神官騎士イツキの目的
フェルの叫び声に男性の神官騎士は目を丸くしている。
「な、なんだ?何事だ?」
「えーと、そのー…胸ポケットにいる、妖精フェルの声だ…」
もう隠す事は出来ないので、胸ポケットにいるフェルの事を教える。
あんまり他プレイヤーに知られない方がいいと、ユリに言われてるのに、あんまり隠せれてない…。
「あの!貴方が探してる武器は、これを大きくしたやつですよね!?大時雪さんの杖!」
フェルは胸ポケットから乗り出して、ネージュフラワーを神官騎士に見せつけた。
待ってそれって…。
「な!?何故それを!?」
「え、え?」
神官騎士は目を見開いて酷く驚く…というか再び尻もちついた。
こっちは頭の中が処理落ちしている、この神官騎士はユキさんとの関係者ということか!?
「レンナさん!思い出してください、私の記憶の追体験で、ユキさんから幼なじみのイツキに対しての話があったはずです!」
「ちょっと待って、頭の中整理させて…」
……やべぇ、オールモスキート戦の印象が強すぎて、そこらへんや、ユキさんの授業しか思い出せねぇ。
えーと、取り敢えず神官騎士…イツキさんの探してる物はユキさんの杖ということでいいのか?
な、何だこの出来すぎた展開は?イツキさんが探してる物が、自分が持っているなんて…。
取り敢えず、バキバキに折られて、壊れたユキさんの杖を取り出す。
「えーと念の為に見せるけど、これが探し物であってる?ユキさんが敵対していた奴に杖を破壊されて、地面に埋められていたんだ」
「な…嘘だろ?これ敵の攻撃を受け流せるようにかなり頑丈に作ってもらったのに、こんなに酷く折られてるの…?あの、先程鍛冶屋と言っていましたよね、これ直せますか?レシピは持ってるんですが!」
イツキさんが修理の依頼をしてくる…というかこれイツキさんが他の鍛冶屋に依頼して作ってもらったやつなのか。
「元から直す予定だけど、修理は今までやったこと無いんだ…それでも良いなら、引き受けるよ」
「…修理初心者だとしても、これも何かの導きだ、頼む!あいつが急に引退して、なにが引退の原因か聞けずじまいだったんだ、そんな中、私の杖を見つけたら全てを教えてあげると言われて、ずっと探していたんだ!でもこんな壊れた杖じゃあいつが可哀そうだ!金なら200万だそう!それでいいか!?」
「あ、ああ…大体の引退の原因も教えるから、ちょっと離れて欲しい」
でかいお金の袋を渡されて少し焦る…出さなくてもやるつもりだったが…まあ、依頼として出された以上は受け取る。
というかお金の袋と一緒にレシピも渡された、きっと杖を直すのに必要な物だろう。
「教えて欲しい、雪はなにが原因で引退したんだ?可能なら原因をなんとかして、また一緒に雪と遊びたいんだよ!あんな辛そうなあいつ見たこと無いんだよ!」
「わかった、それじゃあ教えるよ」
自分達はユキさんがフェアリーガーデンでフェルに家庭教師をしていた事、ある時フェアリーガーデンで化け物が復活して、真っ先にやられた事、その結果相棒のカギロイを失ってしまった事、生徒であるフェルが死んでしまったと勘違いしている事を伝えた。
また、フェアリーガーデンが滅んだとも思ってる可能性があることを伝える。
「……そんな事が…なんで教えてくれなかったんだ…」
「多分ナンバークエストで、教える事を禁止されてるんだと思う」
「そうですね、ユキさんは秘密にしてるのに、イツキが探ってきて困る的な事を言ってました」
自分とフェルがそれぞれの考えを伝えるとイツキは膝をついて、両手を地面につけた。
というかイツキさんはカギロイの事を知ってたのかな?
もしかして、ユキさんがこっちと違って完璧に隠蔽してたのかな?
「そんな事言われてたのか…」
「まあ、杖を直したらフェルの生存や、まだ妖精達は頑張って生きていることを伝えて欲しい…」
「わかった、必ず伝えよう!そうだ、連絡の為にフレンドになって欲しい!」
『イツキからフレンド申請が届きました』
フレンド申請を受理すると同時に妹からメッセージが届いた。
『お兄ちゃん、さっきから動いてないけど応答せよ、お兄ちゃん!お兄ちゃん!!!!……ゲームオーバーになったか…』
『勝手に殺すな、レイドバトルで共に戦った人と奇妙な巡り合わせで偶然?会えて、会話してた、後修理依頼を受けてたんだよ』
『へーその状況で修理の依頼を受けるなんて変だねーと、それよりも早く帰ってきてー暇ー』
暇ーて…まあ妹の呼び出しだ、兄として行かないとな。
それに修理の事に関して、聞きたいこともあるし、早めに杖も直したい。
「すまんイツキ、身内から呼ばれてるから、そろそろ行かなきゃ」
「そうか、呼び止めてた感じだったか、すまない…だが感謝する、貴方のおかげで目的が大幅に進展した…杖が直ったらまた連絡して欲しい!」
「ああ、それじゃあな」
自分達はイツキと別れを告げてユリのマイホームへ急いだ。
「あのレンナさん、もしかしてユキさんと会える可能性があるんですか!?」
「まあ、明確に可能性は出てきたな…」
そういうとフェルはやったと喜んだ。
……会わしてやりたいものだな…。