スキル進化、共鳴からシンクロへ
謎の現象に頭を悩ませていると、視界の端っこに通知アイコンが浮かび上がったので、押してみると、システム画面が現れた。
『スキル:共鳴のレベルが10になり、スキル:シンクロに進化しました。
またアクセサリーの共鳴強化がシンクロ強化に変化しました』
『シンクロ
自分と違う異種族と考えが同調するほど心を交わした者が得るスキル、心を交わした異種族によって効果が変わる。
時に心を交わした相手の力が使える場合がある。
妖精フェルとのシンクロ効果:フェルが50M以内にいる時のみ効果発揮する、戦闘時は武器に属性、特殊効果が、製造時は製造した物に属性、特殊効果が付与される可能性がある。』
共鳴がシンクロに進化したみたいだ…アクセサリーの効果名称も、共鳴からシンクロに変わるのには少し驚いたが。
共鳴との違いが目に見えてわかりやすいのは…相手の力が使える場合があるという所だ、もしかしてさっき視界不良の時にフェルの視界が使えたのはこの効果だったのか?視力的な感じで?
そう考えていると、ズウン!と地面が揺れた!?
「きゃあ、なんですか!?」
フェルの言葉を聞きつつ、辺りを見渡すと倒したはずの、黄金蜘蛛が逃げてるのが見えた…。
「え!?そんな生きていたんですか!?」
「……あー…」
しまった…普通撃破時は赤いエフェクトを発して消えるのに、黄金蜘蛛は赤いエフェクト放ってなかったな。
視界不良で赤いエフェクト見ている暇なかったよ…。
「追撃は無理だな…危険すぎる」
「そうですね…て、それよりも眼は大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない」
しかし黒い蜘蛛の糸が目に入るとか、リアルだったら目が失明してただろうな。
戦闘の疲れもあるし、MPがほぼ空っぽな状態で、結界から離れるのはかなり危険だ、休まなければ…。
「回復に戻ろう、休んだらもう少し虫を倒そう」
「はい、これで虫の数がどれだけ減るんでしょうか…?」
クエスト情報を確認してみたら虫の戦力が39%になっていた。
なんか予想以上に戦力削れてるな…黄金蜘蛛を撃退したからか?
どちらにせよ、このまま虫を倒していけばフォークエストをクリア出来そうだな…。
結界内に戻るとフェルのお母さんが話しかけてきた。
その表情は少し不安げだ。
「結界の中から見てたけど、結界維持のせいで娘と恩人の援護出来ないのは歯がゆいわね、あの黄金の蜘蛛が出てきた時は怖かったけど、本当に無事で良かったわ」
「結界の維持という最大の援護をしてもらってますよ、結界がなければ休めませんし…悠長に回復出来ませんよ」
「それはそれ、これはこれよ…支援ばかりで攻勢に出れなくて悔しいのよ」
休憩しながら、ゆっくりとMP回復薬を飲みながら回復したMPを火光のMPタンクに込める。
妖精加護の力でMPが持続回復してるが、回復量が少ないのでMP回復薬を2本使い、火光のMPタンクを満タンにする。
「この結界は私の武器が要になっているわ、だから私が戦うとなると、結界を消さないといけなくなるのよね」
「それは…戦いに出られると困るな…」
「わかっているわ、リーダーの私がわがまま言って、皆を危険に晒すわけにはいかないわ…でもずっと耐え続けるのはキツイかったのよね…でもレンナさんが来てくれたおかげでかなり状況はよくなったわ、結界内の空気もね」
結界内の空気?自分達が来る前はどんな感じだったのやら…?
でも想像はしやすい、僅かにしか手に入らない食糧、結界内はそこそこの広さがあるとはいえ手狭な空間から出られず…空腹からのストレスとか考えたらかなりギスギスしててもおかしくない。
「ねえねえそろそろ私達にも話をさせて」
「遊んで欲しいのー」
「のんびりしたいな」
「メシアの話聞きたいー」
妖精達が集まってくる、皆遊びたいようだ。
「あーすまないな、もう少し虫を駆除する予定なんだ、また今度遊ぼうな」
そういうと、妖精達は虫退治なら仕方ないかーと残念そうな表情をしながらも、各々何処かに行ってしまった。
「レンナさんが来るではご飯の時間の度に喧嘩してたのよ…あの子達、今はレンナさんの食べ物でお腹いっぱいになって、いつも通りの仲良しに戻ったわ」
「ええ?そうなのお母さん?なんだか、想像できない…」
フェルが驚く表情をする、それほどイメージしにくかったのかな?
なるほど…なんとかして、早く結界内じゃなくても生きていけるようにしたいな。
「フェル、もう少し虫を倒しに行こう、少しでも早く虫を殲滅したくなった」
「はい、行きましょうレンナさん!」
「危なくなったら、すぐに結界内に逃げてきなさい」
MPを回復して、休憩した自分達は、再び結界の外へ足を踏み出した。