虫の城の探索、大広間
階段を登り、2階と思われる所にたどり着くが、更に上へ行く階段あり、フェルが言うには広い所は3階にあるという事なので、3階まで移動すると、3階には部屋とか無く、閉じられた大きな扉があるだけだった…。
「鍵はかかってない…」
扉を調べてみると開きそうだ…ゲームはあんまりやったこと無いが、TTが昔言ってた事がふと頭をよぎる。
『ボス部屋は基本的に施錠されていて、鍵が必要』とか言ってたよな…。
ならここにオールモスキートは居ないのか?わからないけど、ひとまず息を整える。
オールモスキートはいないかもしれないが、大量の卵があるかもしれない…イクラとかの魚卵ならともかく虫はだめだ、生理的に無理だ。
「フェル、何があってもいいように備えて欲しい」
「わかりました…」
フェルにひと声掛けて、アイテムの確認や手に持ってるアースキーや背中に背負った火光の確認、ショッキングな光景に備えてから、自分は扉を開けた。
扉の向こう側は大広間のような部屋で、壁や天井に数え切れないくらいに大量の卵があった、しかも白く細く丸い卵だけじゃくて、赤い四角い卵や緑の楕円形の卵等、形もそれぞれ違う卵だ。
それ全てが虫の卵と認識した自分の脳は、嫌悪感で悲鳴をあげている、口からも悲鳴をあげたくなる…。
というか白い卵は透けて見えて、細い幼虫?が蠢いててやばい、泣きたい、見たくなくても嫌いな物ほど注目してしまう…。
今にも生まれて、こっちに襲いかかってきそうと思うとゾッとする。
「き、気持ち悪いですね…というかあんだけ倒したのにまだこんなに生きてるんですね…虫…」
「まあ、1匹居れば20匹いるとか聞くからな…」
「おやおや、やっぱり貴方ですか、美味しい美味しい混血人間」
卵にかんしてそれぞれ感想を吐いていたら、最悪の声が部屋の中心から聞こえた…。
声がする方向に視線を向けると、そこには人間サイズの巨大な蚊…オールモスキートがいた。
相変わらず赤黒く光る胴体とプーンと不快音を発する羽、そして生半可な武器を防ぐくらいに硬く、こちらの皮膚を貫いて血を吸うことに特化したホースのような長い口は嫌悪感が半端ない、あんな口でどうやって喋っているのやら?
「オールモスキート…随分とくつろいでたみたいだな」
『ボス部屋は基本的に鍵が必要』そんなTTの言葉はこいつには当てはまらないみたいだった。
「くつろいでませんよ、これでも食糧難なんですよね、このままでは同族を食わねばならないから嫌ですよ、美味しくないし…」
「そりゃあ大量に虫増やそうとしたらご飯がいくらあっても足りないわな…」
というか真っ先に出てくる嫌な理由が美味しくないからかよ…美味しければ普通に同族を食いそうだな、オールモスキート…。
最初っから仲良くなるのは不可能だが、話せば話すほどヤバさが伝わってくる。
仲良くなるのは不可能だからとっとと攻撃するべきなんだが…。
下手な攻撃をするとカウンターされるのでは?という考えが初手の行動を悩ませる。
「混血人間、取引しませんか?」
「断る、敵対する相手に取引なんて出来るか!」
「むう、転送魔法陣の正しい使い方を聞いて、安全に異界に転送して、新たなご飯を得ようと考えましたが、やはり無理でしたか…」
オールモスキートは新たなご飯を欲しているみたいだが…。
仮にフェアリーガーデンから地魂の遺跡に移動して、街を襲おうとしても、レイドボス案件で他のプレイヤーに倒される運命だろうが…。
それ以前に、敵の言うことを聞く理由なんてないし!虫の言う事聞くなんてごめんだ!
「レンナさん戦いましょう!ユキさんとカギロイ…こいつらのせいで犠牲になった皆の敵を取りたいです!」
「犠牲?私は弱肉強食のルールに乗っ取り食事をしているだけなのに酷い言われようですね、貴方達は我ら虫を嫌いだけで殺して回っているのに、こっちの方が犠牲が出ていますよ…」
まるで自分のほうが正しい事をしているような口ぶりをする、オールモスキート。
オールモスキート相手にどっちの犠牲が大きいか語る必要はない…。
「自分は妖精の味方で虫が大嫌いだから…お前を殺す、ただそれだけだ!」
「そうですか…まあ、お腹空いたし、貴方の血、また貰いますね」
「オールアップ、ブレイブハート、フェアリーウィッシュ、リジェネレート!」
フェルの言葉が響き渡ると同時にオールモスキートが突進してきた!