新たなハンマーと修理依頼
チームゼロオーダーの工房に来ると、リーダーさんがいた。
リーダーさんは自分が使っているハンマーよりも大型なハンマーを両手で振るい、鍛冶をしていた。
「マジックリペア!」
リーダーさんが跳躍してハンマーを振り下ろす、ガイン!と派手な音が鳴り響く。
かなり荒々しい叩き方だ、心なしか怒りを感じる、ジャンプする必要はあるのか?いやスキルぽいし、細かいこといったらダメか。
「ふう、取り敢えず完成と…あ、レンナさんとフェルさん、こんにちはー」
「こんにちはー」
「こんにちは、武器を強化しにきました、何を作っていたんですか?」
鍛冶を終え、こちらに気付き挨拶してくれる、リーダーさん、こっちも挨拶を返して、何を作ってるか聞く。
「ナナサ………決闘のバカが壊した刀を修理してたんだよ」
ナナサカさんの刀を直していたんだな…。
「全く、金払いは良くても、ポンポン壊されると嫌になるね」
「ポンポン壊すのか?」
「あいつは刀の破損と引き換えに、強力な一撃を放つスキルを持ってるからな…使わなくても勝てるくせに、時短として、ダンジョンとかのボスに使うんだよな…あいつ…」
なるほど…言葉の端々から、強い怒りを感じる。
「と、すまんな…武器の強化に来たんだな、刀の修理はキリがいいとこまでは終わったから、今場所をあける」
ガチャと脇にあった複数の刀を収納して、鍛冶設備から離れるリーダーさん、代わりに自分が鍛冶設備の前に立つ。
まずはアースキーを強化する為にオリハルコンを素材にセットする。
更に呪血鍛冶の固有効果である血を注ぐコマンドをオンにする。
「ちょっとまった」
ハンマーを取り出して、作業を始めようとしたらリーダーさんに止められた。
「そのハンマーでオリハルコンを素材にした強化は無謀だ、こっちのハンマーを使え」
リーダーさんからいつも使っている片手ハンマーと同じ大きさで色合いがプラチナのハンマーを渡される、リーダーさんの言葉からして今使っているのより上位のハンマーだろう。
「えーと、こんなお高い物ポンと渡すのはどうかと思いますよ?」
「安心しろタダじゃない、後でこの3本の刀を修理して欲しい…必要な素材とかは全部揃ってるから、後は技術者さえいれば、なんとかなる…というか修理するの疲れたから、変わって欲しい!今のレンナさんなら、そのハンマー使えばなんとか直せると思う、こなすならあげるよ」
なるほど、刀の修理代の代わりに、より高性能なハンマーが手に入るのか、それならありがたい。
「それなら…先に刀を修理するよ」
「いいのか?」
「自分の武器も大事だけど、依頼は最優先するさ」
それにハンマーの使い心地を確認しておきたいからね…ナナサカさんの刀なら慣れないハンマーで多少刀の質が落ちたとしても、問題ないだろう、あの人元から強いし。
そんな打算込みで、修理を優先する。
アースキーやオリハルコンを一旦しまい、壊れたナナサカさんの刀をセットする。
呪血鍛冶の血を注ぐ効果は使わない。
「万が一修理を失敗しても気にするなよ、ナナサカはお気に入りの刀以外は消耗品として使い潰すタイプだしな」
「これでもリアルでもやってるんだ、失敗するつもりはないさ、フェル準備はいいかい?」
「はい、大丈夫です!」
修理をスタートするボタンを押して、修理を開始する。
フェルの補助魔法を沢山受けた身で、刀の形をした真っ赤な金属を貰ったばかりのハンマーで叩く!
キィンと甲高い音がなり響き、手がビリビリする。
か、かてぇ…鑑定眼で確認してなかったが、何で出来てるんだこれ?
「これは下手な打ち方したら更に折れそうだな…」
直感的に強く叩かないとダメだが、強く叩きすぎると砕けそうな素材と把握して、叩き始める。
最初は何度も甲高い音を出していたが、じわじわとその音は出なくなり、最終的に修理することが出来た。
「あー硬い!」
硬い素材を叩き続けた結果、手が痺れてしまう。
「ナナサカが刀を破壊して放つスキルは刀の硬さに依存しているから、修理が大変よ…」
自分を見て、愚痴をいうリーダーさんでなるほどと理解した、修理するたびに手が痺れてたら、金払い良くてもやりたくないという気分になるのか。
「NPCに依頼したりしないのか?探せばありそうだが…」
「NPCに依頼は出来ない、武器の性能が高いほど時間がかかるし、必要なお金が跳ね上がるからな、めちゃくちゃ割にあわないんだ」
なるほど…それでナナサカさんはリーダーさんに依頼を…。
「後2本あるから頑張ってくれ」
「後2本か…分かった…」
依頼を引き受けた以上、完遂するのが鍛冶屋としてのプライドの為、リーダーさんの提供でHPMPを満タンにしてから、再び修理に打ち込むのだった。