TTの贈り物
「レンナー!釣り合うかわからないけど、倉庫にいいもん見つけたぞ!」
「いいもんてなに?」
「虫特攻の殺虫剤!」
そう言ってTTが取り出したのは大型のスプレータイプの殺虫剤だった、ファンタジー世界にあったのか!?
「おお!?」
鑑定眼で殺虫剤を見てみると一定回数使える、使用時に広範囲に虫特攻の確率即死効果と毒を付与する効果だった。
「おお…?」
効果としてはどうなんだ?虫特攻の即死効果て、限定的だし、虫にかなり強そうだが…オールモスキートに即死効果て効果なさそうだよな…?
ゲームに詳しくない自分でも、ボスに即死攻撃は基本効かないというのはしっている。
「……貰っていいのか?」
「その為に持ってきたけど、お眼鏡に叶わなかったか?」
「いや、道中でめっちゃ使えるから、ちょっとオールモスキート…ボス戦を想定して考えたら、微妙だなと思ってしまっただけだから!」
というかマジでありがたい、MPを使わず、虫を殴らず済むだけで、かなりありがたい。
「そりゃあいくら虫でもボスクラスになったら即死攻撃は効かないよ…」
「ちなみにこれはどこで手に入れたんだ?」
「遺跡の宝箱だよ、売り物ではないぞ、だから使い時がわからなくて、倉庫の肥やしになってたんだよ、後これ、俺だと過剰回復だからお前の方が使いこなせる」
大量のシステムメッセージと共にレッドドラゴン戦で使ってたのと同じMP回復薬が渡される。
「いいのか?」
「ナンバークエスト攻略して、こっちだけ強力なスキル得て、レンナはレベル1だけだとなんか若干後ろめたさがあるから受け取ってくれ、お前が居なきゃ、MP回復する余裕がなくて、いつまで経ってもレッドドラゴンに認められる事が出来なかったからな」
「相変わらず律儀だなーありがとう、オールモスキート戦で使わせてもらう」
その後、TTと戦いについて話していたんだが……時間的にそろそろお昼か…。
一旦ログアウトしたいし、フェルを迎えに行ったほうがいいかな?確認のために、一旦TTに断りを入れてから、リーダーさんにメッセージを飛ばす。
『そろそろご飯食べにログアウトするけど、一度フェルを迎えに行ったほうがいいか?』
『こっちはまだログアウトする予定はないからご飯食べた後に迎えに来る感じでも問題ないよ』
『お昼ご飯食べないのか?』
『食べるけどいつも遅めに食べてるから心配無用だ、というかユリがさっきのログアウトしてたから早く行った方がいいかもよ?』
リーダーのメッセージでフレンド一覧を確認したらユリが最終ログイン5分前という情報とログアウト状態と出てきた。
『わかった、それじゃあ引き続き、フェルをお願いします』
『任せてくれ、そっちは急いでご飯食べて喉を詰まらせないようにな?』
通信を終えてTTに話しかける。
「それじゃあそろそろご飯食べにログアウトするから、なにかあったら連絡してくれ」
「分かった、そっちのナンバークエストも頑張れよ」
こうして自分はログアウトしにユリのマイホームに戻った。
ログアウト後、現実の世界でお昼ご飯を食べた後、友奈が話しかけてくる、両親の前じゃあんまり大っぴらにゲームの話はしにくいからな。
「お兄ちゃん、リーダーにフェルの家庭教師を頼んでるんだね…」
「家庭教師というか魔法の勉強と言った方が正しいだろ?家庭教師だと間違った意味になるだろう、レンナは家持ってないんだから」
「伝わればいいじゃん、それよりもフェルのあの気迫、ボスにでも挑むの…?」
「ああ、オールモスキートに挑む予定だ」
そういうと友奈は心配そうな表情をした。
「随分と急いでるね…時間制限でもかけられたの?」
「まあ、それに近い物はあるよ、フェアリーガーデンの食料問題や虫の軍勢の戦力の回復スピードが早い問題、片方は食料を運べば、もう片方は虫を倒せば時間を稼げそうだが…ジリ貧になると思ってね…」
時間稼ぎは出来る…出来るがずっと維持するには虫と戦わないといけないから、かなりしんどい…。
それに時間かけすぎたらオールモスキートがパワーアップして、最終防衛ラインである妖精の結界を破壊する…なんて可能性もゼロじゃない。
そんな考えを友奈に伝えた。
「まあ、お兄ちゃんの冒険だし、口出しはしないけど、しっかり勝ってよね?フェルを泣かせたらダメだよお兄ちゃん…」
「まあ、泣かせるつもりはないさ…それじゃあログインしてくる」
オールモスキートに地門で貫かれた時のフェルの声を思い出す…。
次はあんな事にはならない!絶対に!