虫の軍勢の戦力を削れ!
3度目のフェアリーガーデンの到着、待ち伏せをされている事は無く、相変わらず荒野の風景が視界いっぱいに映る。
「最初にお母さんの所に行くんですか?」
「ああ、あんまりご飯が調達出来ないみたいだし、皆が餓えないように、定期的にご飯を届けたい」
「…ありがとう、レンナさん」
「どういたしまして」
フェルのお礼を聞きつつ、歩きながらシステム画面を開き、クエスト情報を確認する…。
『虫の軍勢の戦力残り57%』
前見た時より少し上がっている…まさか繁殖して、戦力を増やしているのか?
も、もしかして、繁殖場とか探して破壊とかしないといけないのかな?い、いやだ…頼むから地下とかにあったりするなよ…?
嫌な考えが頭をよぎるが、それを振りきって、結界への道を行く道中、近くにいる虫には積極的に戦闘を仕掛けてゆく。
「アースキー!地門!」
「チェインライトニング!」
空飛ぶ虫はフェルの魔法で、地上の虫はアースキーで攻撃する、一回の戦闘で戦う虫の数が少なかった為、殆ど苦戦することなく倒す事が出来た。
あの黄金蟻の包囲網戦を経験したおかげか、少数の虫との戦いなら、精神的にも少し楽だ。
20戦以上の戦いをして、結界の内部に到達した。
「倒しても倒しても、虫が湧いてきますね…」
「まあ、こればっかりは地道に倒していくしかない…虫の戦力が無限じゃないのは確かだ」
フェルのお母さん、妖精達に野菜入りサンドイッチを寄付した後、少し休憩したり、妖精達と話をしてから結界の外に出た。
システム画面で虫の戦力を確認すると、残り55%になっていた…。
沢山戦っても数%しか削れない、やはり大きく削る方法は大量に集めて妖精火門等で一気に倒すか、黄金蟻みたいな幹部を倒すべきだが…。
幹部は何処にいる、全くかわからない…黄金蟻みたいに、金ピカで光って喋ってたらわかりやすいのに、今使える手は…。
「それを使うんですか?えっと、本当に使うんですか?お母さんから許可を貰ったとはいえ…」
フェルが心配そうに声をかけてくる、自分の手の上には、虫を集める薬が入ったアイテムだ。
改めてよく見てみると、中にはゼリーみたいな物が入っている、逆さにしてゼリーが動かない辺り、結構硬めのゼリーなんだろう。
個人的には、爆弾より爆弾じみたアイテムだ、効果の力は、黄金蟻の軍勢を混乱させた記憶が、嫌でも脳に記憶されている。
結界付近で使って虫を集める為、フェルのお母さんに説明して許可を貰っておいた。
「虫を一気に排除するにはこれが一番効率的だ」
はっきり言ってかなり開けたくないし、近くに結界があるので、最低限の退路は確保しているが、運が悪ければオールモスキートすら引き寄せかねない…そうなった場合かなりやばい。
だがこれを使わなければ虫の戦力がなかなか削れずに長期戦になってしまう。
戦術、戦略に詳しくないが、食料の都合を考えたら、長期戦になれば不利になるのは妖精側の筈だ。
「わかりました、一緒に頑張りましょう!」
「ああ、行くぞフェル!」
薬を開封して、出来る限り遠くに全力で投擲する、甘ったるい匂いが辺りに満ちる。
「濃い匂いですね」
「虫が好む匂いなんだろうな…と、来たぞフェル……」
数分もしない内に、虫達が遠くから殺到してくる。
虫集めの薬の効果高すぎないか?薬周辺の虫密度がやばくて気持ち悪い、蟻とか蜘蛛とかイモムシとかが、所狭しとギューギュー詰めになっている。
や、やばい、ちょっと虫の数が多すぎて、許容の範囲を軽くオーバーして、体が震えてきたよ…。
黄金蟻の包囲網戦の時も、似たような感じのはずだったけど、なんであの時は耐えられたのだろうか…やはり妖精達の支援のおかげなのだろうか?。
「フェ、フェル…妖精氷門で一気に倒して欲しい」
「わかりました!妖精氷門!」
虫の見た目による拒絶反応で、震える体を抑えつつ、フェルに切り札の発動をお願いする。
すると薬が設置された所に巨大な魔法陣が発生、そこに向かって、巨大氷が落下してきて、巨大氷は炸裂するように爆発した。
殆どの虫が氷に潰されて、炸裂して飛んできた氷に貫かれて、赤いエフェクトを纏って消えていく。
システム画面で虫の戦力を確認したら、6%減少している…。
「ナイスだ、フェル…虫達が一網打尽だ!」
「一網打尽にできますが…魔力が無くなったので暫く強い魔法は使えません…」
「大丈夫か?魔力が回復する薬飲むか?」
「いえ、時間をかければ回復するので薬は温存しましょう」
胸ポケットの中で、フェルが肩で息をする…フェルにMP回復薬を飲ませたいが…フェルが飲む気がないなら、無理強いは出来ない。
次は自分が頑張る番だ!