お酒の魔力と妖精の恋心
「むー…ここのバーは飲み物が美味しいですが、ゆっくりとは出来ませんね…」
「まあ、そうだな…情報とかなんか気になってしまうな」
不満気にフェアリーシロップを飲むフェル。
リオアさんの言葉的に、このツー街で何かが起きたみたいだ…。
後10分で治安の悪さがなくなるとかなんと…。
「あの、今のツー街で、アイドルのリオアが関わってる事に関しての情報は、いくらですか?」
「その情報は、リオア様が貴方にはただで教えていいとの事なので、お教えします」
バーテンダーに聞いてみると、ただで情報が貰えた。
『現在ツー街では定期的な夜のレイドイベント、悪徳詐欺師を撲滅せよが起こっています、こちらのレイドは既に何度もクリアされていて、なおかつ早期クリアする程報酬が良くなるので、参加者は情報共有をして早期クリアを目指しています』
レイドイベントの早期クリアか…なかなか大変そうだな…。
まあ、それなら自分達が動く必要がないだろう、というか何も知らない自分が手を出したら早期クリアの邪魔にしかならない。
何時ぞや瞬殺されたレイドボス戦みたいに参加する為のシステム画面が現れてないのでそもそも参加は出来ないと言った方が正しいかもしれない。
「そんな悪徳詐欺師て、そんな簡単に撲滅出来る物なんですか?」
「すぐ撲滅出来るけど、すぐ復活するんじゃない?」
フェルの言葉に答えつつ、ふと気になったのでシステム画面を操作してナンバークエストの情報を確認する。
『虫の軍勢の戦力:40%』
増えるの早いよ、昨日30%以下になったはずなのに…減りやすいけど増えやすいのかな…。
キッチンの黒いGは一匹いたら30匹いると思え、仕留め残ったら、すぐに増えるという言葉があるが、まじで虫の軍勢もそんな感じなのかな…?
早めにオールモスキートを倒した方が良いかもしれない…。
「むーおかわりです!」
「承りました」
「え、まだ飲むの!?」
フェルが飲み物を飲み終わる、フェアリーシロップの1杯の量は、フェルの体積位あったんだが、何処に消えた!?あれだけ水分飲んだのに、まだ飲むの!?
それにフェルの頼んだのはお酒のはずだ、酔わないのか!?フェルの顔を見てみると少し顔が赤い…のか?
「せっかくの休息なのに、レンナさんはチラチラとフェアリーガーデンの事を気にして…休日休むのが苦手な人ですね」
「昔妹によく言われたよ…」
平日は学校で勉強、土日は鍛冶勉強してて、マグロみたいと言われたっけ?それ以降、たまに高田と遊んだりしてたりするんだが…。
「フェアリーガーデンを気にしてくれるのは嬉しいですが…休日の今だと、私が蔑ろにされてる気分です」
「え?」
な、なんだこれ?これはあれか?仕事か私どっちが大事というやつか?
な、なんかフェル酔って、変になってる?取り敢えず、蔑ろにしてないのは伝えないと…。
「ごめんなフェル、フェルが大事だからこそ、フェルの故郷をなんとかしたいという気持ちが高まるんだよ」
あとは嫌いな虫の軍勢を早く殲滅して、二度と会わなくて済むようにしたい!
「………その大事て友情ですか、愛情ですか?」
顔を紅くして、聞いてくるフェル。
「……え、それは…」
……これは下手な事が言えない、いやまあ、ダンスホールの時に頬にキスしてきた時から、フェルは自分に恋愛感情を抱いて居るのは確信したけど、これって今答えて良い物なのか?
そりゃあフェルの事は好きだけど…酔ってるフェルに言うのは良くないような気がするし…。
「私は…大好きですよ…レンナ……故郷の虫を倒した後もずっと一緒にいたい……いつか唐突に別れる時が来るとしても……」
ぽふり…と自分の腕に寄り添ってくるフェル。
待ってくれ、これマジでどうすればいいの!?
「お客様、フェアリーシロップはどういたしましょう?お持ち帰りにしますか?」
「え、あ…お持ち帰りします!フェル、取り敢えずユリのマイホームに戻ろう!」
バーテンダーに言われて慌ててしまう、頭の中にはログアウトしたいという、情けない逃げの思考になった。
バーテンダーは、自分の目の前にお持ち帰り用のフェアリーシロップを差し出した。
手にすると使用不可というシステム画面が出てくるが、気にせずにアイテム一覧に収納して、酔っ払ってるフェルを優しく胸ポケットに入れて、お金を支払い、バーをでた。
全力ダッシュで、ユリのマイホームに向かう、道中何も出会うこと無く、ユリのマイホームに戻ってくる事が出来た。
「はあ…はあ……疲れた……」
乱れ切った息を整え、胸ポケットにいるフェルを見るとフェルは眠りに落ちていた。
「まじでどうすればいいんだ…」
恋なんて未経験な身としては、まじで慎重になってしまう、フェルを優しくベットに寝かせて、自分はジャケットに着替えてから、頭を唸らせながらもログアウトするのだった。