貫き穿て!黄金蟻!
2分ほど戦った事でわかったのは、黄金蟻は戦闘力が低いという事だ…そうじゃなきゃ、近寄られたら真っ先に逃げという手は取らないだろう。
というか、配下に範囲攻撃無効付与というぶっ壊れスキル持ちで、本人も強かったらオールモスキートに従う理由なくなるだろう。
「くそ!お前ら挟み撃ちをしろ!お前らは今範囲攻撃は食らわないんだから数で圧倒しろ!」
黄金蟻が指示を飛ばす…声がデカいから、作戦が丸わかりなのは助かるが…言葉にしないと範囲攻撃無効化が付与されないのかな?なら早く黄金蟻の口を塞ぎたいものだ。
「レンナさん、蜂の時みたいに肩を借ります!背後は私が!」
「わかった!」
フェルの位置が胸ポケットから左肩に変わる。
自分の代わりに背後の敵を倒すみたいだ。
「アイススピア!ホーリーボール、サンダーショット!」
「くらえ!」
アースキーを振るって、5匹ほどバスケットボール位の大きさの蝿を地に落とす、背後は見ない、フェルを信じる!
黄金蟻に近付く為に、地を蹴り走り出す。
邪魔する虫はアースキーで殴り飛ばしていく。
妖精の支援のおかげか、ほんの少しだけ虫に対する禁忌感というか、拒絶感がマシになっている気がする…。
プラシーボ効果かも知れないが!でもやっぱり気持ち悪い、今すぐにでもアースキーを洗いたい!
「くそ!吾輩狙いかよ!くるな!死ね!死んで肉体だけ血肉をオールモスキート軍に捧げろや!ヘクサやれ!猛毒臭を浴びせてやれ!」
茶色くて平べったい、サッカーボール位の虫が、顔面に向かって襲ってくる…ヘクサて…あの付いたら数日は確実に臭くなる匂いを発するやつか!?
あれの巨大版て、もう爆弾レベルの危険物だよ!?絶対にやばい!直接殴るわけには行かない!
「地門!フェル、胸ポケットに戻って5秒だけ息を止めて!」
「はい!後方狙いの敵はあらかた撃ち落としたので前に集中してください!」
「流石だフェル!」
地門で地面から大地の針を生やして、ヘクサを貫く!
息を止めてヘクサと距離を取るように迂回して黄金蟻を追いかける。
幸い自分達の嗅覚は、ヘクサの匂いを感知することはなかった、感知しなくて良かった。
「な、ヘクサの対策知ってるのかよ!?安易に殴ると思ったのに!」
黄金蟻が驚く、どうやらこの世界では希少な存在みたいだ…むしろ絶滅してくれ、あれは危険物だよ。
「いい加減逃げずに戦え!」
「は、逃げるんじゃねぇ!相手の土俵に立たない戦術だ!なんか凄く強くなってるが、そのオーラの力、長くは持たないだろう?そのオーラがなくなった時、貴様の最後だろ?お前ら!数で圧殺しろ!」
やべ、長く持たないのバレてる…。
というかどっから湧いてくるんだよ、この大量の虫!?
「レンナさんもう一度飛びましょう!アイススピア!」
フェルが氷の槍を撃ち出して、跳ぶことを提案する。
確かに跳躍すれば、今の強化にされた状態だと一気に近づけるが…空中だと回避行動が取れなくなるので避けたい…だが、ここは強気で攻めないとやばい!
「わかった、行くぞ!地門!」
目の前の大きなカマキリを地門の大地の針で貫き、再び跳躍、体は再び空に飛ぶ。
「アイスチェーン!」
フェルの魔法による氷の鎖が黄金蟻の体を縛る。
「うわ!?冷た!?ちょ動くなダークスパイダー、痛い!」
「ナイスだフェル、これで終わりだ!貫け、アースキー!」
「アイスメテオ!」
アースキーを再び投擲する!フェルは大きな氷球を落とす。
ちょっと待って、氷がでかくて黄金蟻がみれねぇ。
「くそ!撤退だダークスパイダー!ちょ、鎖邪!」
黄金蟻の声が聞こえたと思ったら、激しい衝突音が鳴り響く…妖精氷門と違って爆発はしないみたいだ。
ひとまず着地して、アースキーに戻ってこいと祈るとアースキーが戻ってくる…便利だ、これ…。
「はあはあ、やばい後一分…」
辺りを見渡す、ジリジリと他の虫達はこちらに近付いてくる。
黄金蟻は倒せたのか?疑問が満ちていると、あのファーストクエストのダークスパイダーが氷の向こう側から現れた…大してダメージを食らってないみたいだ。
くそ、倒せなかった…と思っていたら、見つけたのだ、黄金の蟻の足の2本だけがダークスパイダーの頭に乗っているのが…そしてその足が赤いエフェクトを纏って消えたのだ。
「よし!黄金蟻はこれで終わりだ!範囲攻撃無効もなくなってる!切り札で一気に行くよフェル、妖精火門!虫を焼き尽くせ!」
「はい、妖精氷門!」
それを黄金蟻を倒したと判断した自分は火光を取り出して、切り札を使う!フェルも切り札を使う!
至る所で火が吹き出し、遅れて小さな氷が降り注ぎ、炸裂する…フェルの妖精氷門が初回の時と違って、しょぼく見えるのは、戦闘でMPを消耗して、使用MPが少ないからか?
周りの虫が焼けて、赤いエフェクトを発して消えていった為、黄金蟻の撃破を確信する。
「フェル、撤退するよ!」
「はい!」
黄金蟻は倒したが、妖精氷門や妖精火門でダークスパイダーを倒せたかはわからない、だが妖精の支援も消えそうで、MPも使い切った。
これ以上は戦闘は危険と判断して、自分達はダークスパイダーの状態を確認せず、未だ吹き出す火柱を突っ切るように走り、結界に撤退していった。