蜂の追跡者!
「はあ…はあ…ひーひー」
結界に向かって、ひたすら走っていたが…アドレナリンがきれたのか、スタミナが限界を迎えたのか、足が勝手に止まる…。
妖精達が住む結界までまだ距離がある…。
肩から胸ポケットにもどったフェルが、心配そうに声をかけてきた。
「振り切ったみたいですし…少し休んでも良いのでは?」
「だめだ…勝ったというわけじゃ無いからな、それに、飛んで追われたらやばい…」
フェルの妖精氷門で足止め…運が良ければ、薬で黄金蟻の声が届かなくなった虫を、倒せた可能性はあるが、黄金蟻、ダークスパイダーは倒せた気はしない。
少しでも結界に近付く為に歩く。
「いやー、カッコ悪いな…オールモスキートの時と同じく逃げてしまった」
「だからといって、圧倒的な数的不利の中、戦うわけには行きませんよ…」
「まあ、そうだな…しかも範囲攻撃無効みたいだったし、まともに戦うとしたら、ひたすらフェルに単体攻撃魔法を撃って貰って、自分はひたすら逃げ続ける感じになってたのかな…」
うーん、勝ち目もないし、やりたくない……。
「とにかく結界の中に急ごう…少し休みたい…」
少し歩いていると、スタミナが僅かに回復したので、再び走ろうとしたら、ドスリと背中に痛みと衝撃が走った。
HPバーが4割ほどゴリッと減り、毒のアイコンが追加される、倒れそうになるが、なんとか振りとどまる。
「ぐう…もう追手が!?フェル回復を頼む!」
「リジェネレート!」
後ろを振り返ると、そこには空飛ぶ蜂が8体…いや、1体はお尻にある針を失った状態で、既に地に落ちて7体になっているが、まさか死ぬと引き換えに針を撃ち出してくるのか!?
特攻蜂ということかよ!?
くう、リジェネレートが毒と相殺して回復がしない…。
「針を撃つなら、いつでも来やがれ…フェル、余裕があれば攻撃を」
「はい、危険そうなら、アクアシールドで守ります!取り敢えずホーリーボール!」
蜂が遠距離攻撃をしてくる以上、背を向けて、結界の所へ走る訳にはいかない…。
針攻撃を食らえる猶予は後1発だけだ、アクアシールドで守られた場合なら2発かも知れないが…。
これ以上食らってたまるかよ!
だけど蜂達は仕掛けてこない…。
フェルが光の玉を撃ち出すが距離があるからか避けられる。
蜂は近寄ること無く、攻撃すること無く、こちらを見続けている…まさか…。
「…くそ、コイツら足止め部隊かよ!?」
「足止め部隊?」
「多分さっきの黄金蟻が来るまで、自分達を足止めするんだよ…逃げるなら死んででも針を撃って牽制しろだろうな…フェル、自分の肩に乗って、自分の背後を見てくれないか?針が飛んできたらアクアシールドで守ってくれ、自分はなんとかジグザグ走行で回避してみる!」
「わかりました!チェインライトニング!」
フェルは素早く肩に移動すると、合図と言わんばかりに雷を放つ、雷は蜂の1体に当たって、地に落ちた。
黄金蟻の声が届かないから、範囲攻撃は効くようだ。
それを合図に自分は蜂に背を向けて、結界に向けて走り出した!
「アクアシールド!」
早速フェルが魔法を唱えたので横にジャンプする、するとさっきまで走ってた所に針が通り過ぎた。
「飛んで!」
再びフェルの言葉で横に回避するが、腕に痛みが走る、回避しきれずに被弾したようだ、しかしアクアシールドのおかげかHPダメージは1割減少で済んだ…それでも初撃と合わせてHPバーが半分になったが…。
「3発来ます!チェインライトニング!」
フェルが魔法を放つが、どうなったかは分からない、だが足に痛みが走り、HPバーが残り3割になった…や、やばい危険でも足を止めて、HP回復薬を飲むべきか!?
「そこ!アイススピア!」
判断悩んでいると、フェルが魔法を放った!
「レンナさん、全ての蜂を撃ち落としました!」
「まじか、ナイスだ!フェル!」
後ろを振り向くと全ての蜂が消えていた。フェルの魔法が全て倒してくれたのだろう。
蜂の追手を殲滅した自分達は、薬でHPを回復して、毒は時間経過で抜けるまでリジェネレートで相殺し続け、結界に向かい、なんとか結界にたどり着くことが出来た。
待ち伏せとかされてたし…幹部とか言っていた黄金蟻やダークスパイダーは、また会う可能性が高い…。
なんとかしてあの軍勢虫門の対策をして、倒したいものだな…もしくは門を使われる前に倒すのが理想か…。
そんな考えをしながら、自分達は妖精達が住む結界をくぐった。