とても嫌な選択肢
フェルの安全が一時的とわかった以上、より選択が重くなった…。
そして気付いた、フェルの眼の前にもシステム画面が現れていたことに…なんとなくフェルの見ている画面の内容は分かる。
この謎空間…システム画面には選択の間と書いてあったけ、そこに来てから自分が得た情報の全部をフェルは得たと思われる。
「今のは神様からの情報ですよね?定期的にレンナさんが見ていたやつですよね?」
「まあ、そうだな…」
多分だけど、その神様に手のひらで転がされるというのが今の状況なのかな?
まあ、神様というかゲームシステムなのかな?いやルールそのものだから神様なのかな?なんかわからなくなってきた。
「…レンナさん、まだ禁忌の選択肢を使う気なんですか…?」
…正直使う気はかなりある、理由はフェルがピンチなのは変わらないからだ。
フェルのメイン武器であるネージュフラワーが壊れて?フェルがフェアリーガーデンに戻ったら虫がいる城に戻って虫に囲まれる…。
どう考えてもフェルの生存確率が低いこの状況で禁忌の報酬は極めて魅惑的だ…。
それがフェルの記憶から自分の全てを消すことになっても、良いと思ってしまう、レンナの命と違って、フェルの命には変えられない…。
「………なら私と戦って…私が勝ったら、禁忌の報酬を使わない事にして」
「はい!?嫌だよ!フェルと戦うなんて!お、落ち着いてくれよ…」
ないない!やだよ、フェルと戦いたくない!というかこっちは鍛冶のハンマーしか武器ないんだけど!?やだよ!フェルにハンマーで殴りたくない!
「だったら選択報酬だけ受け取ってどうにかして再び会いましょう!」
「口で言うのは簡単だけど、状況わかっているのか!?そのどうにかするのがめちゃくちゃ大変なんだぞ!?特にフェルが大変なんだぞ!命がけなんだよ!?」
あーくそ、ゼロオーダーの呼札とかフェルを守れる道具があれば、今持たせてフェルを守れるけど…そんな道具はもうない…ナナサカさんから貰った刀神の呼札はPVP限定だし…。
ああ、さっきから上手く言葉に出来ない。
どの選択をしても、後悔してしまいそうだ。
「たとえそうでも、私はレンナさんの記憶を失いたくありません!だって、大切な思い出なんですから!」
「でも万が一死んだら、その思い出を失うどころか、フェルのお母さんやメーチャさん、結界内にいる妖精達が悲しんで苦しんでしまうし、そんなの俺は嫌だ…」
「………ずるいですよ、そんな言い方!」
フェルの声が震える…ああ、嫌だ…今の自分相当嫌なやつになっている。
同じ位の身長のせいかフェル表情がよく見える…泣きそうなのがわかってしまって、心が締め付けられる。
「フェルの安全の為なら、ずるい言い方もするよ」
「…レンナさんの安全はどうするんですか?私と同じ体だと街で悪目立ちするんじゃないんですか?」
「それはユリとかリーダーさんに頼るさ、でもフェルは結界に戻るまで誰も助けられない…だからこそ万が一が怖いんだ」
「…でもでも!」
今にも泣きそうなフェル…もしも自分にもっと話術があれば、フェルを泣かせずに言いくるめる事が出来たかも知れない、知力や閃きがあればフェルを泣かせずにすむ作戦を思いつけるかも知れない…。
だけど自分はそんな優れた人間じゃない、リアルの自分は鍛冶のスキルと体力は同年代では上位の自信はあっても他は平均レベル…だと良いな…今欲しい対人…いや好きな人の涙を止める方法なんてわからない…。
恋愛経験なんてあるわけないし、リアルでの女性との交流は友奈とお母さんくらいしかいない…ああ、こうなるなら友奈の持ってる、恋愛漫画の1つでも読んでおけばよかった…。
頭を悩ませていたら、フェルは言葉を紡ぐ。
「…わかっているよ、大切なフェアリーガーデンの事や私の身の安全を考えたら、私のレンナさんの記憶を犠牲にするのが1番いいって、それでも故郷の平和も大切な人の記憶も、どっちも捨てたくないよ、レンナさん…」
言ってる事はわがままかもしれないが…いや、わがままなんかじゃない…フェルの願いだ…。
それを聞いた自分は…フェルを抱きしめた。