命がけの撤退
フェルの魔法で生じた拘束する鎖が破壊されたので、一度オールモスキートから距離を取る、羽が焼かれたにも関わらず、オールモスキートは平気そうだ。
「全く、少しは痛みで動きが鈍ってくれれば、逃げれるんだがな」
「ははは、久しぶりのご馳走で珍味逃す訳ないだろう?」
完全にこちらをロックオンしている。
珍味扱いかよ…。
逃げる手段…今使えそうなアイテムはリーダーからもらったゼロオーダーの呼札があるが…逃げる為に使うのはダメな気がする…これはオールモスキートを倒す時に切るべき札だ。
「さあ、もう少し血を食わせてよ」
「食わせるかよ、地門!」
「ホーリーボール!」
オールモスキートが肉薄して来たので地門でオールモスキートとの間に針を生やす、壁モドキにしようとしたら、体当たりであっさりと破壊された!
ホーリーボールもきいてない!?
「強靭すぎないか!?」
「はは、この程度強靭のうちに入らないよ、それでは頂きます」
ホースのような口が伸びてくる。
それを火光で迎撃しようとするが、オールモスキートの口は火光を避けるように動き、太ももに突き刺さる。
「痛い…おら!」
「アイスコフィン!」
血を吸われる前に火光を振るい、オールモスキートの長い口をぶった切ろうとするが、ギインと弾かれる…。
フェルの魔法で、オールモスキートの手足が凍っていくが…怯む様子はない。
「硬い!」
しまった、咄嗟に口に攻撃をしてしまった、追体験で口が硬いのは、わかってたことだろ!?
再び血を吸われて、みるみるHPバーが短くなっていく…というかオールモスキートの羽が治っている!?
「ふざけるな!」
「アイスコフィン!」
フェルが何度も同じ魔法をかけて、オールモスキートの体や羽を凍らせてる中、体を無理やり動かして吸血の口から脱出する、無理やり引き剥がしたせいかHPがゴリッと減り、残り2割になってしまった。
あれ?リジェネレート効果まだ出てるはずなのに回復しない…?血を取られすぎた影響か?
「レンナさん、逃げてください!相手の体を凍らせました!今なら逃げれるはずです」
「わかった…」
このままじゃやられる…そう判断して、痛む足を動かして、オールモスキートから距離を広げている中、背後から声が聞こえた。
「なら貴方の力を使いましょう、血魔:地門」
は?地門!?と思った時には地面から生えた大地の針がお腹に突き刺さった…。
「あ…が…」
やばいやばい、死にたくない!死にたくない!
視界が真っ暗になっていく…ここまでなのか……?。
「レンナさん!!」
フェルの声が聞こえる!その声は物凄く絶望に満ちた声だ…この声が自分が聞ける、フェルの最後の声になるのか?それはやだぁ……まだ…まだ!
「死にたくない!」
一気に視界が正常に戻る、視界端にあるHPバーはもう1ミリしかない、これは不屈が発動したのか…。
「フェル!回復とスピードアップ!」
「リジェネレート!スピードアップ!フェアリーウィッシュ!スリップガード!スタンガード!エレメントブースト!」
フェルが泣きながら魔法を唱える、もう手当たり次第に補助魔法を使っている…。
「まあ、いいでしょう、殺したらもう混血の味も味わえなくなるでしょうし…皆さん、彼らは襲わないようにね?また後で美味しくいただきますので…」
後ろからオールモスキートの声が聞こえる…。
こうして自分は命からがらに撤退…いや、敗走した…。
オールモスキートが見えなくなる位に距離を取った後、HP回復薬をがぶ飲みして、HPを全開させる…。
というか、リジェネレートが機能してなかったのはオールモスキートの攻撃で出血という状態異常になっていたせいだったみたいだ、HP回復薬をがぶ飲みしたら治った…。
「レンナさん…」
「大丈夫……死んでないから…」
空気は完全にお通夜ムードというやつか。
唯一収穫があったのは…オールモスキートは多分、吸った相手のスキルを模倣することが出来る…という情報位か…?
後は心なしかフェルの魔法があんまり聞いてるように見えなかったが、魔法に対する防御性能高いのかな…?いや、物理的にも硬いか…。
「あーだっさいな…」
「レンナさんはダサくないですよ!次は必ず勝ちましょう!」
「そうだな…でも今日は、ユリのマイホームに戻ろう…」
「……はい」
その後何故か…いやオールモスキートの指示の影響で虫に襲われることなく、自分達はユリのマイホームに帰還するのであった。
ちょっと友奈に相談しよう…。