真夜中のログイン
…………真夜中の2時、完全に目が覚めてしまった…。
「………友奈の言う通りになってしまったか」
友奈は兄の生態をよく理解している…。
「…………………………ファンタジーフリーダムに行くか」
長い葛藤をしてから、ファンタジーフリーダムに行く為の装置を手に取る、フルダイブゲームは睡眠にはならないし、生活の乱れになるから絶対に良くはないんだが…思わずログインしてしまった。
ユリのマイホームに降り立つと、部屋は真っ暗だった。
「……」
ベットですやすや寝ている、フェルがいたが、起こす気にはならなかったので、一人で水着に着替えて夏イベントのフィールドに行く。
乱数値は…ゼロと入れとくか。
「うーん、暗い…」
確かに夏イベントのフィールドは、リアル時間の影響を受けるんだっけ?
そんな事を考えて、のんびりと海を眺めていたら、知ってる人の声が聞こえた。
「おや、レンナ殿…なんでこんな時間に居るんですか?」
「ナナサカさん…フレンドでもないのに、割と知り合いに会えるんだな…」
声がする方向を見ると、そこにはリーダーさんの友達で自分が知る中で1番強いプレイヤーで決闘中毒のナナサカさんだった。
「リダから聞いた話だが、名前を知り合って、友好的な関係ならめぐり逢いやすいとかあるらしい、その影響じゃないかな?もしくは…運命とかあったりするかも?」
「運命とかそういうロマンチックなのは異性との出会いの方がいいな…」
「俺も異性のほうがいいなーしかしどうした、リダから聞いた話では、レンナ殿は学生と聞いていたから、こんな夜中にゲームするとは思わなかったぞ」
「いや、ナンバークエストのボスに手酷くやられてな…ふて寝してたら、夜中に起きてしまったんです…」
そう言うとナナサカさんはえっ!?と驚愕の表情になる。
「ま、ま、ままさかフェル殿が!?」
「あ、死んでない!フェルは生きてるよ!辛うじて逃げ切ったから!ボスに見逃された感じだけど…」
危ない、流石にこのタイプの誤解は急いで解かないと危険だ。
「びっくりした…己の弱さに落ち込んでいたのか」
「直球にいうな…まあ、あってる感じだけど…」
意識すると、頭の中でどうやってオールモスキートに勝てばいいんだろう?どう強くなればいいんだろう、そんな考えが浮かんでは消えていく。
そしてふと視界にナナサカさんを捉えた。
頭の中にナナサカさんと決闘すれば、腕を磨けるのかなという考えが思い浮かんだ。
「ナナサカさん、本気で決闘してくれませんか?」
「…え、正気か?知ってるだろ?俺のクラスとステータス…それに見た感じそこそこレベルが上がっているが、30レベルだと勝てないぞ?」
ナナサカさん、レベル見抜くスキルがあるのか…フェアリーガーデンに踏み入れた時より3レベルが上がっている、多分黄金蟻軍戦とかで、沢山の経験値を得られた感じなのかな?あの時は大変で、レベルとか確認する暇なかったな。
はっきり言って、ステータス差でどうあがいても勝ち目はない、でも少しでもナナサカさんのスピードに反応できるようになれば、オールモスキートのスピードに対応できるかもしれない。
だがナナサカさんは少し気まずそうに口を開いた。
「えーと決闘は大歓迎なんだが、俺の本気の刀はやばい位に非人道的な刀で、PLに使うのは避けたいというか…リダのお気に入りに本気の刀を使ったら、真面目にリダからフレンド切られそう」
「どんな効果?」
「本来プレイヤーはダメージを受けても、ゲームの設定で痛みがかなり軽減されて、ちょっと痛い位で済むんだけど…それが軽減がほぼなくなる…つまり刀に斬られるとのたうち回るほど痛い…現実に悪影響がないらしいけど…はっきり言ってPVPで使う刀ではないのは確かだ、因みに設定で痛み無効と設定している奴を斬ると問答無用で即死する」
……え?痛みがダイレクトでくるの?1プレイヤーが持ってて良い武器じゃないよね…?
「………え?そんなの持ってて大丈夫なの?」
「沢山斬られた思い出の品だし、神から奪った刀神の証みたいなものだから捨てるに捨てれん…本気の刀は使えないが、準本気装備でなら決闘してもいいよ、俺も決闘したいし…1対1を挑まれるなんて久しぶりだ!」
痛覚そのまま伝わる刀で、たくさん斬られた?え?神様から奪ったて…なに?
こっちがとんでもない言葉に硬直してる中、にやりと凄く楽しげに笑うナナサカさん…やっぱり止めると言いそうになったが飲み込む、ここまで来て逃げたくない!
「それでお願いします…胸を貸してください!」
そう言うと、システム画面を操作するナナサカさん、するとこちらにもシステム画面が現れた。
『ナナサカから決闘を申し込まれました。
ルール
戦闘時間:1分
対戦形式1対1
勝者の報酬:なし
死亡の有無:あり
戦闘終了後決闘前状態に復元:なし
レベルシンク:なし
HP可視化:被弾時表情
決闘を受理しますか?』
「死亡ありなんですか?復元もないし」
「ああ、復元なし、死亡ありの決闘だとスキルの経験値が入るから、少しは成長に繋がるよ」
「なるほど、わかりました」
ナナサカさんの言葉に頷き、自分はハイのボタンを押した。