ユリの街案内と1日の終わり
「そういえばフェルのステータスは確認できないのか?」
「それは無理よ、NPCのステータスは見えないようになってるのよ、それにフェルはテイムモンスター、召喚獣とも違うみたいだから、HPも確認できないよ…。
召喚獣は異世界から呼び出した仲間、テイムモンスターはこの世界にいたモンスターを調教して仲間になったモンスターの事を指すわ、それぞれ専用スキルがいるから、それを持ってないお兄ちゃんとフェルには当てはまらないわよ」
召喚獣?テイムモンスター?そんな疑問符を思い浮かべてたらユリが答えてくれた。
「あの、ユリさん、それなら私とレンナさんの関係てなんていうんですか?」
「両か……………相棒関係でいいと思うわよ」
おい、フェルの質問に、この妹なに言おうとした?
「まあ、今日の残りの時間は街を見て回ろうよ、拠点となるこの街のあれこれを知っておかないと、今のお兄ちゃんはトラブル招きそうな美少女ボディだしね」
そういうユリもこっちとは真逆の金髪巨乳の美少女だし、ナンパとか来そうと思ったが…高いレベルのユリならば撃退できるのか…。
「わかった案内をお願い…防具とか調達したいし」
「作らないの?」
「流石に作ったことないよ…作るにしても時間かかりそうだし、可能なら早く体操服から装備を変えたい…ファンタジー世界で体操服て場違い感があって恥ずかしいよ…というかお下がりとかないのか?ユリ?」
フェルが狙われてる以上、手っ取り早く強くなれるならそうしておきたい、ユリならば強い装備の残りとか持っていそうだ。
「その体操服より強いのは持ってないよ、この街でNPCから買える防具よりも強いから今はその装備で頑張ってよ、それに自作できるようになればデザインも自由自在だし、フェルの服も作ってあげられるかもね」
なぜフェルの服の所だけ、自分だけ聞こえるように言うユリ…。
確かにフェルの服はいま着ている服一つだけだろう、可能ならば新しい服を作ってあげたい、チラリと胸ポケットに入っているフェルを見る、フェルの水色の目とあう、するとフェルの口が開く。
「あ、あのもし防具作るなら…私が入る胸ポケットつけていただけるとありがたいです…あ、後レンナさんはタキシードとかフリフリのドレスとか似合うと思います!」
「わ、わかった…胸ポケットの件は承った…で、デザインは制作時に決めるので…うん…」
フリフリのドレスと言われて、困惑しながらも承諾すると、ユリはニヤニヤしていた。
「さて、喋るのも程々にして街に行くよ」
「街に行くならそのニヤニヤを止めてからにしてくれ」
兄妹としての軽口を言い合いながら、再び街に出かける…人が多いがこのゲームは人気なんだな。
「取り敢えずこの建物が普通のクエストを受けられる所、通称ギルドだよ、ここでモンスター討伐の依頼を受けながら、装備作成の素材を集めたほうがいいかもね、因みにたまに自分の力を過信して、初心者をカツアゲするやつがいるから気をつけてよね」
「え、ならこんな見た目じゃ、やばいのでは?」
中身は男だが、見た目は体操服を着たか弱い女の子だ、めっちゃ狙われそうなんだが。
「そもそも街の中でフレンドじゃないやつにハグされたりしたら、通報ボタンが出てきてそれを押したり、叫べばこの世界の警察にあたるNPCが来るから襲われてもなんとかなるわよ…まあ、外だとPVP区画に行かなければ襲われることはないはずよ、そういう事したら大抵の街が使えなくなる大きなペナルティが課せられるし…と、
そしてここがショップエリア、NPCの店以外にも、PL達も物を売ったりしてるけど、ボッタクリがいるから、なれない内は買わないことを奨めるよ」
サクサクと進む、ユリの街案内、ちらっと見たが性能が低い、見た目だけの装備がかなり高値で売られてたりして、うわっと引いた、この世界のお金の価値がまだ分からないが、少なくともぼったくりなのは直感で理解した。
「そんでここは来たことあるよね、街の入口付近とお兄ちゃんが最初に降り立った広場だよ、結構情報が流れて来やすいから、情報を探すならここに来ると良いかもね、入口にあるそこの丸い魔法陣からも安全地帯の私のホームに飛べるから、ログアウトする時は魔法陣で私のホームに行ってからログアウトしてよね、じゃないとフェルが悪いやつに高確率で攫われちゃうよ」
「わかった、気をつける」
「そして、あそこの細い道をいくと、裏路地だけど、レンナは絶対にいったらだめだからね、悪い人が多くてどんな目にあうかわかったものじゃないんだから気をつけてよ?」
裏路地の事に関しては強めに止められる、なんか嫌な目にあったのだろうか?こっちも気を付けよう。
「さて、これでこの街、通称ワンの街の案内はおしまい、時間も押してるし、今日はホームに戻ってログアウトしようよ」
そういって、自分を引っ張りながら、マイホームへ戻るユリ。
「今何時なんだ?」
「現実は7月25日の土曜日、夜の11時頃よ、4時間位プレイしたかな?」
…結構遊んでたんだな。
「それじゃあ、私は先にログアウトするから、フェルは困ったら部屋の物とか倉庫の食べ物とか使っていいからね!」
そういって光の粒子になって消えるユリ、あれがログアウトの演出なのか。
「あの………また会えますよね?レンナさん」
「ああ、明日は日曜だし、遊べるし、その後は数日は無理かもしれないが、その後は一ヶ月位遊ぶ時間はあるよ」
あと少ししたら、夏休みだしな、宿題に1日使うだろうが、その後自由だ。
「わかりました!明日、レンナさんが来ることを私は待っています!」
「おう、それじゃあ…またな!」
そういってログアウトを押して、現実世界に戻った、頭につけていた装置を外して、辺りを見渡す…。
「……視界がバグる」
さっきまで自分よりもその小さい子供の視点でプレイしていたので、少し違和感を感じていたが、ユリ…友奈が部屋に来たので、その違和感はすぐにどっかいった。
「お兄ちゃん……遊んでくれてありがとう」
ゆっくりとドアをあけて、覗き込むように、こちらを様子見る友奈、ユリの姿を幻視して違和感が凄い。
「いや、こっちもなれない体験をさせてもらったし、感謝する…この装置は持ってていいんだよな?」
「うん……元々あげるつもりだったし、お兄ちゃんもファンタジーフリーダムにハマってくれると嬉しい…」
まあ、くれないとフェルと会えなくなるから困るんだが…。
「そういえばお兄ちゃんてフェルに惚れたの?推しなの?ああいった表情始めてみた」
「ず、随分ストレートに聞くな…わからんよ、恋なんてしたこと無いし…推しと恋の違いがわからないよ」
「お兄ちゃん鍛冶屋一筋だったからね…まあ、沢山沼る分には歓迎だよ、お兄ちゃん、一緒にゲーム楽しもうね」
「あ、ああ」
楽しげに微笑んだ友奈の後ろにイラッとするくらいニヤニヤしたユリの幻をみてしまう。
今日はもう寝よう………。