壊れゆく切り札
「さあ、皆さん少しは肉を食べちゃっていいですよ」
オールモスキートの一言で、殺虫スプレーで死ななかった虫が自分達に突撃してくる!
「チェインライトニング!」
「せりゃあ!」
フェルの雷魔法が虫達に迸り、自分は体を回転させて火光を振るい、周囲に火の刃と風の刃で自分の周辺を焼き尽くす!
「まだまだ元気そうですねー、もう少し弱ってもらわないと軍勢虫門」
再び虫が召喚されてしまう…。
やばい、これ虫の軍勢の戦力が尽きるまで、何回でも呼び出されるのか!?
「も、もしかして無限に出せるんですかあれ!?」
「生き物だから無限ではないはずだ!」
さっと、クエスト一覧を覗いたら、虫の軍勢の戦力が減っていた…つまり呼び出しただけで、無限ではない…だが…バカ正直に虫の軍勢の戦力全てと戦ってたら確実にこっちのHP、MPが尽きてしまう!
「フェル、あまり気が進まないが…もう一度薙ぎ払うぞ!」
「はい、チェインライトニング!」
再びフェルの杖から放たれた回転斬りを放つが、次は火の刃を抜いて風の刃だけを使った回転斬りだ…。
すると2体倒しそこねて、攻撃を食らう、足と腹に牙を突き立てられて痛み以上に虫に食われているという精神不快が体に迸る。
「うおああああ!!!」
半分狂乱、半分恐怖の声をだし、噛みついてきた虫に火光を突き刺して残りの虫の撃破する。
「はあはあ…」
肩で息をして膝をつく…。
「レンナさん!?」
「おやおやもう限界ですか?耐久性、持久性に難アリだったのかな?」
悲鳴をだすフェルに、意外だなという感じの声をだすオールモスキート…。
「まあいいや、それではいただこうかな」
オールモスキートがゆっくりと近付いてくる…そして武器が届く距離まで近付いた時、自分は立ち上がり、攻撃を仕掛けた!弱ってるふりをすれば、召喚せずに吸うために近づいてくると思ったのだ!だからわざと攻撃を食らったのだ、ダメージはリジェネレートの効果で回復済みだ!
だが、ギィン!と火光はオールモスキートの口に防がれた。
「それじゃあいただきます」
オールモスキートは最初からわかっていたと言わんばかりに、ホースのような口を素早く動かして自分の血を吸わんとする。
「アクアシールド!アイスボール!」
フェルが水の盾でオールモスキートの口を鈍らせ、氷の玉でオールモスキートの口を弾いてくれる!
「ナイスだフェル!」
フェルの魔法でオールモスキートに隙が出来たので、火光をオールモスキートに突き立てる!
火光の刃そのものはオールモスキートを傷付けることは出来ないが、火光から吹き出した火は、オールモスキートを焼く!
「あっつ!その火の剣もパワーアップしているみたいですね」
「お前火属性弱点じゃないのかよ…」
「火は苦手ですよ?でも昔の事です」
再び、ホースみたいな口で攻撃してくるオールモスキート、バックステップで攻撃を回避しつつ、更にシステム画面を操作してデバフボール(防御)を取り出して、オールモスキートに投げつける。
ボールはまっすぐにオールモスキートに向かって飛んで、直撃する。
「うん?体柔らかくなった?小細工でどうにか出来ると思っているんですね」
防御が下がっているはずだが、余裕の雰囲気を崩さないオールモスキート。
「積み重ねれば小細工でもなんとかなる…はずだ!」
「…なら私も小細工をしましょうか、硬い殻を剥くのはめんどくさいんですが…」
再び突撃攻撃を仕掛けてくるオールモスキート、何を仕掛けてくるかは分からないが、オールモスキートの防御を下げたんだ、攻め時は今しかない!
「ライトニングチェーン!」
「燃えろ!」
突撃攻撃を避けて、火光の火を叩き込もうとしたら、オールモスキートのホースの口が火光に向かって飛んできた!
「ウェポンブレイク」
フェルの放った雷の鎖に纏まりついても、オールモスキートは止まらずに雷の鎖を引きちぎり、ホースの口が怪しく光る。
怪しく光った口にやばいと判断して武器を振るうのを止めて、オールモスキートと距離を取ろうとするが、オールモスキートの口から魔力の弾が生み出され、それが火光に接触した瞬間…。
バキリ!
火光の刃に亀裂が走った…。
「やばい!?」
再び大きくオールモスキートと距離を取る、鑑定眼で火光を見ると、風の刃と火の刃の項目にバツマークがついている、破損して使えなくなってしまった…妖精火門はまだ使えそうだけど、使ったら破損しそうだな…。
「そんな、火光が!?」
「…使ってくるとは思ってたが…くそ…避けそこねた」
火光のヒビをみて悲鳴を上げるフェル。
火光をしまい、アースキーを両手で持つ…でももう一度ウェポンブレイクを使われたらやばい。
「相変わらず、これ使うと疲れますね、暫く使えなくなるし…まあ、がんばった分、血が美味しく感じるかな?たまには血を使わないと腐ってしまう」
どうやらウェポンブレイクは連続使用は出来ないみたいだ…どちらにせよ、一気にピンチに傾いたのは間違いない…。