シンクロの力の一片とレッドドラゴンの情報
獣道を進んでいくと、狼やカラス、トナカイやライオンなど肉食動物が襲いかかってくる。
なにがきついのかと言えば、ほぼ全ての動物が気配を消して、襲いかかってくるのだ、はっきり言って、TTの鋭い探知がなければ急襲で何回死んでいたか分からない…。
「レンナは頭上と足下の奇襲に弱いのな」
「無茶言うな、見晴らしの良いところならともかく、こんな森の中で全方向警戒できるか」
先程空にいたカラスに攻撃されて、痛む頭を擦りつつ、TTについていく。
「というかHP回復しなくていいのか?さっきのカラスの攻撃で約半分削られただろう?」
「今回復するからまってくれ、…うう、フェルがいればリジェネレートで回復出来るのに」
そんな事を言いながらHP回復薬を取り出すと、自分のHPバーの下に見慣れた回復バフアイコンが現れて、HPが回復し始めた。
「うお!?リジェネレートが発動した!?」
「おい、騒ぐな敵を引き寄せるぞ?」
「す、すまん…」
口を塞ぎ、息を潜める。
なんでリジェネレートが発動したんだ?
いや、心当たりが一つだけある、シンクロの効果だ、共鳴から進化して、心を交わした相手の力を使える場合があるという説明文が追加されたがその効果だろう…。
使える場合があると書いてあるから使えない場合もあると思うから、あんまり頼りすぎるのは良くないが、今はありがたいものだ。
MPを消費して防具の防御性能を少し下げることになるが、リジェネレートの一言で、持続回復効果を得られるのは大きい、薬とかの場合は飲むのに隙が生じてしまうからな。
なにはともあれ、これでかなり精神的に楽になるな、薬を使わなくても回復できるようになったし。
「そういえばのさっき兎に足噛まれたけど、ここは草食動物でも肉食動物になったりするのか?」
「するぞ、現実と同じように考えてたら、羊に倒されて捕食されたりするかもな」
「ひ、羊?」
思わずイメージしてしまう、返り血で染まった毛を纏った羊にやられ、モグモグされるイメージを…。
うーん確実にグロすぎるから、実際はHP尽きた瞬間、赤いエフェクトを纏って消えてしまうんだろうな…うん。
「というかそんな羊の事より、レッドドラゴンの特徴を先に教えておかないとな」
「え?戦った事あるのか?」
「ああ、戦って、一人ではどうしようもないからレンナを連れてきたんだよ」
そういうと、TTはレッドドラゴンに関して教えてくれた。
彼女は知性があり、プライドが高く、自分の頭を土をつけさせる事が出来る位の相手じゃなきゃ、龍の力を持つことは認めないと主張しているらしい。
戦闘時は火を放つ以外にも、赤い粉を吐き出し、それが目、鼻、口の器官に一定量入ると、異常をきたして、視覚と嗅覚の機能が大幅に制限をかけられて、更に口を動かしにくくなって、スキルが使いにくくなってしまうらしい。
そして厄介なのは、赤い粉対策でマスクやゴーグルなどで対策しようとすると、真っ先にマスクやゴーグルを破壊しに来てくるので、防具で対策は難しいとのことだ。
「えーと、殺す必要はないのか?」
「ないぞ、大事なのは認めてもらう事だからな、一応殺せば何故か力を得る事が出来るらしいが…流石にドラゴン相手にそれはきついし…今まで手に入れた情報的に、あんまりいい予感がしないからやりたくない」
まあ、ドラゴンを2人で殺すのはめちゃくちゃ難しそうだよな…。
しかし今まで手に入れた情報て、さっきみた石板が他にもあるのかな?
「鹿とか猫とか熊の力を得た時は、どうしたんだよ?」
「鹿と猫は要望された物を取ってきて、熊は相撲で勝って認めてもらえた感じだ」
「よく熊相手に相撲で勝ったな!?というかなんで相撲!?」
「知らん、金太郎と間違われたんじゃないか?と、危ない、こっちは鹿の道に行ってしまうな」
急に方向転換するTT…自分の視点だと道の違いが分からない…大丈夫なのかと思ったら、こちらの考えを見抜いたのか、TTが口を開く。
「すまんな、道は俺にしかわからないから、ついてきてくれ」
「それは良いけど、ドラゴンはプライド高いんだろ?2人で挑んでいいのか?」
「問題ない、ドラゴン自身がもう一人連れて来いや!的な事言ってたしな、それなのに人数差で負けて、二人がかりだから認めないーと言うもんなら、ドラゴンのプライドに傷がつくから、ごねられる事はないはずだ」
そんな会話をしていると、木々が少なくなり、代わりに岩が増えていくと思ったら、広い所に出た。
そこは広く整地されていて、中心には石造りの天井がない神殿のようなものがあり、そこに様々なファンタジーの物語の挿絵で出てくるような、巨大で真っ赤なドラゴンが佇んでいた。