黄金蟻が率いる最悪の軍勢!
だがどんなに奮起しても、ピンチなのは変わらない、黄金蟻は軍勢虫門という妖精門と似た技を使い、大量の虫を召喚した…自分の使える範囲攻撃は妖精火門しか無いが…。
安易に使えば、地門を一発で見切った黄金蟻の一声で回避されそうだ、そうなったら、もっとやばい劣勢に追い込まれる…というか死ぬ。
「さあ、我ら虫は、数で食い殺すのが我らのやり方!全軍突撃!」
「ちい、逃げるぞ!」
大量の虫が、我先に食わんと、こちらに突撃してきたので、全速力で逃げる!後ろを見ると、背後から大量の虫が押し寄せてくる!最悪で地獄の光景だ見なきゃよかった!
「すみません、レンナさん!もう大丈夫です!スピードアップ!纏めて貫け!チェインライトニング!」
恐怖に怯えた状態から回復したフェルが、胸ポケットから自分の左肩に移動して、自分には補助魔法を…背後から迫りくる虫に、雷魔法を撃ち出した!
バチィ!と背後から音が鳴り響く。
「そんな効いてない!」
「無駄無駄!吾輩の声が配下に届く限り、配下への魔法やスキルによる範囲攻撃は効かぬ!そして吾輩を狙うなら、庇ってもらう!これこそオールモスキート軍最強の布陣よ!本来なら、ヤンマが先回りして爆撃をしたんだがな…」
黄金蟻の高笑いが聞こえる…ペラペラと手の内を明かす黄金蟻…明らかに悪手だが、それをしても勝てるという確信があるのだろう。
実際の所、戦術に限ってはめちゃくちゃやばい、軍隊に範囲攻撃無効というチートに等しい能力だ…。
言葉的に、黄金蟻は範囲攻撃有効みたいだが…配下が壁になるのか…超厄介だ。
しかし妖精火門を使わなくてよかった…範囲攻撃無効なら使っても、防がれていただろう。
「くそ、どうする…」
走りながらだと、思考も全然冴え渡らない…。
妖精の結界がある所まで走るか?いや、そこまで行く前に追い付かれそうだ…。
「フェル!単体攻撃魔法を……黄金蟻…の足に向かって撃ってくれ!」
「はい!ホーリーボール!アイススピア!」
フェルが魔法を唱える!一瞬後ろを向くと光の玉と氷の槍が黄金蟻に向かって、飛んでいくが…他の虫が自ら射線に飛び出して、光の玉と氷の槍に衝突した!
飛び出した虫は赤いエフェクトを発しながらも、地に落ちる…すると、地に落ちた虫は、他の虫に飲み込まれて、消えていった…なんか他の虫に食われてるように見えたんだが…全身の鳥肌が立ってしまう。
「駄目です、虫の壁が厚いです!」
「攻撃を続けて欲しい!なんとか突破口を考える!」
武器はアースキー…地門は見切られるし、使うのに地面を刺す必要があるから、足を止めないといけない…そんな事したら、虫に飲まれる、駄目。
火光は妖精火門はまず通用しないし、火の刃は数体は倒せるだろうが、結局集団に飲まれる未来しか見えない。
持ち物はお菓子と菓子パン…少しは虫の気を引き寄せるかも知れないが、これは妖精達に食べてもらう物だ!使えない!
回復薬とMP回復薬は飲む暇はないし、投げた所で効果は期待できない…。
あと一つは、ユリからもらった虫を集める薬だ…これならガッツリ虫の気を引けそうだが、黄金蟻で統制されている虫に効くのか?
考えてる暇はない、ジリジリと距離を詰められてる。
自分はシステム画面を操作して、薬を取り出して、祈るように薬を開封する。
すると辺りに甘い匂いが漂い始める。
「な、何だこの凄い美味そうな香りは!?」
黄金蟻から困惑の声が聞こえる、これは効果ありか!?
「これでも舐めてろ!」
後ろに振り返って、虫に向かって、全力で薬を投擲した!
薬は虫の軍勢の頭上を超えて見えなくなった。
「お、おい!お前ら香りに引き寄せられるな!吾輩の指揮に従え!」
声を荒げて叫ぶ黄金蟻!今のうちに逃げろ!
再び逃げる為に足を動かし始めると、フェルが叫んだ!
「妖精氷門!レンナさん走り続けてください!」
フェル!?ここで切り札使うの!?いやここはフェルの判断を信じる!
背後から大きな音が聞こえるが少しでも距離を取る為に振り向かずに全力で走り、妖精達が住む結界がある所に向かった。