その日の夜とお出かけの服選び
「へー、そんな事があったんだー…」
いつものように晩御飯の後の時間、友奈に今日の事を話す、なんか最近の夜の日課になりつつある。
「そういう友奈こそ、何してたのさ?」
「残念ながら語れるほどの大冒険はしてないよ…リーダーが、決闘大好きな知り合いとめっちゃ決闘してたくらい…?」
決闘…ナナサカさんかな…?
リーダーさん位しかまともに戦える人が居ないのかな?そう考えたらリーダーさんてめっちゃ強いだよな。
「それで、明日の準備は出来てるの…?」
「お金の余裕ならあるよ」
「お金の余裕以外にも、服とかは大丈夫?まさか防具のジャケットで行くつもり…?」
……あ、これいつもの装備で行ったら、ダメなやつ?
「……まあ、お兄ちゃんだとフェルに隠れて服を調達するのは難しいか…そうだ、私が買ってくるよ…」
「え、どんな服を買ってくるつもりなんだ?」
「うーん、ピッチリと決まったスーツもいいけどレンナは錬那と違ってロリ美少女だから…やっぱりかわいい系がいいと思うの」
友奈がこちらを見る、現実の自分は平均的な身長で、平均以上の筋肉はついている、当たり前だがこの姿で可愛い服なんて着たくない。
「あの、フェルにもフレンドの大半に性別わかってる状況で可愛い服着たら、フレンドにそういう趣味だと思われるから嫌なんだが!?」
「別にゲームの中なら問題ないわよ、それじゃあ行ってくるね…」
「え、今から行くの!?ちょ、まってまだ話終わって…」
ファイブクエストの事とか、街でなんかいいスポットがあるかどうかの話をしたかったし、相談したかったのに、友奈は友奈の部屋に戻っていった…。
まあ、明日の夜に相談すればいいか…そんなすぐに虫の軍勢も回復はしないだろう、無理に相談して友奈の機嫌を損ねる方がデメリットがでかい。
街の名所は…行き当たりばったりでも、なんとかなるかな…?
基本的に晩御飯を食べた夜は、ログインしないようにしている…ゲームのしすぎで親に怒られたくないからな…。
「筋トレするか…」
最近サボり気味な運動をする…ファンタジーフリーダムやる前は日課だったんだけどな…なんか心なしか、体の筋肉が落ちてる気がする…。
意外とこういう所で、ファンタジーフリーダムでの動きに影響あったりするのかな?そう思いながら、重い物を持ち上げる筋トレをして、今日は終わった。
次の日、朝にログインするとユリのマイホーム………に降り立ったはずなんだが、いつもの部屋ではなかった。
ドア付き壁が追加されており、そこに2着の服が掛けられていて、ドアにはどちらか選んで着替えてから入る事!と紙が貼り付けられていた。
ご丁寧に、全身を見れる大きな鏡まで置いてある。
まあ、明らかに友奈…ユリの仕業だろう。
というかフェルも手伝ったのかな?
「おーい、フェルいるか?」
壁の向こうに声をかけるが、フェルの声は聞こえない…防音ぽいな…。
服を選ばずに、ドアを開けることは出来るが…それだと2人の思いを踏みにじる行為になるので、やめておこう、取り敢えず服を確認しよう。
1つめの服は髪色や目の色に合わせたのか白いゴスロリみたいな服だ…胸ポケットもついている。
服の知識は殆ど無いが、フリフリしているのはわかるし、膝くらいの長さしかないスカートだ…。
全身白統一で見た目は良さそうだが、はっきり言って、これ着て街中を歩きたくない。
ふわふわ過ぎてなんか動きにくそう。
もう一つは植物をイメージした緑のドレスで、こちらもしっかりと大きめな胸ポケットがついている。
これまた膝位の長さでチューリップを逆さにしたようなスカートだ、なんか初めて会った時のフェルの服に形は似ている。
一旦着てみたら、服についた植物の根が動いて手足に絡みついてくる、なにこのかっこいい演出といえばいいのか、ギミックと言えばいいのか。
体に絡みついた植物の根は動きを阻害しない。
どっちが良いかと言われたら植物のドレス!なのだが植物のドレスには大きな欠点が2つあった。
まずは胸が開いてある事、谷間なんてあるわけないこの体でこれは恥ずかしい…こういうのて胸の大きなキャラの服装にあるやつだよな…。
胸ポケット付いてるけどフェルが入った際に変にならないか?
そしてもう一つ、個人的には最大の欠点だ。
「これが自分の妖精の羽…」
背中が丸見えなのだ…。
そしてここに全身が見られる鏡があるからこそ、ついに自分は自分の羽を確認することが出来た。
それは白銀のような光を放つ羽だった…フェルの綺麗な水色の羽と違って実態がないから触れないのが残念だ。
これで飛べたら良かったんだけど、羽の感覚がわからないし、飛び方がわからないので、今はただの飾りでしかない。
でもこの羽を晒して、街中を歩くのは…目立ちすぎる…。
下手したら、リーダーさんが言ってた大騒ぎに繋がるかもしれない…隠すべきだ、フェルには伝えたほうが良いのかな…?伝えた所で意味はないか?
でも白いゴスロリか植物ドレスの2択なら植物ドレスだが…なんとか背中を隠せないかな?
幸い、ユリのホームの倉庫がこっち側にあったのでなにか無いかなと探してみたら、茶色いマントを見つけた。
身につけると背中の羽は見えなくなった…服を透過しない仕様で助かった…。
ユリに悪いけど少しこのマント借りよう。
こうして、緑の植物ドレスと茶色いマントを着たアンバランスな状態でドアを開けるのだった。