食べ物の運搬とそのお礼
結界をくぐり抜けたら、真っ先に妖精達が押し寄せてきた。
「クッキーの人だー!」
「食料のメシアなのー」
「人間の花婿よー!」
「フェアリーガーデンの切り札だー!」
かなり好意的な反応だが、誰だ花婿とか言った妖精は?意味わからんぞ?
「いらっしゃいませレンナさん、おかえりなさいフェル…無事で良かった」
「お母さん…ただいま」
「おはようございます、可能な限り食べ物を持ってきました」
フェルのお母さんに頭を下げてから、システム画面を操作して、大量の菓子パンとお菓子を取り出す。
心なしか、体が軽くなった気がする…実際に変化はないんだが。
「すごーい!」
「パンもあるなのー!」
「食べ物持ちだー!」
「今日もたくさん食べれるー!?」
食べ物をたくさん出てくる所を見ていた妖精達は、歓喜の声をあげる!
「い、いいんですか!?この数を運ぶとなると凄く大変だったのでは!?」
「まあ、大変だったけど、皆が餓えで苦しむと、フェルが悲しむと思ってね、受け取ってほしい」
「わかりました、貴方の優しさに感謝します…皆さん、食べ物を倉庫に運びましょう」
「「「「はーい!」」」」
妖精達がお菓子や菓子パンを運び始める。
「うーん、レンナさんにお礼をしたいですけれども…今の現状だと何もお礼になるものが…」
「あ、ならば教えて欲しい事があるですけども、オールモスキート…敵のボスが根城にしている所を知っていたら、教えて欲しいです」
「それは…戦いに行くということですか?」
フェルのお母さんの言葉が優しい声から一転して、威圧というか威厳に満ちた声になる。
思わず、いや違います!と言いたくなるが、その言葉を飲み込む…。
フェルのお母さんの言葉の意味はわかっている…自分がオールモスキートに挑むということは、フェルも一緒に挑むということだ。
親としては、行かせたくないのだろう…。
「お母さん、止めないでください!私はレンナさんと一緒に、オールモスキートと戦いますよ!」
「…いつかは戦いに行くと思います、少なくとも死ぬつもりも、負けるつもりもありません…」
大丈夫なんて、安易な言葉が使えるほど自分は強くない…何て言うのが正解なのだろうか?。
「…はあ、恩人と娘を止める事は出来ませんね、可能なら一緒に戦えてたら良かったんですが…今の私は結界の維持で、ここから出られせんので、見送ることしか出来ないのが苦しいね」
声が優しい感じに戻る、なるほど…フェルのお母さんには結界から出られないのか。
「だから出来る限りの事をさせてもらうね」
フェルのお母さんが魔法陣を展開したと思えば、そこに手を入れて、紙を取り出して、紙をこっちに渡してきた、受け取るとシステム画面が出現する。
『フェアリーガーデンの地図(旧)を手に入れました』
「地図ですか?」
地図を確認すると、一箇所に丸が描かれていた、もう一箇所にはデジタルな矢印マークが動いている、右を向いたら矢印も右に回ったので、多分自分のいる所だろう、便利だ。
「丸の所にオールモスキートが占領して、根城にしている家があります、鍵などは掛かってないので、侵入は簡単だと思いますよ…あとは貴方の武器を貸してくれませんか?」
「あ、どうぞ…」
アースキーをフェルのお母さんに差し出すとフェルのお母さんは祈りだした。
「わが娘の半身の武器に祝福を…」
祈りによって、アースキーが淡い光を放つ、鑑定眼で見てみたら、妖精の祝福が付与されていた。
「強化してくれたのか?」
「ええ、後は…フェル、少し加護を補強していいかしら?」
「…まあ、お母さんならいいですよ」
少しムッとしながらも了承するフェル、するとフェルのお母さんは自分の額に手を当てる…温かい温度が額から感じる。
「貴方にはさらなる妖精の加護を…」
『妖精の加護が補強されました、フェルが付近にいる間、MP持続回復(微小)が発動します』
おお、凄い!欲しかったMP持続回復効果だ!
これで時間をかければMPが回復する!そうすることで防具の性能を維持しやすくなる!
「ありがとうございます、色々と強化してくれて」
「むー、出来れば成長して、自力で加護を強化したかったです」
「ふふ、今回は許してね、フェル?」
頬を膨らませるフェルをみて、笑顔になるフェルのお母さん。
「少ないけど、これがフェルのお母さんとして手伝える全てよ…フェルをよろしくお願いします、レンナさん、後はお任せします…」
「わ、わかりました」
取り敢えず、地図に記された丸の所に行ってみようかな?
すぐに戦う訳じゃないけど、場所を確認しておきたい。