フェルのお母さんによるフェアリーガーデンのお話
「私達は本来は結界の内部で暮らしていた訳ではないのです、レンナさんは結界の外で荒れ果てた荒野しか見てないと思いますが…本来は一面に花が咲く土地だったんです。
ですがある日、古き時代に封印されていた蚊の王、オールモスキートが虫の軍勢と共に復活したのです。
そして奴らは数多の虫を従えて、花を食い荒らしたのです…」
「オールモスキートのせいで、結界の中に避難した感じか?」
一応フェルの記憶で平和なフェアリーガーデンを見たことあるが、言っても混乱に繋がるので、黙っておく。
「ええ、最初は抵抗したんですけど…最終的に結界の中に追いやられてしまいました。
最終手段の儀式魔術を使い、皆で魔力を注いで作った最終防衛線である結界のおかげで、あの厄災のオールモスキートや虫の軍勢に最後の花畑を破壊されずに済んでるのです…それでも花畑が少ないせいで、色々と不便を強いられているのよね…」
「おなかすいたー!花畑が小さいと、取れるご飯も少なくなるのー!」
「毎日結界の魔力供給疲れるー!」
他の妖精達が不満を洩らすとパン!とフェルのお母さんが両手を叩き、妖精達を静かにさせる。
なるほど、ご飯不足なのか…そういえば、TTから大量に貰ったクッキーがまだあるな…。
多くて半分くらいはユリのマイホームに保管させてもらってるけど、10枚入りの10箱は自分の所持品にある、フェルが美味しく食べてたという事は、妖精達皆美味しく食べれるはずだ。
食のバランスは悪いかもしれないが…空腹ならまずは満たすことが大事だ。
「説明中にごめんなさいね…私達は花から、薬やご飯を作ったりするんです、他の人間が来ていた時は珍しいご飯とか、分けてもらったりしてたんですけど…オールモスキートが復活してからは出会うこと無く、守れた花畑も少しなので、私達はギリギリの生活をしているのです」
「あーお菓子ならあるけどいる?」
そういった瞬間、フェル以外の視線が自分に向けられる。
もしかして、そこまで食料事情深刻だったの!?
「最初に言っておく、かなりの量がある、だから奪い合う必要はないからな?しっかりと並んで欲しい。無理な取り合いで怪我してほしくないからな」
そう言ってから、システム画面を開いて、持っている全てのお菓子を取り出す。
するとおお!と妖精達が歓喜の声を上げる。
「説明の途中でしたが…まずはクッキーを皆に配らないと説明を再開できる状況じゃないわよね、はい皆並んでー」
フェルのお母さんの指示で、妖精の皆が1列で並び始める、自分はクッキーを取り出し、妖精一人一人に渡していく。
妖精達はクッキーを受け取る度にありがとう!と満面の笑みでお礼を言ってくる…いい気分の反面、それだけ食が厳しい状況なんだなと、理解して少しは悲しくなる。
一人1枚という感じで渡していたら、47枚配った所で最後の妖精、フェルのお母さんにクッキーを渡す。
というか最初約30人ほどだったが、自分の姿をみて妖精が集まって結構な数になったな。
「ありがとうございます…正直に言って、とてもお腹が空いていたので助かります、本当は先に説明やお礼をすべき立場なのに…貴方には助けられてばかりですね」
「いや、大体の状況は分かった…」
話を纏めると…。
封印されてたオールモスキートの復活で、妖精達は狭い結界の中に追いやられた…その結果、わずかになった花畑から、ご飯を手に入れる妖精達はひもじい思いをしている。
オールモスキートを倒して、虫の軍勢を掃討するのが自分のなすべき事だろう、ナンバークエストは発生してないが、関係ない…あれは倒すべき敵だ。
「もしもオールモスキートを倒して、結界が不要になるレベルで配下の虫達を掃討した後、荒野を花畑にする術とかあるのか?」
「一応ありますが…一気に元に戻すには場合は強力なマジックアイテムが必要なので、ちまちまと花畑を増やす感じになると思います、強力なマジックアイテムなんて既に使ってしまったので…」
強力なマジックアイテムか…もしかしたら作れそうだけど…今は考えないでおこう、先にオールモスキートをなんとかしないと皮算用だ。
「えーと確認だが、フェルのお母さんは妖精達のリーダー的な立ち位置であっているか?」
「ええ、一応リーダー的な立ち位置をしています、リーダーやるのは苦手なんですが、この状況で統率がなくなると、結界が維持できなくなって、全滅してしまいますからね…」
「なら残りのクッキーは託しておこう…可能ならまた持ってくる」
「本当にありがとうございます!これで少しはしのげます!」
そういうとフェルのお母さんは再び頭を下げた。
それだけ食不足がやばいのはわかったけど、フェルのお母さんに頭下げられるのはなんかやだ!
というかフェルもどうすればいいのかわからずに、ワタワタしてるし!
こうして自分はフェルのお母さんの頭を上げて欲しいと、必死で言うのであった。