結界の先は
結界は自分を拒むことがなかった…結界を通り抜けて自分の視界は結界の中を捉えた…。
「花…ひゃあ!?」
「きゃあ!?」
足が地面の段差か、でっぱりに引っかかり、転がるようにこける。
咄嗟に体を捻って、胸が地面につかないようにするが、背中がざりざり地面と擦れた。
HPバーがちょびっと減った…。
「痛た…フェル無事か?」
「は、はい…それよりもレンナさんのほうが大丈夫ですか?」
「こっちは大丈夫、それよりも周り見てよ」
ムクリと起き上がり、フェルに辺りを見せる。
そこは花畑だった、さっきの結界外の茶色い荒野とは違って赤や青、白や黄色い花が沢山咲いている。
花の匂いかいい匂いがあたりに満ちている。
遠くには小さい木製の家が見える…。
「………ああ、あの時のままだ…」
「家もある、行ってみようぜ」
「はい!」
フェルの涙声を聞きつつも、歩き出そうとすると、自分の周辺に多数の魔法陣が展開された!
「何者ですか…あなたは…?結界をすり抜けてここに入ってくるなんて…」
明らかに敵意を感じる声がする、やばい…魔法陣を展開した存在が見えない…。
だけど焦る気分は湧かなかった…なぜならそれはフェルの記憶を見た時に、真っ先に聞いた声だったから。
「待ってくれ、自分は貴女の娘を護衛してきたんだ」
「お母さん!!」
「え?ふぇ、フェル……!?」
フェルの言葉で何もなかった空間が歪み、一人の妖精が現れる、姿を一言で言えば一回り大きくなって、可愛いから奇麗になったフェル…フェルの記憶で見たフェルのお母さんだ。
魔法陣が消えてなくなる、警戒心がなくなったのか動揺したのか分からないが、一先ず安心だ。
「うわああぁぁ!!!お母さん、会いたかったよ!!」
フェルは背中の羽を羽ばたかせて、胸ポケットから飛び出し、お母さんに抱きつくフェル、今までに聞いたこと無い位大きな声で泣いている。
「よく…よく生きてて……うう…」
「全部レンナさんが助けてくれて…」
フェルのお母さんも泣き始める…まあ、見た感じ巨大な結界の中に閉じこもってる状況を強いられていて、その状況で娘が見つからないて…まあ、普通に考えたら生存が絶望的と思うわな…。
取り敢えず黙って見ていよう…この状況で水を差すのは無粋だ。
というかなんか多数の視線を感じるけどまさか妖精達が集まっているのか?さっきなにもない所からフェルのお母さんが現れたから他の妖精も似たような魔法で隠れているのか?
取り敢えず両手を上げて、無害アピールだけはしておこう。
すると泣き止んだフェルのお母さんが話しかけてきた。
「先程は敵意を向けて申し訳ございません!娘の命を救ってくれたのに、敵対的な行動をして!」
「あ、頭を上げて欲しい!こっちも唐突に結界の中に入ってしまって、驚かして申し訳ない!」
頭を下げるフェルのお母さん。
慌てて顔を上げてもらう、なんというかフェルの身内に頭下げられるとなんか罪悪感?恥ずかしい?良くわからない気持ちが湧いてくる。
「ほら、皆も姿を現しなさい、この人はフェルの命の恩人よ」
パンパンとフェルのお母さんが手を叩くと至る所の空間が歪んだと思ったら、フェルと同じ位の大きさの妖精が現れた。
ざっと数えたら約30人くらい居るのかな?しかしどうやって隠れてたんだ?ステルス迷彩的な魔法なのか?
「えーと、歓迎してくれてるのか?出来ればこの場所の事とか、皆さんが置かれている状況とかを確認の為に聞きたいんですが…」
「勿論歓迎しますよ!立ち話もなんですし、こちらへどうぞ!」
こうして、フェルのお母さんの案内で広い所に案内された、そこには人間サイズの木製の椅子やテーブルが置かれていた…多分だけど、ユキさんが使っていた物だろう…。
他の妖精達は思い思いに好きな場所に座っていて、こちらを珍しいものを見るような目で見ている…少し恥ずかしい。
自分は人間サイズの木製の椅子に座る、フェルは自分の胸ポケットに戻ってきた。
「いいのかそこで?」
「なんというか…ここが1番安心します」
えへへと笑うフェル。
まあ、拒む理由は皆無なので、フェルを胸ポケットに招く。
「さて、私達の状況を知りたいという事でしたね…レンナさんと呼んでよろしいですか?」
「はい、フェルのお母さん、教えて欲しい、少しは知ってはいるが、この場所で何があったかしっかりと把握したいから、教えて欲しい」
そういうとフェルのお母さんは話し始めた。