ああ、安心しろ…レンナ殿、試練AIは撃破されたから試練は終わった、これで禁忌の代償を取り戻す権利を得たんだ」
その声を聞いて戦う必要がないと知り、思わず地面に座り込むが、バシャリと地面が水辺だったせいで、おしりにヒヤリと濡れる感覚がする。
「冷た!?」
全力で立ち上がる!
「おいおい、せっかくAI操作かつデバフ盛りとはいえ、俺に勝ったのに締まらない事するなよ…」
「それよりもあんたはどうしてここに?もしかして、リーダーに呼ばれてログインしたの?」
ユリが警戒するようにナナサカさんに話しかける。
「ああ、リアルでご飯食べてのんびりしてたらリダに呼ばれてね、助けられるか分からないけど、念の為にログインしたんだが…俺の助力は不要だったな」
リーダーさんとナナサカさん、リアルでも縁があったのか。
「ナナサカさん、これどうやってフェアリーガーデンにいけるんだ?」
「うん?時間がたてば行けると思うぞ、ここも崩壊してきているし」
ナナサカさんの言葉で気付く、青空に亀裂が入り、地面にも亀裂が入る。
それと同時に、自分達が発光している事に気付いた。
「時間だな…じゃあな、次会ったら、俺とタイマンでやってほしいな」
「暫くは勘弁して欲しい、レベル差を考えてくれ…」
ナナサカさんとそんな言葉を交わした瞬間、視界は真っ白になった………。
そう言えば、あの時はなんでバインドという魔法が使えたのだろうか?
フェルの記憶がなくなっている以上、シンクロの効果は使えないと思っていたんだが…?駄目だ、考えてもわからないから後で考えよう…。
あ、あと信仰関連のあれそれも聞き忘れた!?
まあ、これもまた今度でいいか、フェル最優先で…。
「ここは…」
視界が正常に戻ると視界にはいっぱいの花畑が広がっていた。
「………オールモスキートと戦った城の屋上?」
改めて辺りを見渡すと、見覚えある所にいた、ユリが居ないけど、ユリからメッセージが飛んできた。
『お兄ちゃん!何処に居るの?こっちは転移魔法陣がある花畑にいるんだけど!』
『こっちはボスと戦った城にいるんだがすまん場所的にすぐに合流は難しいな…』
『それならフェルの所に行ってあげて、こっちはこっちで観光するし…すぐに会いたいんでしょ?』
『………わかった、なんかあったら連絡してくれ』
ユリとの連絡を終わらせて、左手に収まった指輪を強く握る。
フェルとは常時一緒に居たので、今まで使ってなかった指輪の効果、場所共有を使ってみる…。
「これは結界がある所か?」
場所共有で表示された情報は、方角と距離だけだったが、持っていたフェアリーガーデンの地図と照らし合わせて場所を特定する。
「よし、行こう!」
自分は結界がある所へ駆け足で向かった。
道中には花畑しかなくて、虫は出てこない、完全に平和な道筋だった。