結界から虫のお城へ
フェルと合流すると、妖精達に話しかけられた。
「オールモスキートと戦うのかー?」
「大丈夫なの?」
「メシア死んだらやだー」
「他の人間は呼べないのー?」
皆それぞれ不安そうだ…フェルがオールモスキートに挑む事を話したのだろうか?
「オールモスキートとは戦う予定だけど、大丈夫、ぶっ倒してくるから!」
元気よく振る舞って、皆の不安を取り除こうとする。
「オールモスキートに挑むんですね、レンナさん…」
そんな中、フェルのお母さんが話しかけてくる。
「……………2人の決断なら止められません、2人とも無事に帰ってくださいね?皆で無事を祈っています」
その声は震えていた…本来なら止めたいだろう気持ちを押し殺しているのが、自分でもわかった…。
だけど、ずっと挑まない訳にはいかない…。
「…お母さん行ってきます」
「オールモスキート倒して、皆がもう結界内に閉じこもる必要のない事にするから待ってて欲しい」
そう言って、自分達は沢山の妖精に見送られて結界の外に出る、地図でオールモスキートの位置を再度確認すると、未だに根城に居る事が示された。
「あんまりゆっくりせずに出てきたけどよかったのか?言ってくれればもう少し結界内でゆっくりしても良かったが…」
ふと思ったことを口にする。
「ゆっくりし過ぎたら、出発しにくくなるのでこれでいいんです…」
まあ、今までで1番危険な戦場に行くからな…あったかい所に居すぎると、戦いたくなくなるという気持ちは分からなくもないな…。
そんな会話をしながらもオールモスキートがいる根城に向かう、道中では虫との接敵は殆どなかった…。
もしかして敗走した時に言ってたオールモスキートの指示がまだ生きているのか?
それならありがたいな、オールモスキートを倒すなら、今は戦闘は避けたい…最終的に全ての虫を倒す必要があるとはいえ、今消耗してオールモスキート戦に影響がでたらダメだからな…。
ほぼ戦闘がなく、根城の近くにたどり着く。
「なんですかあれ…?」
胸ポケットにいるフェルの声が漏れる。
前見たときと同じようにレンガ造りの城が見えるのだが、前回と違い、至る所に白く細い球体が城についているし、壁にはびっしりとついていて、鱗のようにも見えてきた。
その白く細い球体に個人的には見覚えがあった…別のトラウマゲームで…。
「虫の卵…」
「あ、あれ卵なんですか!?」
「ああ、見たことあるからわかる…」
ブルリと体が震える、なにあれ?まさか減らされたから増やそうとしているのか?いや、ナンバークエストの虫の戦力が回復しているだから現在進行形で増やしているのか…。
これ城の中が虫の卵だらけの巣窟になってそうだな…行きたくないという感情が出てくるが押し殺す。
「行こう、フェル…」
「はい、レンナさん…」
足を動かして、城の入口までたどり着く。
ドアは既に開いていて、蜘蛛の巣が張ってある。
「オールモスキートはどこにいるんだ?」
地図を見るとオールモスキートの位置と自分の位置がほぼ重なっていて、詳細がわからない…地図では建物の内部までわかるわけでもなく、地図の限界を感じる…。
急なボスエンカウントに、気をつけないといけないようだ。
「虫は…」
警戒しながらも入口から城の中に入る、城の中は荒れており…天井には大型犬サイズの蟻と蜘蛛が張り付いていた。
「ひゅ…」
叫びそうになったが、抑え込む…。
だが僅かな声に気付いた天井の虫は、天井から地面に降り立ち、襲いかかって来た!
「フェル、補助魔法はまだいらない!」
「わかりました!」
2体だけならアースキーだけで勝てる位じゃないと、オールモスキートに勝てない!
蟻は酸と思われるものを吐き、蜘蛛は糸を吐き出す、それを回避して、2匹の虫は固まっていたので、薙ぎ払うように蟻と蜘蛛を攻撃すると、アースキーの先端は虫の体を軽々切り裂き、一撃で倒すことが出来た。
「凄い切れ味になってますね…」
「まあ、鍛えたからな」
アースキーの切れ味に驚くフェル、自分自身も2匹斬れた事に心驚きつつ、城の中で探索が始まった。