出待ち手がかり
「…凄い顔してるけど大丈夫なのか?」
「…お兄ちゃん、これタオル、涙で顔酷いことになっているよ」
出会って早々、ユリの手によって顔に白いタオルを押し付けられた、取り敢えず顔を拭くとタオルがガッツリ湿った、いつもまにか泣いてたんだな…。
「えーと…2人共どうしてここに?」
「ゼロオーダーの呼札で私達を呼んだでしょ?結果が知りたくて待ってたんだけど……えーとそのー……」
凄く言いにくそうに言葉を濁すユリ、言葉を濁す理由は分かる、フェルが居なくて、自分が涙を大量に流してリスタート地点に現れた所から、最悪を連想しているのだろう、取り敢えずフェルが死んでるだろうと思われてるから、誤解は解かねば。
「フェルは生きてるし、虫は全部倒して、フェアリーガーデンの問題は全部片付けたよ…」
「え?ならなんでそんな泣いてたの?」
「今から全部話すから聞いて欲しい…」
出来ればTTも呼んで一気に説明したかったが、TTとのフレンドは何故か切れたし、TTはユリとリーダーさんと接点はない、呼ぶ事は出来ない…。
ひとまず2人に時間をかけて、今日のフェアリーガーデンの出来事やナンバークエストの報酬の事を話した…可能な限り全部話したが、流石にフェルとキスした事だけは伏せさせて貰った。
途中ユリとリオアの助力の事を話すと2人が咳き込んだが大丈夫なのだろうか?因みにユリが言うにはリオアは用事があるから後々内容を教えるみたいだ…。
禁忌報酬の事を話すと2人は考え込むように真剣な表情をしている。
「禁忌報酬…聞いたことある、デメリットがえげつない代わりに、とんでも報酬が貰える…基本的にステータスの永続減少やレベルが1になったりするとか、私は見た事はないけど…死者蘇生に関してはとんでもないわね…このゲームのアカウントの作り直しなんて出来ないよ?」
え、アカウント作り直し出来ない?それってもしも禁忌報酬3を選択していたら永久にファンタジーフリーダムをプレイ出来なくなるのか?それはゲームとして破綻してないか?
「そういうのって炎上しないのか?」
「うーん、これは聞いた話だけど、本当にやばい選択肢は何十にも確認取られると聞いたから問題ないと思うよ、あとこれは私の想像だけど、もしかしたら禁忌報酬を選択して受け取った後に文句言ってくる人にそもそも禁忌報酬が提示されないようにAIが制御していると思うわ……でもこんな結末納得出来ないわ…」
しょんぼりとするユリ…。
「リーダーさんは禁忌報酬に関して、なにか知っていますか?」
自分はずっと黙って聞いていたリーダーさんに問いかけた。
「スキルやステータスを失うのは知っているが、NPCの記憶を代償に…なんて聞いたこと無いな………そしてフェルの説得で俺に頼れば記憶はなんとかなるかもて、かなり無茶ぶりだな…」
「…聞いたこと無いということは、リーダーさんでもフェルの記憶を取り戻すのは無理なのか………」
眼の前が暗くなるような感覚を覚える中、リーダーさんは凄く楽しげににやりと笑った。
「何を勘違いしているんだ?俺は無理とは一言も言っていないぞ?」
「出来るのか!?」
目を開き、リーダーさんに詰め寄る!
「まあ、あらゆる情報を集めているからな、とある人の記憶喪失関連のナンバークエストの道具を改造、転用してなんとか出来るぞ」
ドヤ顔をするリーダーさん、人によってはむかつく感情を抱かせそうだが、自分からしたら救いの神しか見えなかった。
「でも用意するに結構お金かかるぞ…」
「……ごめん、多分リーダーさんの要求を満たせるほどお金持ってない」
「リーダー!そこは私がなんとかするからすぐに準備して!このままビターエンドとか見逃せない!」
「度々思うが、お前兄にかなり甘いよな…わかった、フェルとは知らない仲じゃないし、早速色々と調達してくる」
ユリの言葉に呆れつつも、足早にユリのマイホームから去るリーダー。
「あ、待ってくれ!あー…もう一つ失ったスキルを再度得られる方法も聞きたかったが…まあ、後で聞けばいいか…というか礼も言えなかった…」
転移魔法陣でフェアリーガーデンに行く為には妖精の要素が必要…フェルが居ない以上、自分自身が妖精になるしか無い…。
勿論他の移動手段も探すが…個人的には再び妖精になりたい気持ちがある…。
「あ、お兄ちゃん、そろそろログアウトしないと晩御飯に遅れちゃうよ」
「え!?もうそんな時間なのか!?」
説明に時間かけすぎていたみたいだ。
親に用意してもらっている以上、現実のご飯の時間はずらす事は出来ない…自分達は晩御飯を食べる為にログアウトするのだった。
ログアウトする前に持ち物を確認したが、火光とアースキーはアイテム一覧にあって、火光はしっかりと修理されていた。
…後ご飯食ったらTT…高田に色々と確認の電話しないとな。