かつてオールモスキート戦があった所に残った物
「敵は居ないみたいだな…」
「…嫌な事を思い出してしまいますね…」
遠く辺りを見渡しても、荒野と石畳等の無機物…そして遠くに虫しか見当たらない…家と思われる建物すらないというのは、なんというか異質な感じがする。
「なあ、フェル…フェルの故郷で家て、一般的に何で出来てるんだ?」
「私の家は…レンガと呼ばれる石で作られています、でも一般的には木材が使われています…あっちの小さな山を超えた先に、皆が住む家が沢山あるはずなんですけど…」
木材か…なら下手したら家は食われてそうだよな…シロアリとか高田に罰ゲームでひーひー叫びながらやらされた、虫や宇宙人から地球を守る兵隊になる、別のゲームでコンクリートのマンションすら喰う虫とか居たからな。
ファンタジーなこの世界に、何でも喰う虫が居てもおかしくない…。
フェルが指さした小さな山…自分からしたら大きな丘位な感じだが、高所を登ればフェアリーガーデンの全体をより把握出来るかもしれない。
「それじゃあそこに行こうか…うん?」
山に向かって、歩き始めようとすると、キランと近くの地面に採掘ポイントが煌めいた…。
「なんだ?なんでこんな所に?」
「どうかしたんですか?」
「いや、そこの地面に物が埋まってるみたいだからちょっと掘り返す」
「そこは…花壇でしたね…物が埋まってるとは思えませんが」
採掘ポイント…花壇の上に移動して、アースキーを地面に突き刺して、地面を掘る…すると白い金属のような何かが6つ出てきた…。
『壊れた武器を掘り返しました』
………随分と悪趣味な…。
「少し掘っただけで、金属片が出てくるなんておかしいですね…?虫が物を埋めるとは思えませんし…?」
「……これはユキさんの杖だった物だよ」
「え!?待ってください!レンナさん含むプレイヤーは忘れ物はしても、落とし物はしないと聞いたことあるんですけど、なんでここにユキのさんの杖が!?」
なんでここにあるかは分からないが、金属片を並び替えてみると、金属片はフェルが持っている杖と似た姿になった…。
まあ、壊れた方は土まみで純白とは程遠いし、力技で折ったみたいで、形も少し歪んでいる…。
「酷い!誰がこんな事を!!」
「まあ、どう見ても敵である虫サイドの仕業だよな?でもフェルが言ったように虫が埋めるとは思えない…」
疑問が頭に満ちていると、システム画面が現れた。
『武器にプレイヤーのメッセージが残っています、再生しますか?』
「メッセージ!?」
「な、なにか分かったんですか、レンナさん?」
「えっと武器にユキさんが残したメッセージがあるんだ、ちょっと確認する」
ポチリと、はいというボタンを押す、声が流れ始めた。
『名も知らぬプレイヤーさん、私の名前は雪です、といっても私は既に引退しているのでしょう、相棒も生徒も守れずに私はナンバークエストは失敗しました…きっとあなた達がこれを聞く頃にはきっとフェアリーガーデンは滅んでいるんでしょう…。
お願いがあります、もしもオールモスキートという大きな蚊のような敵にあったら、そいつは何があっても倒して欲しいです!私とカギロイとフェルと…沢山の妖精の仇を取ってください!奴は大技を放つと大量の小さい虫に分裂して大技を回避するので、大技を放つ際は動きを封じたり、不意をうったりしてください!それにやつに安易に魔法を放った場合、蚊の特有の長く細い口で魔法を吸われて、カウンターのようにこちらに返してくる場合があるので気をつけて!後やつの弱点は』
『メッセージを終了します』
ブツ!と明らかに、制限限界まで喋ったメッセージが再生された…。
少しでも言葉を詰め込もうとしていて、早口で聞き取りにくかった…。
そうか、追体験と違って、本来の歴史ではユキさんは最初にやられたから、フェルが無事なのを知らないのか…まあ、カギロイがMP全消費、当時は支援魔法しか使えないフェルという状況が最悪すぎて、助かる未来が見えなかったのか…。
でもこんなシステムがあったのか…それなりに死んでいるが、メッセージを残すシステムなんて出てこなかったよな?ナンバークエスト失敗時のみなのかな?
「あの、何も聞こえなかったんですが、ユキさんはなんて言ってましたか!?」
「えーと今言うね」
引退とかナンバークエストを直接伝えると分からないと思うので、引退をもうこの世界に戻らない、ナンバークエストを使命にして伝える。
「そんな…この世界に戻らないて、二度と会えないということですよね…?」
「ああ、そうだ…」
「そんな、そんな…ユキさん…」
胸ポケットの中で泣き始めるフェルに自分はなんと声をかけるべきかわからず、ただフェルの頭を撫でて慰める事しか出来なかった…くそ、オールモスキート…あったら絶対に倒してやる!