ダンスホールと不思議なカード
たどり着いたダンスホールは、豪華絢爛という言葉がピッタリなほど綺羅びやかだった、金色とかシャンデリアとかすっごいな…。
「うわー凄いですー!!」
フェルは目を煌かせて、辺りを見渡す。
同じように辺りを見渡すが、人は自分達しかおらず、端には楽器が綺麗に並べられている。
「え、貸し切りなのか?」
「そうですよー、同じ空間なら沢山作れますよー、システムの使い方をお教えしますねー」
アッシュルさんから色々と教えてもらう、好きな曲を選択すると、楽器が誰の手も借りずに自動で演奏される事や、AI制御で音楽の演奏に合わせて、灯の制御がされる事を教わった。
またドレスやフォーマルな服装のレンタルもしている事も教わった。
「それではなにかあったら呼んでくださいねー終わる時もシステム画面で呼んでくださいねー」
そう言って、係員のアッシュルさんは去っていった。
「広々ですね、レンナさん!この広さならなんだって出来そうです!」
「そうだな、2人で使う広さじゃないな…」
フェルは胸ポケットから飛び出して、辺りを見て回っている。
「さて、どうやって踊ろうかな…」
こういうのて、あれだろ、2人で踊る事が前提だろ?だが自分が調べたダンス動画で妖精と人間がダンスする動画はなかった。
だが個別で踊るというのもなんか違うような…。
どうすれば…そう思った時、受付で貰ったカードが自分の手から離れて、自分の目の前で輝き始める!
その輝きは、目潰しレベルだ!
「うおまぶし!!」
まさか爆発!?いや、そんな暗殺されるほど恨み、誰に買ってた!?まさかTT?いや、ない!自分1人ならともかく、フェルも巻き添えな事はしない!
すると痛みなく、視界はチカチカとしつつも、じわじわと治っていく…。
な、何だったんだ?リーダーさんかユリのイタズラだったのか?あの二人が目潰しするだけなんて事はしないと思うし、閃光を発するだけのカードなら、鑑定眼で見抜けるよな?
「れ、レンナさん!」
「フェぐえ!?」
チカチカする視界に、俯いていたら、誰かにタックルされた!?
フェルじゃない!だって、ぶつかって来たものが、どう見ても自分と同じ位の大きさで自分の胸ポケットに入らないものだ!
なんとか、倒れないように踏ん張る。
「凄い!レンナさんが私と同じに大きさに!」
「………………へ?」
視界が完全に正常に戻る、そこには自分と同じ位の体格になっている、フェルがいた。
フェルが抱きついて来ているのだ。
「………………え?」
視界には物凄く嬉しそうなフェルの顔がドアップで見える。
ここまで顔が接近しているのは初めてかもしれない、え?まじで何が起きてるの?
だ、抱きつかれているということは、抱き返せばいいの…?
「ひゃ…えへへ、勢いで抱きついちゃいました、恥ずかしいですね…」
抱き返すと、フェルは少し驚きながらも抵抗はしてこない、うわ、フェルの体が温かいし、ふわりと甘い匂いを感じる…いや、なにこれ!?凄くドキドキするんだけど!?
人に抱きつく行為なんて、数年前友奈が転んで大泣きしたのを慰める時以来だし、家族の友奈とは理由が違うよ!?
「えーと、フェルが大きくなったわけじゃないよな?」
「レンナさんが小さくなったんですよ!」
ちらりと視界端のHPバーを確認すると、HPバーの下に見知らぬアイコンが浮かんでいた、カードの光を浴びるまではなかったはずだ。
つまり…さっき受付で貰ったカードで自分が小さくなったのか…。
なるほど、これでフェルと踊れるようになったのか…ならばカードは、リーダーさんからの贈り物なのかな?
「なるほど、これで踊れるようになるのか…」
「わーい、踊りましょう!レンナさん!」
「えーと、下手な踊りでも笑うなよ?」
抱きつく行為をやめて、システムを操作して有名曲と思われる曲を流し始める。
楽器が浮き上がり自動で演奏を始め、緩やかなクラシック音楽が流れ始める。
2人で踊り始めるが、お互いに踊りの経験がないからか、ぎこちない踊りになる、足を踏まずに済んでるのが凄い。
「とと、難しいな、フェル…楽しいか?」
「はい、楽しいです!こうやって、地に足つけて踊るの楽しいんですね!」
満面の笑みのフェルを見て、良かったなという気持ちが満ちるし、なんだかこっちまで楽しくなってくる。
一曲目の最後にくるりと一回転したら、フェルがピタリと動きが止まった。
「レンナさん!羽が生えてます!」
「え、ああ…最近なんか生えててね、人目を集めて目立つから隠してたんだよ」
どうやら回転でマントが捲れて、羽が見えてしまったみたいだ…こうなった以上隠す必要はない、マントをしまい、白銀の羽を出す。
「綺麗…触ってみてもいいですか?」
「飛行できれば最高なんだけどな、いいよ」
自分の羽を触り始めるフェル、だが白銀の羽はフェルの手をすり抜けた…はずだ、背後は見れないが、背中をフェルの手によってペタペタ触られているからだ。
「くすぐったい…」
「凄いですね、綺麗…」
「そ、そろそろいいか?」
「あ、そうですね、せっかくダンス出来る場所にいるのに、踊らないのは損ですよね!」
背中を触られた後、再びフェルと踊り始める、次の曲は、スピード感を感じる早いポップな曲だった、なお曲は聞いたことあっても、タイトルは思い出せない。
「フェルはこの曲知っているのか?」
「いえ、初めて聞く曲です!でも体は動くので踊れます!」
「そうか…まあ、好きに踊るのが1番だな!」
まあこっちもなんとなくで踊っているし、多分端から見たら、めちゃくちゃな踊りかもしれないが…まあ、楽しいからいいか!
こうして自分とフェルは3曲ほど踊るのであった。
3曲とも、少ししか知らない曲だったけれども、踊るのはとても楽しかった。