有耶無耶な朝?
次の日の朝、ログインすると、ドレス姿ではなくて戦闘用のコートを着たフェルが出迎えてくれた。
しかしその表情は硬かった…。
「………」
「お、おはようフェル」
「……………」
いつもは先に挨拶するなり、先にこっちが挨拶したら返事をしてくれるのだが、フェルはこちらを見続ける。
「………あの、昨日の事覚えてますよね、私はバーを出た辺りで、眠ってしまいましたが…」
「ほぼ全部覚えているな…」
心の何処かで酔ってた時の事を忘れてたりして、有耶無耶になってたらそれはそれでよかった。
もしかして昨日の告白の返事を待っているのか…。
………腹くくるか…恋愛とかどうなるかはわからないけど、なるようになれだ!
「あの、自分は」「あの!昨日の事の返事を言わなくていいです!」
まさかの止められた!?
「……もしも………もしもなんですが、ハイと言われた場合、私は…オールモスキートに戦いを挑む貴方を止めたくなってしまうので…」
「……………」
むう、なんかもしもを重ねて言うのが、断られる前提感があってもやっとする…オールモスキートか…。
「わかった…」
取り敢えずオールモスキートを倒す理由がまた1つ増えたな、オールモスキートを倒さない限りは、どうあがいても丸く収まらない!
考え始める、オールモスキートから敗走してから、自分はそこそこ強くなった。
黄金蜘蛛を撃退したり、虫を大量撃破した結果、フォークエストクリアして入った経験値に、ナナサカさんとの決闘で手に入れた、回避能力などのスキル。
そして共鳴の上位互換のシンクロと二人で同時に妖精火門と妖精氷門を放った結果起こった超強力な合体攻撃…。
切り札はある、後は武器の強化だな…火光がオールモスキートの体にあんまり効果がなかった、多分アースキーも弾かれそうだ。
今こそ倉庫にしまってある、フェルがカジノで手に入れたオリハルコンと、ナナサカさんから貰った風の結晶(特大)を使って新たな武器…いや、オリハルコンをアースキーに風の結晶を火光の強化に使おう!
新しい武器だと習熟に時間がかかるし…剣やシャベルにしたらアースキーや火光と競合してしまうからな。
ユリのマイホームの倉庫から、オリハルコンと風の結晶(特大)を取り出す。
後返し忘れていた、茶色いマントを倉庫に返した。
「よし、フェル、チームゼロオーダーの工房へ行こうか」
「…はい」
「…………」
明らかにテンションの低い声と共に、ふらふらと自分の胸ポケットに入ってくるフェル…。
どうしよう、フェルのモチベーションが低くて確実に武器を強化する作業に支障をきたしそうだな…。
なんとかしてフェルを元気づけたいが…やばい、どう元気付ければいいんだ?
明らかに原因は自分だよな、二日酔いとかじゃないよな。
取り敢えず告白は論外、言わないでと言われたし、触れないほうがいい?ならば…。
「…」
「…」
取り敢えず無言でフェルの頭を撫でる…。
「大丈夫だ、フェル…全部きっとうまくいくから…」
「……も、もう大丈夫です!レンナさん!」
あ、フェルの声が元に戻ったら、これなら大丈夫かな…?
こうして、自分達はチームゼロオーダーの工房へ向かった。